03 部員獲得にはSNSで宣伝することが必要だと思うんです!
「部員獲得にはSNSで宣伝することが必要だと思うんです!」
部室の扉を開けると、今日もまた下月が張り切ってそんなことを言ってきた。
最近下月は俺よりも真剣に、部員を集めようと色々な意見を出してくれている。
「ああ、そうだな。俺もそう思う」
「じゃあ何でやってないんですか?」
「いや、前からSNS自体はやっているんだ。ただどうにもフォロワーが増えなくて……」
そう言うと下月は堂々と胸を張って、
「なーんだ、そんなことですか。それならこの私にお任せ下さい!」
何だコイツ。
やたら自身満々じぁないか。
「SNSのことは若者に任せてください」
「俺も若者だろ。まだ19歳だぞ。俺とお前じゃ一年しか歳が離れてないだろ」
「一年も離れているではありませんか。一年という時間は非常に長いです。だって一年もあれば人間は虎にも、龍にも、サイヤ人にも慣れますからね」
「全部なれねえよ」
「ちなみに私は実際に一年間で、人間になれました」
「衝撃のカミングアウト!?元々人間じゃなかったのか!?」
「はい。元々は、名も無き小さな微生物でした。あれは遡ること数年前、私は厳しい修行を積み重ね、次第に腕が生え、足が生え、やっとの思いでこの体を手に入れたのです!!それからというもの……」
「はいはい、お前の冗談は一旦置いといて……」
「もう、話の途中で水を差さないで下さい。ここからが良い話だったのに。魔王を討伐したり、信じていた仲間から裏切られたり」
どんなストーリーだよ。
タイトルをつけるとすれば……そうだな。
『微生物から始まる最強異世界攻略』的な感じか?
誰か連載してくれ。
「もういいです。兎に角、今日の目標は我がサークルのSNSフォローワー数を増やすことです」
やっと本題に戻ったか。
「とりあえず、アカウントを見せてください」
俺はスマホを取り出し、下月にアカウントを見せた。
「ふむふむ。って、フォロワー数16人!!しかもその内の三人がスパム垢じゃないですか!?今すぐブロックして下さい」
「スパム垢も貴重なフォロワー何だよ。ブロックなんてしたら13人になってしまうだろ」
「16人も13人も変わりませんよ。そんなことを気にしているのは先輩だけです」
「下月、お前はまだ分からないかもしれないが、SNSのフォロワー数がそのまま、そのサークルの力を表しているんだ。16人が13人になることで我が『青春謳歌サークル』はフォロワー数15人の『ゲテモノ食サークル』に負けることになるんだぞ」
「負けていいじゃないですか。『ゲテモノ食サークル』の方が『青春謳歌サークル』という恥ずかしい名前の、よく何をするのか分からないサークルより、よっぽどやることが明白で存在意義があると思います」
こいつ、自ら負けを認めるというのか。
プライドとかないのか、プライドとか。
ん?
何だかその言葉は自分にも刺さる気がした。
(01話 末尾参照)
「そんなことよりもまずはフォロワーを伸ばす方法を早く教えてくれよ」
「全く、せっかちですね先輩は。分かりました。では、この下月みこがこのアカウントをプロデュースしてあげましょう!」
「頼む。藁にもすがりたい思いなんだ」
「ちょっと待って下さい。私の事を藁とかいう小さい存在だと思っているんですか?」
「違う、間違えた。猫の手も借りたい思いなんだ」
「あまり意味が変わっていません。私の助けを猫の手という小さな物だと思っているのなら、それは大きな間違いです」
実際にあまりこいつには期待していないが……
「先輩は大船に乗ったつもりでいればいいんです!」
「その大船と言うのはタイタニック号か何かか?」
「違います。そう簡単には沈みません。エンデュアランス号です」
そっちも沈んでるんだよ!
本当に大丈夫か?
「まず、アイコンの写真から駄目なんです。なんですかこの写真は。この部屋の写真ですか?全く面白みがないです」
「いいだろこれで。サークルっぽい写真にしようと思ったけど、そもそも活動してないから、それっぽい写真がないんだよ」
「まぁ、それは百歩譲って良いとして、何故アカウントのプロフィール欄に何も書いてないんですか!?ここでアピールするものでしょう!?」
「毎回こういうプロフィールとか何書けばいいか困るんだよ。誕生日とか、好きな食べ物とか、後はよく聞く音楽とかか?」
「サークルのアカウントに自分のプロフィールを書いてどうするんですか!?」
「そ、それもそうか」
「はぁ、まさか高成先輩、このレベルなんですか?」
「……まあな」
認めよう。
俺はSNS音痴なのだ。
「これは……長くなりそうですね」
こうして下月によるSNS指導が始まったのであった。
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