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作戦会議


 暁音さんはいつものように紅茶を飲みながら僕の話を聞いていた。


「はえー、独立部隊の4番と5番が。大変だったねぇ」


 と、まるで他人事のように彼女は言うが、まさにあなたが住んでる街が焼かれそうになっていたんだ。

 なんでそんなすまし顔ができるんだ、神経が図太いのかなんなのか。


「でも、面倒なことは全部ルフローヴさんが代わってくれたから、そこまで大変なことはなんにもだよ」

「そっか。じゃあ悠里くんは晴れて自由の身ってことだ」

「別に捕まってた訳じゃないけどね……」


 暁音さんはうんと伸びをしてから、僕に向き直る。


「ってことは、いよいよ本腰入れてもらえるってことだよね? 」

「……本腰? 」


 なんの事か、頭の中を一巡りさせて出てきたのは。



「……勉強か」



――――――――――――――――――――――――



 僕が異世界から戻るために必要な物は一つ。

 価値250億のあのチケット。

 転移者の命綱とも言えるそのチケットは、この世界では250億で取引されている。

 現地人には用途不明でも、転移者はそれが無ければ3年で死んでしまうため喉から手が出るほど欲しい訳で、こうして値段がアホみたいにつり上がっている。



 そんなチケットを手にするために僕と暁音さんが建てた計画は、単純明快。

 この世界で一番稼げる職業である冒険者になって、荒稼ぎをすることだ。

 危険は伴うが依頼一回で億はくだらない額を稼ぐことも出来る職、最速で250億稼ぐ必要がある僕らがこんなチャンスを見逃すわけにはいかないだろう。

 だが、冒険者になるにしても一つ大きな問題が。


 

 それは、僕の実力不足だ。



 これまでラストリゾートを二回斥けて来た訳だけど、どちらも仲間に恵まれたり、運が良かったりと、全てが僕の実力によるものではない。

 代償の力も、代償にできるものがあって初めて効力がなせる技であり、無一文状態の僕が強大なドラゴンなどを倒せるだけの物は手元にない。

 つまり、今の僕の実力では荒稼ぎできるほど高難度の依頼は達成できない……。


 

 そこで、手っ取り早く実力をつけるために僕らが選んだ選択肢は、魔導具の力を使うこと。

 魔導具に術者のエーテル込めると、その魔導具に対応した魔法が出る。

 火を吐くドラゴンのエーテル器官を元にした魔導具なら、魔導具にエーテルを込めるだけでそのドラゴンの火が出せるという寸法。

 龍に対抗できるだけの筋力をつけるより、魔導を勉強して魔導具を使いこなす方が時間的に明らかに早いというのが暁音さんの出した結論だ。

 


 だが、そんな魔導具を使うにも障害がある。

 この世界の魔導具は、免許制なのだ。

 

 

 魔導具使用許可認定試験、通称魔験に合格しなければ魔導具を使用はもちろん、売ったり買ったりすることすらできない。

 しかも、魔験は3段階にわかれており、強力な魔導具を手にするためにはより上の級に合格することが求められる。

 まあ色々説明したが最終的な結論としては、僕はその魔験、しかも1級に合格するために、勉強に励まなければならないのだ。



「いい、悠里くん。君の寿命は、推測にはなるけど残り2年と3ヶ月。そのうち、一年を稼ぐ期間に費やすとして、元の世界の寿命分として3ヶ月は残したい。それから差し引きすると、この試験に使える期間は約1年なの。合格した私から言わせてもらうと、常人なら5年は欲しい、そんな難易度。そこを君には1年で超えてもらう必要がある。無茶は承知で言ってる、けど君に生きてもらうにはここを超えてもらわなきゃならない」


 暁音さんの言うことには、確率は五分も無い。

 全ては僕の勉強センスにかかっているのだそう。


「今ならまだ引き返せる。過酷な一年になるよ、それでもやる? 」


 彼女の脅しじゃないそんな問い掛けに、僕は覚悟を決める。

 だいぶ回り道にはなるが、これが250億稼ぐための結果的な最短ルートはこれだ。

 僕が帰らなきゃ暁音さんは元の世界に帰らない。

 何より僕が帰らなきゃと思っているんだ。


 

「やるしか、ないでしょ」


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