09 最終回! またね!!
「と、いうわけでこの作品は完結することになりました~ いや~長かったですね~」
「全然長くなんかないですよ!」
「今まで、たくさんのイベントがありましたね下月さん。今日は最終回らしくそれらを振り返っていきたいと思います」
「え!? イベント………何かありましたっけ?」
「いやだなあ下月さん。夏休みにはみんなで海に行って、冬休みにはみんなでクリスマス会をしたじゃないですか」
「せ、先輩の中でありもしない記憶が捏造されている!? 目を覚ましてください!」
「このサークルは結局30人以上が所属する大所帯になって、俺には可愛い彼女もできた」
「そんなことには一切なっていません」
「俺は大手に就職が決まり、これからも勝ち組の人生を歩むのだろう」
「や、やばい。先輩がどんどん現実から遠ざかっていく……こうなったら」
俺の体が強く揺さぶられる。
『先輩、先輩!』
徐々に下月の顔が見えてくる。
朦朧としていた意識が、はっきりとなった。
「ん? お、おお下月。どうかしたか?」
「よかった……目が覚めたみたいですね」
「どうやら俺は長い夢をみていたようだ……」
「あ、完結するというのは現実ですよ?」
「まじかよ! 一番夢で合って欲しかった部分だよ!」
もう完結しちゃうのか?
俺たちのサークルは……
「それにしたって完結が早すぎませんか!? まだ9話ですよ!? 登場人物が2人しかいないのに完結するってどういうことですか!!」
「お、俺に言われても……」
「まだ私達何もしていませんよ! 9話ともほとんど高成先輩と私が部室でおしゃべりしていただけですよ!!」
「確かにそうだな……」
「これで終わってもいいんですか? 最後くらいパーッとやりましょうよ!!」
「おお、それはいいアイデアだな」
青春謳歌サークルとしての最後の思い出を作ろうじゃないか!!
「じゃあ何にする? 最終回だからもうなんでもありだろ? 旅館とか行って障子ぶっ壊して、天井に穴とかあけちゃう? んで物とか盗んじゃう?……でもそれは法律に違反するか……ん?待てよ……よく考えたら法律なんて関係なくね? 最終回なんだし……法律に縛られなくてもいいだろ? そうだなあ……大学に放火とかしちゃう? 火祭りやっちゃう?」
「せ、先輩…………さすがに倫理観を疑います」
下月はドン引きだった。
うっ………自分だけが舞い上がっていたようだ。
じょ、冗談だよ?
「それなら下月はどんなことがしたいんだ?」
「そうですね。遊園地とかいきませんか!? 一日中楽しんで、最後は観覧車の上でエンド。とっても良くないですか???」
「えーー。最寄りの遊園地までめちゃくちゃ遠いじゃん どうやっていくんだよ」
「そんなの簡単ですよ。字の文に『というわけで俺達は遊園地に到着した』って一言書けばいいだけです」
「道中をまるまる省くつもりかよ!」
まあ確かにできなくはない。
なら、やっちゃいますね!
というわけで私たちは遊園地にーーーーーー
ちょ、ちょっと待て!!
お前は誰だ!?
え? 下月みこですけど?
は? 下月!?
い、いや!
なんで字の文の世界にお前がいるんだよ!!
どうやって侵入してきた!?
それはもうひょいひょいっと。
意外にセキュリティゆるゆるでしたよ。
まじかよ!
そんな簡単に入れちゃうのかよ!!
これでもう私達、鍵かっこを付けずに会話できますね。
今すぐ出ていけ。
ドスッ。
ひゃう!?
「何するんですか!!!」
「お前が勝手に字の文に侵入するからだろ。あこは俺だけの世界なんだよ」
「いいじゃないですか。最終回くらい。好きにやらせてくださいよ」
「それもそうか……よし分かった! もう好き放題やってしまえ!! 俺は知らん!」
「え! いいんですか!? それじゃあ私だけこの作者の別の作品に転生しますね! 生まれ変わって第二の人生を歩みます」
「は? 何を言ってんの?……」
「言葉の通りですよ」
「そ、そんなこと許されていい訳ないだろ!」
「好き放題やれっていったのは先輩じゃないですか!! 今更止めるんですか!! 男に二言はないんでしょ?」
「すまん。俺は女だ」
「衝撃のカミングアウト!? と、とにかく、私は転生します。あっちの世界で私が何かやらかしたら、私を送りだした先輩の責任ですからね」
「理不尽すぎないか!?」
俺は頭を抱えた。
「じゃあ先輩お元気で」
「あ! おい!!」
謎の光に包まれていく下月。
「もう、私には時間がないみたいです……」
「何消えそうになるヒロインムーブかましてるんだよ! 俺も連れてけ!!」
「だ、だめです! 私は転生しますが、先輩は一人でこの世界を監視し続けていてください! 観測者としてこの世界を見届けてください」
お前がいなくなったら登場人物が2人しかいないこの作品に、俺しか残らないじゃないかよ。
俺だけ取り残されるのか……
「俺を一人にしないでくれ!!」
「またには戻ってきますよ。私はそんな薄情な後輩ではありません」
「なら一緒に連れて行けよ!」
「あ、それは無理ですごめんなさい」
何でだよ……
「それでは先輩、行ってきます」
「ああ、行ってこい」
俺はもうあきらめた。
「またには戻って来いよ」
「はい!!」
俺は下月を送り出したのだった。
このサークルで青春っぽいことは何もしていないが、
まぁ、楽しかったよ。
ー完ー
完全に私が好き放題やりました。
下月みこちゃんは私の違う作品で登場させるかもしれないです(笑)
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
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