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-第1話-こちらに来てからの二ヶ月間(1)

大きな森の中の美しく透きとおった湖の中で黒い瞳と黒く長い髪を持つ少女が一人で泳いでいた。

いや、一人というのには語弊があるかもしれない。

彼女の周りには小鳥たちがさえずり、魚たちが優雅に泳ぎ回り、普通の人間には見えないはずの水の精霊が楽しそうに歌っていた。その周りをさらに風の精霊が、暖かな風を送り、彼女の肌を包み込むかのように触れていく。

まるで楽園の湖のようにのどかで暖かい光景。

彼女の名前は神谷しずく。

かの世界の住民であり、この世界へと渡りついた移民でもある。

彼女がこの世界に来てから、もう二ヶ月がたとうとしていた。












どうもこんにちは。

元日本人で異世界人のしずくです。

はやいものでこちらに来てから二ヶ月もたちました。






あの日、森で気がついてからしばらくパニックに陥り、走り回り、ずっこけて、川に落ちて流されてさらにパニックになっているところを、たまたま森の木を切りにきていたきこり夫婦に助けていただきました。

今考えるとものすごいバカだよね。前ぐらいみながら走れよみたいな。

けど本当に怖かった。知らないところに一人でいて、今さっきまで買い物していた物が近くにあるぶん、より現実感があって。どうしてこんな森にいるんだろうとか、あの強い光はなんだろうとか考えるうちにおかしくなって。








あのまま川で誰も助けてくれなかったらと思うと今でもぞっとする。









助けてもらってからは、きこり夫婦にたくさんお世話になった。

洋服や食事をもらって、パニックになっている私を辛抱強く看病してくれた。

なんであそこで溺れてたのかとか、あんなに森の奥までなにしにきてたんだとかたくさん質問されたけど、どれも答えられなくて。自分でさえ何も分からないのに、説明なんてできるわけがない。せっかくお世話をしてもらっているのに、何も説明できないというもどかしい気持ちと罪悪感でいっぱいだった。

なのにおじさんとおばさんは優しく面倒をみてくれて、今現在もお世話になっている最中という申し訳なさ。

ここがドルグ大陸の三大王国の1つのディルダイン国ということや、世界地図を見せてもらったりなどして、ようやくここは自分がいた世界ではないことを知った。












そしてたくさんたくさん泣いた。







帰りたかった。家族に会いたかった。そしてなにより、大和になにも伝えることができなかった。日本が恋しくて我が家が恋しくてみんなに会いたくて・・・・・けどそれは無理なことで、何度も自分が倒れていた場所にいったけどそこにはもうなにもなかった。







あるのは、買い物したときの食べ物を食い散らかされた後のたべかすと、うすよごれた買い物袋の切れ端のみ。








切れ端を胸に抱きながら呆然と歩いていると、やがて大きな美しい湖にたどり着いた。

そこが現在の私の憩いの場であり、悲しいときに泣ける場所であり、動物たちと仲良くなるきっかけの場所だったといえよう。

まあそれはあとで説明するとして、とりあえずは今できることを考えて、お世話をしてもらっている代わりというわけではないが、なにかしたいということできこり夫婦の手伝いをすることになった。

木を細かく切る作業だったり、料理だったり、洗濯だったり。

そして木を切って薪にした後、町の方へ行き、貴族の使用人や一般の家の人たちに売りに行くのだ。







この世界は機械がない。家はもちろん木で作り、部屋を暖めるのはヒーターではなく、暖炉だ。料理にも薪は必要で、特に貴族の家になるとお風呂用の薪もかさんでくる。

なのできこりにとって貴族は大のお得意様ともいえる。まあ実際に買いにくるのは使用人なので貴族様なんて雲の上の存在なのだが。

私は皆平等精神の日本で生まれ育ったため、そういう階級にはあまりピンとこないが、つまりは偉い人はめったに、市民やもっと下の階級の人にはあまり関わらない存在であるということは理解した。

おじさんに、「私たちにとってみれば空気みたいな存在だね」というと「恐れ多い!」と怒られてしまった。だって町にくらしているはずなのに私が何度か町にきても一度も会わないのだ。そう思ってもいいと思う。

町といってもまあ丘の上の方の上流階級地域にすんでらっしゃるのだから仕方ないのだろうが。

一般の地域と上流階級の地域の間には大きな壁と門があり、常に近衛兵みたいなひとが二、三人ほどいて監視している。

上流階級の地域に行くためにはパスポートみたいなものが必要らしいが、特にその地域に行くことなど皆無に等しいので行ったことないし、威張りきった貴族をわざわざ見に行くほど酔狂な性格でもないので興味なし。









ただ、精霊の話はとても興味がでた。

なんとこの世界には精霊がいるのだという。日本で言う米一粒にも神様がいるという思想と同じく、草や花、家具から器具全てに精霊はやどっているらしい。

その中でも最高峰と言われるのが火、風、土、水の四種類の精霊でそれらは大精霊と呼ばれ、たくさんの精霊を従える偉い精霊なのだという。もちろん並大抵の強さではなく、それらの精霊と契約を交わし、従えた者の強さは王宮につかえる近衛兵千人をも上回るとかなんとか。

さらに四大精霊の上にいる精霊が光と闇であり、世界の創造主であり、すべての生き物の親といえる神様みたいな存在だといわれている。

日本では伝説みたいに語られる神様だが、実際にこの世界では精霊は存在するし、この世界の人間の中にある魔力の大きさとその人間の心をみて、精霊は従うに値する人間を決めるらしい。精霊と同じレベルの魔力をもっていればその精霊は見えるらしいが、見えるだけで使役できるとはかぎらない。もちろん魔力は鍛え方次第で上がるらしいが、もともと魔力が高い人に勝つにはたくさんの訓練が必要とされるらしい。

まあ、魔力が高い人間は血筋が関係するらしく、上の位に位置する貴族ほど強い魔力をもっており、一般市民の魔力が高い例はほとんどないとか。王族になると、使役する精霊は大精霊を二匹など、化け物並の魔力だというからすばらしいものだ。もちろん精霊が好む人間と好まない人間で、王族の中でも力関係があるらしいがそこらへんはドロドロしてそうなので割愛。

王族最強とか貴族の魔力が強いとか、そこらへんはちょっと理不尽な気がするが、もともとは昔、魔力の力が強い人々が戦い、国ができ、戦いに貢献した者ほど位を高めて貴族となるのだから当然といえば当然かもしれない。



ただそのことで一般市民を見下している貴族がほとんどだというのは気にくわないが。










まあこんなファンタジーな世界で暮らしているんですが、なかなか快適です。

次の話で説明しますけどへんな能力も身についたし、普通に暮らしていれば危険なんてないし、だれにも見つからなければ平穏にくらせるってもんだ。きこりのおじちゃんとおばちゃんとの生活は楽しいし、二人とも娘ができたようで嬉しいとかいってくれるし、とりあえずはなにも起こらないことを祈るばかりです。











とりあえずは異世界ライフを満喫しつつある主人公の説明です。う~んしずくちゃん意外と図太い性格してますね。

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