第65話 戦いの終わりに
バーンズが死んでから3か月が経った。
あれからたくさんの出来事があった。
まず1つ目はジークが伯爵となった。
というのもカーメル辺境伯の伯爵位をジークがもらったのだ。
このバルクス王国の爵位は英国と同じように上級貴族が何個も爵位を持てるようだ。
ちなみに英国と全く同じかは知らんよ? だって俺は日本で爵位とか習ってないもん。
カーメル辺境伯は自分の息子に伯爵位を授けるわけではなくジークに伯爵位を与えたのだ。
当然王家にも承認はしてもらっている。
そしてブライアント伯爵ジーク・ブライアントが誕生したのだ。
普通であれば○○伯爵ジーク・ブライアントとなるのだが、希望があれば○○を自分でつけてもいいらしい。まぁこれは上級貴族でもかなり貢献をしなければならないらしいが。
またカーメル辺境伯からアルメリアの統治権も貰った。
どうやらカーメル辺境伯はもう迷宮はこりごりとの事でジークに譲ったらしい。
後に聞いた話だが、どうやらカーメル辺境伯の1人息子は相当なダメ人間らしく、どうしても1人息子に爵位を譲りたく、手柄を立てさせるために今回のアルメリア迷宮に派遣する際の騎士団の隊長として向かわせたが、怖くて屋敷から出てこなかったらしい。
それを見て、愚息を諦めジークに伯爵位を譲ったという事だ。
ただ孫娘には期待をしているのでそこに僅かな希望を見出しているとの事。ちなみに現在9歳らしい。
これでブライアント伯爵家はバルクス王国で唯一、領内に2つの迷宮をもつ貴族となった。
アルメリア迷宮とイルグシア迷宮をジークが管理することによって冒険者たちの質もすぐに上がるだろう。
イルグシア迷宮で物足りなくなった蒼の牙、赤き翼の2パーティを筆頭にイルグシアの上位冒険者たちは順次アルメリアに移る事となった。
2つ目はアルメリア迷宮だ。
アルメリア迷宮は昔の生態に戻ったらしい。
俺たち4人はあの後3層の途中までしか潜っていないが、もう蟻の魔物は居なかった。
2層の至る所に蟻の卵があったが、それは全て俺たちが処理した。
またアーリンが消滅した後、2つの魔石がドロップした。
1つは他のクイーンアントと同じ大きさの黒く大きな魔石。
そしてもう1つが黒く光っている小さな魔石だ。
俺はその黒く光っている魔石を鑑定すると
【名前】人造魔石
【特殊】-
【価値】-
【詳細】ある特殊な方法で造られた魔石。
と出た。
この鑑定結果をジークに話すと、このことは絶対に他言無用と言われてしまった。
ジークも良く分かってないらしいが、これを言いふらして何か事が起きてもつまらないとの事だ。
3つ目はバーンズとエリーの件だ。
バーンズとカーメル辺境伯は今回のアルメリア迷宮の防衛戦の件で、バーンズがそれなりの活躍をしたら奴隷から解放するとカーメル辺境伯が約束していたのだ。
その約束をカーメル辺境伯がきちんと守り、死んでしまったバーンズと娘のエリーを奴隷から解放した。
俺はバーンズの最後の遺言をカーメル辺境伯とジークに伝え、エリーを保護することに決めた。
アイクもバーンズの最後の遺言を聞いていたので、俺の話の信憑性が認められてエリーは奴隷解放後、俺に預けられることになった。
エリーは最初俺にしか懐かなかった。
しかし徐々にクラリスとアイクにも懐くようになった。
クラリスに懐いたところで俺とクラリスと2人でエリーの呪いの解呪に専念することにした。
専念と言ってもただずっとハイヒールやヒールをかけているだけなんだが、ここで奇跡が起きた。
クラリスの神聖魔法がレベル5になった時にクラリスの称号に【聖女】がついた。
【聖女】回復魔法を使用時に状態異常も治す。神聖魔法の消費MP微軽減。
この効果によってエリーはライオンの姿から人の姿に戻った。
人となったエリーはショートヘアーの金髪で目の色は灰色っぽい青だった。
しっかり目も治っており、傷も残っていなかった。
見た目はとても活発な美少女だったが、獣人とは思えないほど静かだった。
獣人とは違う人間の耳、そして尻尾もついていない。
もしかしたら尻尾は服の中にしまっているのかもしれないが……
外見から獣人と判断するのはほぼ無理だろう。
人となったエリーはより一層俺にべったりしてきた。
いつも俺に触れていないと気が済まないらしく、迷宮に潜るときもトイレもお風呂も寝るときも一緒に居たいと言ってきた。
流石にそれはまずいし、何よりクラリスの機嫌を損ねてしまう可能性がある、そして何よりも俺自身エリーを心の底からは信用できない……信用できないというかエリーの【固有能力】が気になっていたのだ。
意を決して俺とクラリスで一緒にエリーに問い詰めた。
エリーは転生者なのかと。
するとエリーはあっさり転生者と認めた。
ただエリー自身はただの生まれ変わりだと思っていたらしく、前世の記憶もあまり残っていないらしい。
前世の記憶を聞いてみるとどうやら前世もこの世界に居たらしい。
これって輪廻転生ってことか?
