-第14話-襲撃
「天気があやしくなってきましたね・・。」
私は思わず、外をみながらつぶやく。
今までは雲一つない空で、晴れ晴れとした気分の中、リリィ様とライラさんの三人でおしゃべりを楽しんでいたのに・・・どうしたことか。
ライラさんも、リリィ様もあらっ、といった顔で窓をのぞき込む。
「雨が降らなければいいのですが・・・。」
前と後ろにいる騎士の方々もびしょぬれになるだろうし、アランガード国につくのは早くともあと丸二日はかかる。
まだまだこれからだというのに最初から雨に降られては、騎士の人たちも風邪を引いてしまう可能性があるだろうし。
うーんと唸りながら外をなにげなくみていると、あたり一面がごつごつしていることに気づいた。
どうやらここ一帯は山の緑が少ない場所らしい。
けっこう馬車が坂道を昇っているので、相当な高さになっているのではないだろうかと思う。道のすぐ横は深い崖のようになっていて、どこまで続いているのかみえなくなっている。
これは落ちたらひとたまりもなさそうだ・・・と少々ぞっとしながら、更に顔を外に出して魅入っていたとき
激しい馬のいななきと共に馬車は急停車。私は窓のわくにしたたかと頭をぶつけてしまった。
「・・ぃっ、だぁ・・っ!!」
ものすっごく痛い!
それはもう痛くてたまらないが、とりあえずこの痛みはおいといて、すかさずリリィ様とライラさんのほうを向く。
けっこうな急停車だったため、どこかにぶつかったならすぐに手当をしないといけない。
「お、おけがはありませんか・・・!?」
「いえ・・大丈夫です。ライラは?」
「ええ、わたくしも大丈夫です、リリィ様。」
二人とも、急な停車に驚いた顔をしていたものの、ケガした様子はないようで、まずは一安心する。
前のほうをみるも、騎士団の人たちで溢れかえっているばかりで、なにもみえない。
だが、なにやら叫び声やら雄叫びやらが前の方から聞こえ、砂埃も舞っている。
山の道なため、道幅が狭く砂埃が舞うことで、なおさら見えにくくなってしまった。
何が起こっているのか分からないというのはけっこう怖いものだ。
リリィ様もライラさんも不安そうな顔をしている。
私も多分同じような顔をしているだろう。
何か見えないものか、と外に顔を出し、ドアを開けて見に行こうかと決意しかけていると
「おとなしく待っていろ。」
という涼しげな声とともに、駆け抜ける力強い風。
頭を、ふんわりと撫でられる感覚。
はっと、その声の主を頭に浮かべながら、目がその姿を探す。
しかし、一瞬先にはもう砂埃の中に突入しており、もううっすらとしかその背中はみえなかった。
あれ・・・あたま、なでられた・・・?
ささやかれた声が耳に残る。
うっすらと、顔に赤みが差したのには、気づかないふりだ。