07 友達が少ない
今日も俺と下月は部室で二人きりだった。
下月はいつもどうりスマホをいじっていた。
俺は明後日までのレポートを、自販機で買ったコーヒーを飲みながら書き上げていた。
苦いものはあまり好きではないが、勉強をしている時にコーヒーを飲んでいると、なんだが頭が良さそうに見えるから俺はよくレポートを書くときにはコーヒーを飲んでいる。
「高成先輩って結構、無理してコーヒーを飲んでいますよね。コーヒーを飲める人がかっこいいとか思っているんですか」
「!?」
こいつ、たまに俺の心を見透かしたような発言をしやがる。
「何故俺がコーヒーをあまり好きではない事を知っているんだ?」
「だって、飲んでいる時に、明らかに美味しくなさそうな顔をしていますよ」
「……そんなに顔に出ていたか?」
「はい。それはもう」
まじかよ……。
無理して飲んでるのバレバレだったのか……
「そういう下月はコーヒー飲めるのか?」
「私ですか?もちろん、飲めません」
「そうか。でも、飲めるようになりたいとか思わないのか?ほら、何だかコーヒーを飲める人ってかっこいいだろ。コーヒーが飲めるだけで仕事が出来そうな感じがするじゃないか」
「まぁ確かにそうですけど、無理して飲めるようになる必要はないと思います。歳を取るに連れて、味覚も変化していくそうです。何もしなくても、歳を取る過程でコーヒーが飲めるようになるかもしれません。私はその時を待ちますよ」
「ふーん。そうか」
俺も無理して飲めるようになる必要はないのかもしれないな。
次は自分の好きな飲み物を買おう。
超甘いやつ。
「そういえば先輩、この前の中間テストはどうだったんですか?」
「ん?ああ、全く出来なかったよ。分からなすぎてテスト時間が余ったくらいだ」
「あら、そうですか。また来年頑張って下さい」
「何故俺が落単する前提なんだよ!そこは『期末テストは頑張って下さい』だろ!」
「期末テストでせいぜいあがいて下さい」
そんな事を言えとは一言も言ってねえよ。
「私、中間テストがなかったものですから、まだ大学のテストというものを経験したことがないんですよね。実際、どんな感じなんですか?」
「そうだな……でも中学校や高校のテストとあまり変わらないさ。勉強したらいい成績が取れるし、しなかったら出来ない」
「なるほど。つまり先輩は勉強をしなかったんですね」
「……一応、結構勉強したんだがな。しかしどうしても一人で理解するには限界があったんだ」
「ああ、そうですか。先輩、友達いませんもんね」
サラッとそんな傷つく事を言うんじゃあない。
確かに多い方ではないが、俺だって友達くらいいるんだよ。
「そんな事はない。俺だって友達くらいいるさ。4人くらい」
「4人?四捨五入したら0じゃないですか」
「一桁を一の位で四捨五入するんじぁない!そもそも友達を四捨五入するな」
「いえ、高成先輩が友達だと思っているからと言って、相手も先輩のことを友達だと思っているとは限りませんよ。それを考慮すると、やはり先輩には友達がいない事になります」
「どういうことだよ!何も考慮できてねぇよ。」
全く。
「そんな事をいう下月は友達何人くらいいるんだよ」
そう聞くと、下月は待ってましたと言わんばかりに胸を張って、
「5人です!」
ドヤ顔でそう言った。
「いや、そんな自慢げに言う人数ではないだろ!後、数えられる時点でお前も友達が少ないってことなんだよ」
「失礼ですね。私の場合四捨五入すると10人ですよ。先輩より10人も多いんです」
「5人も増やすんじゃない」
「まぁ、いいです。私の交友関係は『狭く深く』なんですよ。今いる5人の友達と仲良くやっていくんですー。先輩みたいに『狭く浅く』ではないんですよ」
「俺の交友関係は小学校低学年のプールかよ!?」
しかし、俺は二年生にもなって友達が4人。
対して、下月は一年生で友達が5人か……
そこには大きな差がある気がするが……
だが、駄目だ。
先輩たるもの、後輩との友達数勝負で負けるわけにはいかない。
「俺だって、一年生の頃から家で毎日話かけているサボテンや、いつもそばにいてくれるエア友達のトモくんも含めると、なんと友達が6人もいるんだよ!どうだ!」
「……うっわ、先輩、そこまで行くともう救いようがなくなります。近くの精神科にでも行ってきたほうが良いんじぁないですか?」
う……
こいつ、マジで引いてやがる。
「じょ、冗談だよ。流石に……」
「いえ、さっきのは冗談のトーンではなかったです。マジの発言でした。さぞコーヒーみたいな苦い人生を送ってきたのでしょう」
「最初の話と絡めてくるんじゃあねええええぇぇ!」
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