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-第10話-話す




今私の前には絶世の美形がいる。

無表情な顔はどこか人形めいており、ただひたすらじっとみられるこの状況は、ものすごいつらい。

団長さんがこちらを見つめだしてから何分たっただろうか。

私の傍らには、ぼんやりと体を光らせてくれる月夜の精霊がいる。

団長さんはふいに、その月夜の精霊に目を向けた。

目線がはずれたことで、肩にはいった力が抜ける。






その瞬間、私は一歩も動けなくなった。






団長さんからのものすごい殺気がこちらに向けられたからだ。


それと同時に、闇夜に紛れて聞こえるはずの虫や動物の鳴き声が一気に静まった。


痛苦しいほどに、体に針が突きつけられる感覚。


そして殺気が向けられたと同時に、風の轟音とまばゆい荒光りがおこった。



思わず目を閉じ、再び開いたときには2人の美女が私を団長さんから守るように私の前に立っていた。



・・・・誰ですか?



突然の出来事に目が点になる。

美女が二人も目の前に現れたことに驚けばいいのか、団長さんに殺気(初めて味わったがあれは多分殺気といっていいだろう)をむけられたことに驚けばいいのか迷うあたり、私の頭はすでに正常に働いていないのだろう。


(われらの主に手を下すこと、決して許さぬ。そなた、殺されたいか。)

全体的に緑色で、長くて淡い緑色の髪をたなびかせた美女が、にじみ出る怒りの声をあらわにして団長さんに話しかける。


(あなたが主の敵になるのなら、消し去るのみです!)

今度は体を黄色く光り輝かせた、蒲公英色のショートヘアの美女が、団長さんをじぃっとにらみつける。


「ふむ。大精霊と、月夜の精霊の中でも位が高い人型がお前を守るか。ますます注意すべき対象だ。」



にらみあう両者に、おいてけぼりな私。

もしかしなくても、この美女二人は可愛い可愛い(私と契約を交わしたばかりの)精霊たちですか!



もっとよく二人を見てみたいが、前方は殺伐とした雰囲気で、とてもじゃないがはしゃいだりできない。

というか、そんなことしたら団長さんになにをされるかわからない。



どうすればいいのか迷う私に、団長さんはゆっくり目を向けたかと思うと、


「俺は王を守る者としてお前を疑う義務がある。」

といってきた。



疑う・・って?


いや、わかっている。

だってあの嚢魔の事件には謎がたくさんありすぎるから。

嚢魔がいながら私がなぜ殺されずに生きていたのか、そして牛型の嚢魔はなぜいなくなっているのか、牛と精霊に分かれたとしても、精霊はどこにいったのか。

私があの状況を客観的にみて考えただけでも、これだけの謎がでてくる。

騎士団の人たちからなにか聞かれるかと思ったけどなにもきかれなくて、身構えてたぶんちょっと肩すかしな気分だった。

けれど、やっぱり王様たちは疑っていたのか。

ううん。疑わない方がおかしい。あの王様だからこそ、絶対に異変を感じたはず。



私はなんていえばいいんだろう。

自分の変な能力を話すべき?

今さっき精霊たちが勝手に契約したのであって、私自身魔力なんてあるかも分からないのだと正直に話すべき?


だめだ。逆に怪しいとこが増えるだけだ・・・。

ただ、なにか伝えたい。自分の気持ちだけでも。

私はすうっと息を吸うと、団長さんを見つめかえしながらなんとか言葉を紡いでいく。



「私は、王様に感謝しています。王様から頂いたこの仕事はまだまだ失敗ばっかりでへこんだりするけど、みんな優しくて仕事に誇りもってて凄い人ばかりで。だから、えっと、その、なんていったら分からないんですけれど、私は王様を尊敬してますし、この環境を与えてくださった王様にお礼が言いたいというか、」


ああ、もう上手くいえない!

大和よ力をかしてくれー!



「とにかく、私は王様が大好きです!疑われるのは分かりますが、それだけは絶対です!」


あの優しい目が、全部ニセモノだとは思わないから。

大精霊たちが主を尊敬しているのが分かるから。



むむむっと団長さんを睨み付けるようにみつめていると、無表情の団長さんの表情が少しだけ崩れた、ような気がした。



「・・・そうか。」


団長さんはたった一言それだけつぶやくと、背中を向けて茂みの中へと消えていく。


私が今必死に思いを伝えても、疑いがはれないことはわかってる。


でも少しだけでいいから信じてくれたらいいなぁ、とその背中を見ながら私はぼんやりと思う。




そのためにもまずは仕事を失敗しないように頑張らなくちゃ!と、ここに来たときのしょぼくれた気持ちは騒動で吹き飛んでしまったのか、やる気みなぎった気持ちが復活して明日からの仕事に思いをはせる。


案外私って単純な性格なのかもしれない・・・。



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