第59話 アント掃討作戦2
「お待たせしました」
俺とクラリスがジーク達のもとに行くとすでに戦闘準備が整っていた。
「どうだった?」
ジークが聞いてきたので
「バーンズ様は迷宮には来てくれませんが、市街戦には積極的に参加してくれるとの事です」
「そうか。撤退判断は早めにするとしよう。早速アント掃討作戦を実行しようと思うがみんな準備はいいか?」
ジークが全員を見ると皆頷いた。
ちなみにここに居る全員とは俺、クラリス、アイク、ジーク、マリア、蒼の牙、赤き翼、黒い三狼星の計20人だ。
「ではアイクとマルスやってくれ」
そう言われたので俺とアイクは階段を少し降りて2層を見る。
すると2層の様子が少しおかしいことに気づいた。
誰かが蟻たちと戦闘している。
「マルス!誰か蟻と戦っていないか?」
「ええ!囲まれていますが!」
「助けに行くぞ!」
アイクがそう言うと俺が
「少し待ってください。戦っているのは人ではないと思います」
そう。天眼でよく見てみるとグリズリーベアが蟻たちと戦っていた。
「魔物同士で戦っていますが……どういう事でしょうか?」
「俺もあまり迷宮に詳しくはないからお父様に聞いてくる」
そう言ってアイクはジークの方へ向かった。するとジークがすぐにやってきて
「初めて見たな……迷宮の魔物同士で戦うという事は無いと思うのだが……」
グリズリーベアの方が強いが多勢に無勢にもほどがある。あっという間にグリズリーベアが蟻にやられていた。
「考えていても仕方ない。少しでも蟻たちにダメージがあるうちにやってしまおう」
アイクが魔力を高めてフレアの準備をし、アイクが叫ぶ。
「いくぞ! フレア!」
赤白い炎の塊が蟻たちに着弾した。
着弾したと同時に俺がファイアストームでさらにフレアの火を増幅させる。
煙は迷宮が吸ってくれているようだが、念のため1層に煙が行かないようにウィンドで2層の方へ押し込む。
ファイアストームが赤白い炎を周囲にまき散らしているのを確認すると俺たちはすぐに1層に戻った。
1層に来るためには必ず階段を使う必要があるからそこの階段でワニワニパニックのように上からひたすら叩く作戦だ。ワニワニパニックと違う点は出てくる場所が決まっているため、俺たちはそこにだけ気を付ければいいという事だ。
一方の蟻たちはというと、俺たちの攻撃が開始された途端にこちらに向かって突進してきた。
まだフレアやファイアストームの火が残っているので、蟻が火を纏いながら突撃してくる。
しかし火を纏った蟻たちは途中で絶命し、動き回ることによって火が拡散する。
2層の階段付近にいた蟻たちは全てもう灰になっていた。
どんどん突撃してくる蟻たちにトルネードを放ちダメージを与えていく。
やはり後ろから蟻が押し込んでくるためトルネードから蟻が押し出されてどんどん階段から蟻たちが溢れてきた。
アイクたち前衛チームは蟻たちをどんどん刺し殺していく。
クラリスも弓で蟻たちを倒す。これはかなりいい調子だ。
ジークもそう思ったのか
「よーし!思ったよりもいい感じだ!」
これはフラグというものではないだろうか?
