隠さないものと隠せないもの 1
僕は今、あらぬ疑いをかけられている。
「やったんだ! お前らやったんだ! 」
「誤解です! 誤解! 」
「嘘つくなぁ! 男と女で成立しないわけないだろ! 」
ひとつ屋根の下、年頃の男女(年齢差は割とあるけど…)が二人きり。静まる夜、一つきりのベッド、遮る理由は何も無い中、一夜、何も起きないわけも……ある!
出会ってその日でワンナイトなんて、するはずないだろこんちくしょう!!!
「あぁぁ、冴えない少年だと思って、手塩にかけて気にかけてたのにぃ……ヨヨヨぉ……」
「遠回しに侮辱されてるけど……そういうことじゃなくて! 」
ああクソっ、奥手なのを否定するのかマセてるのを否定するのか、趣旨がブレる!
「いやあのっ、ホントにしてないんですって」
「あーうんうん、分かってる分かってる」
「それは分かってない人の返事! 」
あぐらまでかいて手振りまでつけて、分かってますよって。わざとらしすぎて、逆に信用ならない。
「大丈夫だって、君がそういう奴じゃないのは知ってるから」
「そういう奴ってどういう奴……!?」
「そういう奴は、そういう奴だよ。性に奔放って言えばいいの? 」
「性に奔放? 」
「分かりにくいかぁ……。えーっとねぇ、例えば、今日初めて出会った人とそのまま一晩を共にしてあーだのこーだのするようなそういう人……って君の事だなぁ」
「だから違うって……!!! 」
もうここまで来るとからかいたいだけでしょ!!!
「まあ、いいよ。どうせ過ぎたことだし」
「いや、僕が良くないんですが」
「君がしててもしてなくても、今の僕見て襲わないならそれで結構結構ってね」
「ぬぬぬっ……」
僕の貞操裁判なんだか煮え切らないまま、はぐらかされて終わってしまった。
被告側からするともう一審したい気で満々なんだけど、判決が判決だからこれでもいいんだけど……やっぱ、やるせないなあ。
「で、君は? なんでこんなとこにいるの」
「なんでって理由がなきゃダメですか? 」
「そう拗ねないでって、悪かったよ」
ペロッと舌だして、「メンゴっ!」と可愛さで誤魔化そうとしているのがまるで明らかな謝罪を受けて、事態は終わりを迎える……いや、終わらせたくはないんだけども。
「……えっと、図書館に行こうとしてたんです」
大人な対応を心がけようと、気持ちをグッと飲み込む。
「図書館、なんでまた。勉強とかするの?」
「まあはい。魔法が使いたくて、知り合いに聞いたら図書館で勉強するのがいいだろうって」
「魔法ねぇ……。君ほどの魔法使い、世の中にそう居ないとおもうけど。あんなカビ臭いところに行こうなんて君も変わった人だなぁ」
「行ったことあるんですか」
「昨日、君と別れてから少しだけね。道案内頼もうと思って。いやぁ、親切な子がいてくれて助かったよ。変わった服来てたけど、人は見かけによらないもんだねぇ」
変わった服……。
もしかして、転移者!?
「あのその人ってどんな」
「えっ? そうだなぁ……」
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