ウサ耳萌え
「ウイ~!ふにゃは何でしょうにゃぁっ!」
え・・・?ふにゃふにゃだよね・・・?いきなりふにゃが現れたと思えば・・・何だか帽子をかぶっているようで。その帽子はふにゃの毛並みと同じ黒である。そして、ふにゃのたれ耳わふたんお耳をすっぽり覆うようにして、ロップイヤーお耳が付いている。
「見て、見てにゃぁっ!」
ふにゃが後ろを向けばふわもふわふたんしっぽを器用に丸めており、そして背中には純白のウィング付きリュックサックを背負っている。
もしかして・・・とは思うけども。
「びゃ・・・ビャウテン?」
「当たりにゃぁっ!」
おぉ・・・!当たった!神獣ビャウテンと言えばウチにもいるけれど・・・ロップイヤーお耳にしっぽ、そして背中に翼を持つのが特徴なのだ。
「じゃ、じゃ~んっ!どこからどうみてもビャウテンにゃぁ~!」
ふにゃがくるりんと回って再びこちらを向けば・・・
はらり・・・っと丸めたしっぽが解け、いつものわふたんしっぽに戻る。
いや、後ろはモロふにゃふにゃ!てか、“にゃぁにゃぁ”言ってる時点でふにゃでしかない!お手手と脚はふにゃふにゃそのままだし!!
「でも・・・何故ビャウテンコスをしてるの?」
「猫耳萌え、わふたん萌え・・・そしてウサ耳萌えにも力を入れるにゃぁ~?」
「入れるのです!」
「入れるぜ、オゥ、イエァ!」
あ・・・本物のビャウテンの成獣・アセロラちゃんと、ひなのシーベリーちゃんも加わった。これは正式なふにゃふにゃとビャウテンのタイアップらしい。
「これで神獣の社に行ってもバレないにゃぁっ!」
・・・いや、多分バレバレだろうけど・・・。
でも、まぁ・・・アセロラちゃんが社に招いてくれると言うので取り敢えずついていくことにした。
―――シエナ自治領・神獣の社
いつもの通り、お兄さまの移動扉で神獣の社に向かえば・・・
「ビャウテンにゃぁ~!」
「ビャウテンですよ!」
「オゥ、イエァ、ビャウテンろっきゅぅ~!」
※シーベリーちゃんはたまに難しい言葉を使いますが、ちびっ子なので優しく見守ってやってください。
行き交う神官さんたちが驚いているが・・・
「そ、そうですね!」
「ビャウテンですね!」
・・・と、何だか気を遣ってもらってしまった。しかしなんだろう・・・ふにゃがとってとってと歩くたびに、何だかシャンシャンと音がするような・・・。
「え・・・コスプレ大会?」
そうして移動していれば、神獣の社で巫女さんの修業をしているファラちゃんと遭遇する。その腕の中にはふにゃいぬ姿のまーさんが相変わらずすっぽりとおさまっていた。
「何してんだ?ふにゃ」
ふにゃいぬ姿のまーさんはふにゃいむによく似ているが、実は別種なのだ。その証拠にお耳がわふたんではなくわんこに近い。そして割と口調はちょっと口の悪い兄ちゃんって感じ。
「ビャウテンにゃぁ~!」
「ビャウテンです!」
「だぜ、だぜイエァ!」
「・・・いや、どう見てもふにゃふ・・・ふぐっ」
そう言おうとしたところでまーさんがファラちゃんに口を塞がれる。
「こら、まーさん。わかってても言っちゃダメ。あれは黒いビャウテンだよ」
う・・・うん。ビャウテンコスをしたふにゃふにゃにしか見えないもんね。みんな多分わかってるけど、優しさって大事だよね。
「え~、しゃぁねぇからビャウテンでいいや」
「よっしゃ、にゃぁっ!」
そこで喜べるふにゃが俺は大好きだよ。ふにゃ。
そしてファラちゃんが休憩に入ると言うので、先にお部屋で待っていたアプリコット姫ことリコちゃんと合流した。リコちゃんはシエナ自治領の首長の妹姫でたれ耳の犬耳しっぽのとてもかわいい女の子。ここ、神獣の社でファラちゃんと一緒に神獣に捧げる伝統舞踊を学んでいるのだ。
「猫耳萌え、わふたん萌えに負けないよう、私たちウサ耳もがんばらねばなのです!」
「まぁ・・・!素敵です!私も犬耳萌え、がんばらねば!」
と、リコちゃん。大丈夫。リコちゃんは十分犬耳萌え。
「あ、ファラちゃんもちゃんと狐耳萌えだからね」
「えっ」
いや・・・狐耳しっぽのファラちゃんに気を遣ってみたら、何かひかれたんだけど。何故に!?