するとトルネードにでかい獲物が引っ掛かった。
質量が倍以上あり、明らかにキラーアントよりも強そうだ。
「でかいのが来ます!気を付けて」
階段の下からキラーアントよりもでかい蟻が上がってきた。
トルネードのおかげでダメージは通っているが、まだまだ油断が出来ない。
【名前】-
【称号】-
【種族】マザーアント
【脅威】C
【状態】良好
【年齢】1歳
【レベル】12
【HP】22/54
【MP】2/2
【筋力】26
【敏捷】31
【魔力】1
【器用】5
【耐久】32
【運】1
グリズリーベアと同じくらいの強さだ。HP、敏捷、耐久値が高くて俺が苦手な相手だ。
「こいつはマザーアントという魔物です。あと少しで倒せると思います」
俺がそう言うと黒い三狼星の3人が止め刺しにかかった。
しかしHPは半分以下になっているが、ステータス値は黒い三狼星よりも少し高い。
止めを刺すときにマックが少し噛まれ、オルがお尻の針に突かれていた。
マックはすぐにヒールで治ったが、オルは毒状態となっていた。
「お尻の針に毒があるから気を付けて!」
俺がオルをキュアで解毒をすると戦線が緩んでおり、かなりの蟻が1層の部屋になだれ込んできていた。
俺は急いで階段から上ってきている蟻たちを足止めするが、倒しきることは出来ない。
するとアイクがフレアを階段の方に放ち、蟻たちのこれ以上の1層への侵入を絶ち、1層に残っている蟻たちを倒し始めた。
「ナイスです!アイク兄!」
俺がそう言うとクラリスも「お義兄様。流石です」と言ったが、どうやら余裕があるのは俺とクラリスだけで他の人たちはもう目の前の敵で手一杯らしい。
まぁ俺も余裕があるという訳ではないが、冷静に周囲を見渡すことが出来ることは確かだ。
クラリスも弓で敵を狙う時に戦況を見定める必要があるからだろう。
1層に上がってきて来てしまった蟻たちをなんとか倒し終わるとジークが
「デカいのがきたら、アイクに処理してもらう。前衛はひたすら小さいのを狙ってくれ! クラリスもデカいのが来たらアイクと一緒に攻撃の方を頼む!」
と全員に号令をかけた。
ジークやマリアをはじめ魔術師たちは継続戦闘能力があまりないので動けなくなった蟻の止めを刺す役目に徹している。序盤でMPを使ってしまうとMP欠乏症でお荷物になってしまうからだ。
まだ1層に上がってきてしまった蟻たちの処理が終わらぬうちに先ほどと同じと思われるマザーアントが俺のトルネードに引っ掛かったような感覚がする。それも2体もだ。
「先ほどのが2体来ます! ファイアストームを使いますので気を付けてください!」
先ほどのようなことにならないようにMPの消費が多くなってしまうが、トルネードではなくファイアストームに変更した。
アイクもすぐにフレアを階段の方に放ってくれて今度は蟻たちを1匹も1層に上げることなく事なきを得た。
その間に他のメンバーたちは1層に上がってきてしまった蟻たちを全滅させた。
これで最初の状態に戻りまたワニワニパニックのように蟻たちを倒し続ける。
少し余裕が出来たので俺はジークに
「2層は1層よりも広いですか?」
「3層までは1層と大きさがあまり変わらないらしいぞ」
と答えてくれた。蟻たちが2層にぎっちり入っていたとしたら、まだまだ先は長いな。
ただ悲観することばかりではなかった。
戦闘するうちに左手でトルネードを制御し、右手でミスリル銀の剣を持ち前衛に混ざることが出来るようになった。
トルネードをずっと使っているうちにトルネードも無詠唱で使えるようになっており、また威力も高まっていた。
自分を鑑定すると俺のレベルとステータスが上がっていた。
【名前】マルス・ブライアント
【称号】雷神/風王/ゴブリン虐殺者
【身分】人族・ブライアント子爵家次男
【状態】良好
【年齢】6歳
【レベル】16
【HP】47/47
【MP】2984/6174
【筋力】38
【敏捷】44
【魔力】55
【器用】42
【耐久】39
【運】30
【固有能力】天賦(LvMAX)
【固有能力】天眼(Lv8)
【固有能力】雷魔法(Lv2/S)
【特殊能力】剣術(Lv7/B)
【特殊能力】火魔法(Lv2/F)
【特殊能力】水魔法(Lv1/G)
【特殊能力】土魔法(Lv2/F)
【特殊能力】風魔法(Lv9/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv5/B)
【装備】ミスリル銀の剣
【装備】風の短剣
【装備】偽装の腕輪
レベル16に上がった!
15から16になるまでだいぶ短かった気がする。15からは今まで以上に上がりづらくなると思っていたのだが嬉しい誤算だ。
雷魔法は戦闘前からレベル2に上がっていた事を確認していたが、ついに風魔法のレベルが9に上がった。
だからトルネードの制御が楽になったのかもしれない。
もしかしたらこのまま押し切れるかもしれないと、この時はそう思ってしまった。
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