ハイエーテル 2
「ハイエーテル? 」
フライパンを持ちながら、エプロン姿のエリッサさんは振り返り僕に聞き返す。
「今日あった子が、そのハイエーテルってのらしくて。軽く調べたんですけど、いまいちピンと来ないというか」
晩御飯のベーコンらしきいい匂いが漂う中、朝の雪崩の清掃をしながら僕は、エリッサさんに質問を投げかける。
「なんなんですか、ハイエーテルって」
すると、エリッサさんは一度火を止めた。
「突然変異型エーテル誤発症、君の言うハイエーテルはおそらくこれに該当する」
「少し長くなるがいいな」と前置きをしたあと、彼女は鉄鍋に卵を割る。
「ハイエーテルは、分類上は病として扱われている。が、その実態は、生物における進化の一種だと推測される」
「進化……ですか」
「鳥の祖先が龍であるように、一部の形質がなにかに適応しようと姿形を世代をまたいで変えていくこと。それが、人の身に、エーテル器官に起こった、それがハイエーテルと呼ばれる人々だ。
少しエーテル器官の話をしよう。普通、この場合私と君のエーテル器官で考えてくれ、その器官が行う役割はなんだ」
なんだか、講義っぽくなってきたな。
確か、神様が言ってたのは……
「大気中に舞うエーテルを体内に取り入れて、それを血肉へ変換する、で合ってますか」
「上出来だ。エーテル、魔素という呼ばれ方もするが、それらは一度体内に取り入れ、自らが使える形に変換する必要がある。それを行う機関がエーテル器官だ」
褒められて、喜ぶ以上にホッとした。
「使える状態のエーテルを待機状態という。待機状態のエーテルは、君が言った通り、血肉になるか、もしくはそのまま射出するかの二択。世間では魔光弾と呼称されてるものだ」
いつか荒くれが放っていたやつだ。
「ということは、自分も練習すれば」
「ん? まあ、できるだろうが……」
なぜだか疑問に思われたけど、話は続く。
「ただ、それはあくまで我々人類の話。他の生物には、彼らなりの使い方がある。血肉へと変える人類が守りだとするならば、他の生物は攻めに転用した。君も見たあの黒龍の光。あれは、どれだけ私が強くなろうと放てない。持ちえないのだ」
「持ちえないって」
「君の疑問に答える前に説明を終えてしまおう。あの光もおそらくは待機状態のエーテルを変換したものだ。人以外の生物、鳥も、犬も、龍もそれぞれ異なる性質のエーテル器官を保有している。火竜が火を吹くのも彼らのエーテル器官あっての事だ。我々が血肉へ変換するように、彼らは火炎にエーテルを変える。どちらも己の身を守るため、目的は同じだ」
エリッサさんは一呼吸置くと、いつの間にか終えていた料理を机の上に置いて、よそ行きの服装の上から付けていたエプロンを脱ぐ。
「さて、続きは食べながらでもいいだろうか」
「ええ、ちょうどこっちもキリがいいところです」
「さすがにあの規模では終わりとまではいかないか」
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