「ふにゃぁ!ユリフィウスさまとお揃いの狐耳萌えにゃぁ!狐耳萌えはしっぽ萌え度も高いにゃぁ!」
因みにユリフィウスさまとは神獣の女王で、狐耳5本しっぽである。
「うん、ふにゃわかってる!」
「さすがです!ふにゃさま」
何故!?何故ふにゃが言うと素直に納得するんだいファラちゃん!そしてリコちゃんは普通にそれに乗っかっていた。女の子って・・・難しいよねっ!!
「でも、もっとウサ耳萌えを広げるためにはどのような活動が必要でしょうか」
と、アセロラちゃん。因みにシーベリーちゃんはリコちゃんの巫女服の袂で遊びだし、リコちゃんが頭をなでなでしてあげている。
「普段は社でどんなことをしてるの?」
「はい!えぇと・・・ミックスジュースを飲んで、お茶をして・・・ファラちゃんとリコちゃんのお稽古を見学したり、ふにゃいぬたちと戯れたり・・・はっ!」
「どうしたの?アセロラちゃん」
「・・・私、ただここでのんびりしているだけな気がします。あ、キナ家でもです」
た・・・確かにぃっ!
「でも・・・その、いいんじゃない?それでも」
神獣だし。そんな神獣から俺たちはありがたい加護をもらっているのだから別に構わないと思うし。
「だけど・・・だけどそれじゃぁ、ウサ耳萌えを極められません!」
そうかなぁ・・・?猫耳萌えもそこにいるだけでかわいいけど。ウチの白猫耳しっぽの妹・もゆちゃんと同じである。
「ふにゃ、いい方法があるにゃぁ!」
「いい方法・・・ですか!?」
アセロラちゃんが期待を込めた目でふにゃを見やる。ふにゃはおもむろにしょっている翼付きのリュックを降ろすと、中から・・・
「タンバリンを叩けばいいにゃぁっ!」
タンバリンを取り出したぁ―――っっ!!!てか、やっぱりタンバリン入れてたんかいっ!!
「つまり・・・楽器ってこと!?」
「あぁ・・・社にもあるよ」
と、ファラちゃんがどこかへ楽器を取りに行き戻ってくると・・・
「はい、これ。神楽鈴」
日本の神楽で見るような神楽鈴―――っ!!?社にもあったんだ。
「今の時期はマ・ラカスの時期じゃないからね」
「そだな」
と、ファラちゃんの言葉に応えるまーさんことマ・ラカス。因みにファラちゃんが言うフルーツのマ・ラカスはシークワーサー味のおいしいジュースである。発行させればお酒としても楽しめる。その旬は夏。今は冬の初めのため当然ながらマ・ラカスは採れないのだ。ってことで、ファラちゃんが持ってきてくれた神楽鈴。
「これ・・・何だか手にしっくりくる気がします!」
「オゥ・・・!シーベリー式たんばりん!」
神楽鈴を構えながら何だかやる気に満ち溢れた様子のアセロラちゃんとシーベリーちゃん。タンバリン・・・ではなく鈴なのだが。まぁ、気に入ってくれたようで何よりである。
その後、神獣の社と言えば神楽鈴を持ったビャウテンのイメージが広く民衆に受け入れられるようになり、ウサ耳萌え派のファンクラブも生まれたりと・・・無事ウサ耳萌え促進のよいさきがけとなったらしい。




