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龍の巣 2



「ユーリ殿! まさかこうしてご一緒できるとは」

「……」


 今、僕は王国直属護衛独立部隊の三人に囲まれてる。

 丁寧な言葉遣いを崩さないジャールさんと、今日も無口なジークさん。

 そして、エリッサさん。

 直属護衛の中でも独立部隊は一人で一部隊分以上の実力があると認められているらしい。

 そんな実力者の三人が僕の周りを囲んで歩く。

 はっきり言って、無敵だ。

 何が来ようとも返り討ちにできる自信しかない。

 負ける想定が微塵も出来やしない。

 今ここが紛れもない龍の住処だというのを加味しても、それは全くの変わらずだ。

 

「今日はどうやってここまで。街からは遠く、秘境も秘境。長旅だったことでしょう」

「えっと、歩いては無くて。ちょっとズルをしたと言いますか……」

「ズル?」


 どう説明しようか戸惑ってると、エリッサさんが。

 

「ユーリにはとある能力があるんだ。物を代償に払うことで、魔法に近しい不可思議を起こせる。それを使えば、場所間の瞬間移動もお手の物なんだ」

「なんと。やはりユーリ殿は只者ではなかったと」

「まあ、只者では無い自覚はありますね……」

「その能力を使って、私の窮地を脱してくれたこともあった。懐かしいな、あれももう一年以上前のことだ」

「もしや、スクルド一度目のラストリゾートの話ですね! 世間ではエリッサ殿が止めたということになってますが、その場にはユーリ殿もいらっしゃったと!」


 目をキラキラと輝かせ、エリッサさんの話に耳を傾けるジャールさん。


「ああ。並じゃない実力の龍を相手していた時だ。お互い瀕死寸前で、特に私はあと一撃喰らえば死に至る程だった。そこにユーリが割って入ってくれた。私の鎧と杖を能力の代償とし、一撃を龍の頭に」

「なんと。トドメをさしたのはユーリ殿だったのですか」

「美味しいところだけ持っていっただけなんですけどね」

「あの日の出来事は、今もここに残り続けている。あれだけは、どうやっても色褪せないな」

「それほどまでの出来事だったのですね。とすると、やはりユーリ殿は加護人なのではないのですか」

「加護人……? ああ、確かこの地に伝わる伝承だとか何とか」


 いつだかルフローヴさんに教えてもらったっけ。


「魔法では無い異能を持つ、この地の外よりいでし者。女神アルティミア様より加護を受けた英雄、まさにユーリ殿のことだと」

「どうなんでしょうね……? 全然実感とかはないんですけど」

「実は、アルティミア様にお会いしたりとか。してらっしゃらないんですか?」

「アルティミア……様っていうのをこの土地に来てから初めて聞いたくらいなもんで」


 その加護人の話をされる度に思うのは、あの神様とアルティミア様が全く似ても似つかないって事。

 性別からして違うし、全然現世に降りてきてるし、加護人っていう言葉すらあの人は出してなかったしで、まるっきり違う。

 まあ、寿命の事を後出ししてくるような人だし、加護人だって言い忘れてるだけなのかもしれないけど。


「じゃあこの国の成り立ちとかも知らないと」

「成り立ち……ですか?」


 歴史は、魔導具のテストに全く出て来なかったから勉強してないんだよな。


「ユーリ、歴史に興味はあるか?」

「まあ、多少は」

「なら、少し説明をしましょうか」


 そういうと、ジャールさんは簡単に語ってくれた。

 

「アルティミア様の信託を受けた者が国をまとめ上げたんです。神の意志を受け取った少女がたった一代で、バラバラだったこの領土をひとつの国にしたんです」

「なんと……」

「獰猛な魔物、文化の異なる人々、まとめるには、あらゆる障害が立ちはだかったそうです。ですが、神の信託のままに突き進んだ彼女は、人々間の争いなくひとつの国を築くことに成功したのです」


 神の信託を受けた少女が、天下統一。

 それを聞くと凄くかっこいいな。

 それだけで数篇、本が作れちゃうくらいだ。


「その少女が、初代加護人と言われています。魔物と対峙する際にも、不思議な術で戦ったという伝承が残っています。次第に、人々は彼女を崇めるようになりました。いつしか彼女の位は王と呼ばれるものになり、まとめ上げたこの土地のことを王国と呼称するようになりました」

「それが、この国……アルティミア王国の成り立ちなんですね」


 結構、加護人っていうのはこの国と密接に関わっているんだな。


「まあ、あくまでも伝承です。どこまでが真実なのかは定かではないですが、その歴史は古くより大切に伝えられてきたんです。王位継承の時には、必ず伝承を皆で読みます。その少女の血をひく王の権威を示すためでもありますが、この者なくてはこの国は務まらないと互いに再確認するためでもあります」

「なるほど。……でもあれっ、今の王って」


 今聞いた話だと、少女の血をひく者が、代々王様を務めていたんだよな。

 でも、今王の玉座に座っているのは――。


 あの、神様。


「あの人って、えっと、その加護人の血をひいているんですか」

 

 僕の疑問で、場は一気に白ける。

 周りの目は、こいつまじか、みたいな感じに。


「……ふっ」


 唯一笑ったのは、ジークさんのみ。


「え、あの、おかしいですか……?」


 まあ、他の人からしたら急に何を言ってるんだって話だとは思うんだけど、だって今の王は神様なんだよな。

 神様が王の血をひいてたらなんかごちゃごちゃになるよな。

 神様がいての加護人なのに、その血をひいた人が神様やってるって。

 

「おかしいわ。なんで今の情報からそんなタブーに突っ込めんねん」


 はぁ、とため息をつくカイナさんの反応から、どうやら僕はしてはいけない質問をしてしまったらしい。

 でも、気になるっていうか気にしなきゃいけないよな。


「ユーリは、外から来たと言ってたが、本当にこの世界の外からなんだな」


 エリッサさんにそう言われるってことは、この世界ではもう周知の事実。

 なんであの人が王様なのかは、学ばなくても知ってるような一般常識ってことだよな。

 一体何が理由で、神様は、王に。


「ユーリは約十一年前にこの国が分かたれたと言って、信じられるか」


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