まぁこれでエリーを信用することが出来た。
信用できたからと言って一緒に風呂やベッドには入れないが……
ある日またエリーが一緒にベッドで寝ようとしてきたので、俺が断ると
「だって、パパに……エリーを頼むって……マルスは任せてくださいって……」
と言ってくる。いつもは静かなのにこういう時はグイグイとくる。
いや確かに言ったけど頼むってそう言う事じゃないと思うんだけど……
それに俺にはクラリスがいるし……
ここで曖昧にしておいてもっと傷つけてしまうのであれば、今のうちに言わなければならない。今はクラリスも一緒にいるからいい機会だ。
「エリー、俺にはクラリスがいるんだ。俺はエリーも好きだが、クラリスが1番好きだ。将来俺とクラリスは結婚する」
しっかり俺がエリーを見て言うと、クラリスが嬉しそうに顔を赤らめている。
俺らしいヘンテコプロポーズだ。するとエリーが
「うん……知ってる……アイクさんに……聞いた……側室で」
えっ? 側室? 側室って何? あっそういえば少し前に聞いた気がするけど……
「側室って……なんだ?」
クラリスに聞いてみると貴族になると正室の他に側室を迎えることが出来るらしい。爵位によって側室を迎えられる人数が変わるとの事だ。
男爵は正妻1人、側室1人。子爵は正妻1人、側室2人。上級貴族の伯爵位以上は無制限との事だ。
そのほかにも妾というのもいるらしい。これは体の関係だけで正式には妻ではないらしい。
ただ妾の子供は認知できるらしい……しかしクラリスはなんでこんな事に詳しいんだ?
「側室か……まぁ考えておくよ……」
そして最後に今日はアイクがリスター帝国学校のテストを受けるためにアルメリアから出発する日だ。
リスター帝国学校はバルクスの学校と違って5年制だ。
もしも受かったら5年間リスター連合国で寮生活をすることとなる。
アイクは赤き翼と一緒にリスター連合国へ向かう。
「アイク。頑張って来いよ。まぁお前なら絶対に受かるから心配はしていないが」
ジークがアイクにそう言うと。俺も
「アイク兄。どうかお体には気を付けてください。僕たちも3年後に向かいますので」
「お義兄様、羽目を外し過ぎないようにお願いしますね」
「……さよなら」
クラリスとエリーもそれぞれ一言。エリーは相変わらずだった。
最後にマリアがリーナと一緒にアイクの所へ行くとアイクを抱きしめながら
「何かあったらすぐに帰ってきていいのよ」
と涙ながらに言った。リーナもぴょんぴょんアイクの周りを飛び跳ねてなんか言っている。
「それではみんな僕は行ってきます。必ず試験に受かって立派な成績を修めて参りますので期待していてください」
アイクはそう言うと最後に俺の所にやってきて
「みんなを頼むな。あとクラリスをあまり泣かせるなよ」
俺とアイクはグータッチをするとアイクは赤き翼を従えてリスター連合国へ向かった。
俺たちはアイクに向かって檄を飛ばしていると最後にアイクが振り向いて手を挙げて応えた。
アイクの顔はぐしゃぐしゃになっていた。
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