-第6話-王都訪問(4)
目が覚めると白い壁が広がっていました。
ってどこですかここはー!?
がばっと起き上がるとシーツも一緒にめくりあがった。
周りを見渡すと、どうやら保健室みたいなところに寝かせられていたみたいだった。
たくさんのベットに白い壁、端に置いてある戸棚には数多くの瓶が置いてあり、その横には机があり、そこには男の人がなにかを一生懸命書いていた。
じいっとその人を見つめていると、その視線に気づいたのか、こちらを向いてくれた。
「ああどうやら気づいたみたいだね。どう、どこか気持ち悪いところとかある?」
と聞かれて、首を横にふる。特に異常はないし、しいていえば、背中が少し痛いぐらいだ。
ってなんでこんな所に寝てるんだっけ・・・と思った瞬間、一気に失神する直前のことを思い出した。
思わず、手の平を見るが、丸くなって眠る精霊の姿は見つけられない。
どこにいったんだろうと焦っていると
「君の枕元で、ずっと心配している精霊がいるんだけど、君の精霊なの?」
だなんて医師の人がきくものだから、枕元の方を見ると、小さな蒲公英色の精霊と目があった。こっちを見ながら必死に大丈夫?と目が訴えてくるので、にっこりと笑うと、ぱあっと顔を輝かせてこっちまでとんでくると、私のほっぺたに自分のほっぺたをすりつけてきた。
なにもう可愛い!!
はうんとなっている横で、医師は心温まる光景に笑顔を見せながら、実は心の中で盛大に驚いていた。
(こんなになつく精霊の姿を見るのは初めてだ。)
この精霊自体がひとなつっこいわけではないことは、この少女が寝ている間、私が話しかけても精霊がまるっと無視していたことから十分にわかる。
まあこの少女と精霊はそれだけ長い間一緒にすごしてきたのだろうと自分の中で完結したが、もっとくわしく聞いておけばよかったと後悔するのはまだ先のことである。
とりあえず、この精霊ちゃんとじゃれまくったあと、失神した後のことを医師の人に聞くと、おじちゃん達が城に行く途中、騎士団の総括団長にたまたま出くわしたらしい。
ちょうどパトロール中だった団長は、おじさんたちの話を聞いて、一足先に嚢魔退治にいったらしい。
あの黒い人は団長だったのかとぼんやり思う。
あのテレポートを使う嚢魔は、その団長に攻撃をくらって、テレポートでぎりぎりのところで逃げ出したと聞いて、思わずほっとする。
次に嚢魔が人間を襲う前になんとか遭遇しないと・・・と思っていると、おじさんがこの医務室にきてくれた。
「大丈夫だったかい?ぐったりした君と姫様を団長様がつれて来られたときには、心臓がとまりそうになったよ。」
だなんて涙ながらにいってくれて、こっちもじんわりと涙がでそうになったが、おじさんの言葉に思わず耳を疑う。
「・・・・・姫様って?」
「姫様は姫様だよ。国王様の妹でおらせられるシェラナ姫様。しげみの中で発見されてね、ドレスもぼろぼろなっていたが、御身には傷が一つもないらしい。いやぁよかった。」
あの茂みに投げた女性って姫様ですかー?!
思わず顔が真っ青になる。
ドレスがぼろぼろなのは私のせいだなんて口がさけてもいえない。あのドレスものすごい高そうだし。というか姫様を投げたなんていったら私の命があぶない。
「それでね、なんと国王様がしずくにぜひ会いたいとおっしゃられているんだよ!」
興奮気味にはなす叔父さんの言葉に目を見開いて、ああ終わったと私は静かにつぶやいた。