3針の筵ってこの事
どうもどうもどうもまいど。
異世界転生して推定悪女のメリナ・グリーンだよ!
そして今は設定特盛、異世界転生からの異世界移転のメリナ・グリーンだよ。わっしょい!
すごい怖い。
めっちゃくっちゃ怖い!
目の前には爽やかで特大の美がつく青年がにっこりと微笑んでいる。
私、知ってる。
大体ニコニコして人当たりの良さそうな美青年は心の中ドス黒いって事を……!
鉄板だから。恋愛ファンタジーの鉄板だからさ!
「ええ……っと……何か御用でしょうか?」
「……御用?」
「…………」
おっと。
勝手な発言はあかんやつやったか。
ピクリと、彼の笑顔が一瞬歪んだが、あっという間に華やかな笑顔が戻り、無言の圧が降りかかってきた。
先程まで死んだように天井を眺めていた私が何故、美形と顔を突き合わせているか。
それは簡単である。
美くしいメイドさんから舌打ちされ、ため息もろくにつかせて貰えずよもやこれが地獄かと部屋の中で気配を消していたが、部屋の外で誰かがノックしたと同時に、舌打ち美人のメイドさんが嫌々ながらも慌てて支度を整えてくれたのである。
そして現れた美形。
風呂美人の襲来である。
背後に連れてる護衛まで美形ときた。
なんだよここは美形の巣窟か……?
とんでもねぇ場所だな。
護衛か、執事か。一瞬迷ったが腰に刺さった細長いブツで判断した。
そうか。随分とご立派な刀だ。こえぇよ。
そして風呂の妖精こと、名も知らぬ異世界の裸体の貴公子。
いや、別に風呂の貴公子とは言ったが今も裸体というわけではない。
彼は上品なシャツにスラリとしたこれまた品の良いズボン。一見ラフそうではあるが、上質な素材が見て取れる服装でこの部屋にやってきた。
ここで私は彼と言ったが、その美貌に実は彼女という表現が的確なのでは……? という疑問すら抱いている。
裸を見ただろうって?
ああ、はい。うんうん。
瞼の裏には艶めかしい彼の裸体がこべりついているけどこの状況でそれを思い出すのは自殺行為だったわ。男……男……だったのかあれは……?記憶が……。
目ん玉と脳みそが美し過ぎて認識力バグってる?
脳内がパニパニパニックである。
ともあれ、どうやらあのツンツントゲトゲのメイドさんが焦って準備をするほどにはお偉い権力者なようだ。
ピリリとした空気が流れる。
その空気に終止符を打ったのは、意外にも、裸体の貴公子、その人だった。
「……んん、失礼」
「なんでしょうか……」
「……ああ……」
不穏!
やっべ。まさか私の脳内がまた漏れた……!?
しかしさすがの私。
そんな動揺を顔に出す事は無かったものの、貴公子(仮)が咳払いと共に発する言葉には絶妙にヒリヒリとするプレッシャーを感じる。思わずびくりと肩を揺らせば、貴公子(仮)は考え込むような表情に変わる。
「……いえ……、まぁ、話をしようかと思いまして」
「話……ですか?」
「ええ……まぁ」
ええ……まぁ。
ええ……まぁ?
なんだろう。突然の下手。
声色も何処となく穏やか。
表情も裏表はっきり見えていた感じから妙に、なんだか……。
「あの、ええっと……」
「……はい……?」
なんだろう。
すごく……。
もじもじしている?
あ……いや、今ものすごく冷たい顔に……?
赤くなったり青くなったり、忙しなくころりころりと転がる表情に頭にハテナが浮かぶ。
「その、聖女様……、私の失礼な態度をお許しください。貴方がこの国へ舞い降りて下さった、それは大変幸福な事だと伝え聞いております」
穏やかに聞こえていたが、どこか震える声は恥ずかしさやもじもじなんかではなく、怒り……だろうか。
「え、ええ……? あの……」
「はぁ……先程はいくら聖女様が勝手にこの国にやってきたからと言って、少々言葉が過ぎました。申し訳ございません」
「ちょ、ちょちょちょっと」
「あまり気が乗りませんが……仕方なくしきたりに従って」
「あの! あの!」
「婚姻を進める事に」
「はぁ!?」
「……はい? あの、先ほどからなんなんですか? これが大体いつも聖女様からの要望ではありませんか」
より一層冷ややかさを増した声色に迷いのない苛立ちが含まれ始める。
「〜〜っいやいやいやいや」
ここでようやく、私の声が聞こえたようで、走り出したら止まらない暴走列車のごとく走り抜いていた口が止まった。
一気に話してしまおうと言う勢いと意気込みを感じた。
しかしさせんぞ……。
なんか今とんでもない言葉が飛び出した気がしたんや!
なんかめちゃくちゃ重大そうな単語やったやん?
重要そうな単語やったやん!?
「はぁはぁ……いやいやいや、あの、ごめんなさいごめんなさい。興奮して大きな声を出してしまいました。なんだかその、情報がぐちゃぐちゃで……貴方の言ってる、その……『聖女様』? ですか?そんな大層な者ではないんです、私。まったく。全然。擦りもしておりません」
「は……?」
パカン、と大きく開いた口からこぼれ落ちた声は、部屋に妙に響いた。
「だから、聖女じゃないんです。ついでに言えば、王家の人間でもないんです」
「聖女じゃ無い?…………ん……? おうけ? おうけとは何でしょうか? 何か関係が?」
「んん?」
怪訝そうな瞳が、大きく見開いて私を見る。
それは1人だけでは無い。
メイドさんに護衛、そして目の前の青年。
そしてただただ、沈黙が部屋の中を支配する。
「お、王家の人間じゃ無いといけないんですよね?」
「……何のことでしょうか」
「えっ」
「……」
ええ!?
なんで?
どう言う事!?
だめだ!
どうやら何も伝わってない!
そして何かがおかしい!
数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。
脳みその中はパニパニパニックな主人公です。賑やか。
◯お願い◯
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