表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の王女  作者: みなと
1/3

1:なぜかバレないひみつ


「きゃあ、ハルカ様よーっ!」


穏やかな春の日差しの下、女たちの黄色い声が上がる。

ここはウォームとよばれる大国。小麦畑がひろがる豊かな場所。


その城内に、目を見張るほどに麗しい王子がいた。その名をハルカという。


「小鳥とお戯れになるハルカさま・・・お美しいわ・・・」


城で働く女中たちを虜にしてやまないこの人物ーーハルカは、

もとは別の国にいたが戦禍に巻き込まれ、亡命してきた身である。

その憂いを帯びた姿がいっそう、女たちを惹きつけてやまないのであった。

ハルカとそれを見つめる女たちの春の園の穏やかさのなかであったが、


「「ハルカ様あああああッ!!」」


そこに突如響き渡る、怒鳴りこむような声と、続いてけたたましく、

一人はドスドスと重量感のある足音で。

一人はかかとを鳴らして軽やかに、だが圧倒的な速度で。


ハルカのもとへと向かうふたつの足音があった。



「今日こそどちらとお付き合いなさるか決めていただきますわよ〜!!」


一人がたくましい体躯に張りのある声でハルカに迫る。

この者の名をベルという。

ベルはウォームの国の王家に産まれた子である。

ベルは今日もその巨躯をハルカの前にどんと現し、

真っ赤な口紅と、目元に鮮やかな紅をさして、ハルカのもとへやってきた。

毎日のように来る目的は無論、ハルカとの交際ーーもとい、結婚である。



「もちろん私とお付き合いしてぐださいますわよね!?」


ハルカに迫るもう一人の彼女、ウォームの国の訛りが抜けきらない、

この少女の名はカシス。

この者もまた、ウォームの王家の血をひく者である。

華やかなドレスと自慢のカールヘアで軽やかにハルカへと迫る。


この少女が来た目的ももちろん、ハルカとの交際ーーもとい、結婚である。



花園に突如訪れた嵐に目をまるくして、美しいそのひとが振り向く。

「あの・・・ちょっと落ち着いて頂けますか・・・?」


二人の気迫に気圧されつつも、穏やかになだめるこの人物こそが、ハルカ。

艶やかな黒髪にバラ柄のマントをまとい、優しい声に反した涼しげな目元が不思議な魅力をはなつ。



「ベルさんも、カシスさんも、お二人とも私に時間を割かれるには勿体ないほど

 とても素敵なお方ですから、・・・一度落ち着いてきちんとお相手を考えていらしてください」


と、ハルカはやんわりと断りの言葉を述べ、

持ち前の笑顔でごまかしつつ、二人を城へと押し戻した。

カシスもベルも不満な気持ちがあらわであったが、

しかしハルカ様のおっしゃることなら、淑女はゴネるまい・・・と、


「「ハルカ様のいけずっ!」」


とだけ言い残して、じりじりと自室へ帰っていった。



実はハルカがこの二人に交際を迫られたことは今日に限ったことではない。


ハルカがこの国に亡命してきた時から、二人はハルカに一目ぼれしてしまい、

それ以来ずっと二人の熱いラブコールを受け続けていたのだった。


非常に恵まれた容姿を持っていたが、戦火を逃れてやむを得ずこの国に逃げてきた時点で、

ハルカには帰国することが第一目標であり、恋愛などという思考はみじんもなかった。



(・・・しかも本当は私、女なんですよね)


そう、この国に亡命してきた時からハルカは王子に扮しているーーー王女だった。


うまくごまかすことができたことへの脱力感と、

誰からも男と信じて疑われもしなかったことへの呆れをふくんだ安堵をかかえ、

彼女はふたたび庭園を歩き始めた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