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-第7話-王都訪問(5)


「おもてをあげよ。」



私が土下座みたいなポーズをしている床よりも高い段の上の椅子にすわる王様が私たちにしゃべりかけてきた。

さっきまで保健室にいたものの、おじさんから王様への謁見の話を聞いた直後に、騎士団員の人が迎えにきて、あっという間に謁見の間なんてところにとおされて、王様の前で行う礼をして、今顔を上げろといわれたところだ。

やはり王様となると威厳が違うというか、まだ30代ぽいのに存在がもう長老並というか、とりあえず、ものすごい威圧感を感じる。

この国は様々な国の中でも力が秀でており、世界四カ国のうちの一つといわれているとんでもなく大きい国だ。そんな国の王様ならば、並大抵ではいられないってことなんだなぁと内心感心する。


「そなたはしずくといったな。」

いきなり名指しで呼ばれてびくっとする。そういえば姫様投げ飛ばしの罪があるんだった。

でもあれは不可抗力というものだ。これで首を飛ばされたりするならば私は逃げるぞ。

少し臨戦態勢になりながら、王様の言葉に「はい。」とだけ返事をする。

さぁどうなる。



だなんて思っていたら、王様は急に威圧感を取り除き、こちらにほほえみを向けてきた。


うん?予想とまったく違うんですけれど。だなんてぽかんとしていたら


「そなたは私の妹を救うために、自分の命も省みず、嚢魔のもとへとかけつけてくれた。

そのおかげで妹は助かることができた。もしそなたがかけつけていなかったら、妹はかえらぬものとなっておった。感謝する。」



まさかの言葉に私もおじさんもぽかん・・・とする。

まさか国の頂点である王様が、身分の低い私に感謝の言葉をかけてくれるなんて思ってもいなかった。


この王ありてこの国ありきってことか、と納得する。

この国が栄えているのは、頂点である王の心の広さ、綺麗さがあってこそなのだ。

今さっきまでは緊張していて気づかなかったが、王の横には大精霊である火の精霊と土の精霊が、ほこらしげな顔をしてこっちをみている。

あぁ、王様があなたたちの主なんだねと理解する。すばらしい心には精霊が従い、精霊をしたがえるモノが国を支える。精霊が従う王だからこそ民は心配することなく従う。





私は一気にこの王様のことが好きになった。

こんな上司がいたら私は一生ついていく。



「そこで、お礼といってはなんだが、そなたの願いをなにか叶えようと思う。遠慮せずになんでもいってみろ。」



願い・・ですか?

王様の言葉に驚くばかりで頭が正常に働かない。

王様に願いを叶えてもらうなんて体験は初めてというか、もとの世界にいたら一生ないことなのでなにをいったらいいのかわからない。

ただ、もし本当に願いをかなえてくれるのであれば



「働く場所がほしいです・・・・。」


ぽつり、と言葉がでてきた。


「私は、この横にいるおじさんに、わけあってお世話になっています。木を切る仕事を手伝ってきましたが、いままでおじさんたちは夫婦で木を長年切っています。慣れない私がいたところでなんの足しになりましょうか。」



おじさんが目を見開いてこっちを見ているのを横目で感じながら、私は王様の目をまっすぐ見つめて、言葉をはく。


「なんでもやります。お給料をおじさんたちにとどけていただける仕事ならばなんだってしますので、どうか仕事をくださいませんでしょうか。」



この私の言葉には、王様はもちろん、周りにいた騎士団の方々も驚いたらしく、言葉もでないようだ。

やはり厚かましかったかな・・・と今更になって冷や汗をかく。しかし言ってしまったからには取り消すことなどできない。


ああもうやっちまった。


と後悔していると、王様はこちらをみて確認するかのように、慎重に言葉をつむぐ。


「そなたはそれでよろしいのか?今まで同じような立場になったモノはみんな、金や地位をほしがった。どんな仕事でもというからには、けっして楽ではない仕事を与えるかもしれぬぞ。後悔をするかもしれん。それでもいいのか。」




そんなの、仕事したいのにできないよりましだ。

第一、おじさんたちに恩返しがしたいのに、王様からお金を簡単にもらってそれをおじさんたちにわたしても、恩返しだなんていえない。

楽してお金をとろうとおもうと、いつかひどい目にあうってお母さんもいってたし。

家計をやりくりしてきたからこそ、お金のありがたみはものすごくわかる。たべざかりの弟妹がいたからきりつめるのも楽じゃあなかったよ。うん。




「はい。後悔はけっしていたしません。」



はっきり、王様の目をみていうと、王様は、ほう。とつぶやいた後に、自分のそばにいた人になにかつぶやく。その人もしきりにうんうんといってる。

なんだろうか。というか仕事もらえるってことだよね!おもわぬ収穫だ。いつも働きたいって思ってたから、やっとおじさんたちにもお礼ができる。

ごにょごにょと王様達はしゃべった後で、王様はこちらを向くと




「ならばそなたは、今日からこの王宮の侍女として仕事をしていただこう。」



だなんて満足げにいってくだすった。

侍女・・・?ってけっこう位が上の人じゃないとできないんじゃなかったっけ?

そんなに簡単に王宮の仕事をやらせていいもんなのか・・・。

騎士団の方々もざわざわしだすから、やっぱりおかしなことなんだと確認する。けれど、騎士団の中でも偉そうな人たちはうむ。だなんてうなずいているから、頭が混乱してくる。

王様、ちょっと説明をお願いします。だなんて思っていたことが王様に通じたのか、王様はにんまりしたあと


「今ざわついたものたちはまだ鍛錬が足らぬようだ。」

といってさらにみんなを混乱させる。王様、意味が分かりません。

しかしそくざに騎士団の偉そうな人たちが頭をさげて、申し訳ありません。とつぶやく。


「しずくには精霊が従っておる。日頃鍛えておるそなたらが見えない精霊ということは、それだけしずくの魔力も強く、その精霊を従えるということは精霊が好む心をもつものだということだ。精霊も、無理矢理従っているようにはみえない。このことだけでもこの少女がどんな人物か分かるだろう。悪いことはないと私は判断する。」



その説明だけで、どうやら騎士団の方々は理解したようでなぜか、修練がきびしくなりそうだ、と顔を青くしてぶつぶつつぶやいていた。


落ち着いている人たちは精霊がみえる人たちだったのかと納得する。

精霊の存在価値が自分の価値を決めるんだなと思う反面、精霊たちの存在の大事さに舌を巻かずにはいられない。蒲公英色の精霊がいなければ、願い事を聞き入れられるどころか、疑われるのみだっただろう。

まあとりあえずは、すんなり仕事が決まってよかったと思うことにする。

今日から仕事開始なのは少し驚いたけど。湖の動物たちに明日からきやすく会いにいけないなぁだなんて思いながら、ちょっぴりカオス化してきた謁見の間をみて私はため息をこっそりとついた。


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