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3章 少年期 ~帰還編~

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第55話 カーメル辺境伯

「な、なんだ、これは……」


 階段を下りている時から違和感、いや異変に気付いた。


 階段の下の方から音がするのだ。


 キシキシ蠢く音。それが階段にまで聞こえる。



 ゆっくり近づいてみると……


 体長1m近くある巨大な蟻がぎっしり詰まっていた。


 蟻の上に蟻が重なる。何層にも重なっており、2層の部屋から通路の先まで大量の蟻が湧いていた。


 鑑定をしてみると


【名前】-

【称号】-

【種族】キラーアント

【脅威】D

【状態】良好

【年齢】0歳

【レベル】1

【HP】25/25

【MP】1/1

【筋力】15

【敏捷】18

【魔力】1

【器用】1

【耐久】20

【運】1


 壁や天井には蟻の卵らしきものがぎっしり詰まっており、グロい。


 ここにロケットランチャーを持ってきて爽快に吹っ飛ばしたい。


 EDF! EDF! と叫びたい気分だ。


 クラリスが「まるでゲームの世界ね」と言う。多分俺と全く同じ事を考えているのだろう。


「ど、どうしますか?」


 俺がアイクに問う。アイクも困っており


「これは下手に手を出すとやばいことになりそうなんだが……みんな何か案は無いか?」


「ここにいるのも危険だし、今日はいったん帰りませんか? 私たちの聞いていた情報と全く違うようだし」


 クラリスの意見に従ってみんなで魔石を持って出口を目指した。


 帰る途中に出てきた敵は俺が魔法で全て倒した。それを見ていたガイが


「マルス様のMPってどのくらいあるのでしょうか? 私たちにヒールをかけて、魔物を倒すたびにファイアで燃やして、今は風魔法で魔物を倒し、またファイアを使っておられて……」


「さすがにもうかなり使っちゃったよ。まぁ普通の魔法使いたちの何十倍かはあると思う」


「はぁ」とだけガイは言ってそれっきり黙ってしまった。


 俺たちが街に戻ったのは15時だった。


 まず冒険者ギルドに向かって、ギルドマスターのラルフに報告をすることにした。


 冒険者ギルドに着くなり魔石を置き、ガイたちに魔石の換金を頼んだ。


 冒険者ギルドにいた冒険者たちは魔石の量にも驚いていたが、それ以上に黒い三狼星が誰かの下に仕えていることに驚いていた。


 朝も同じように一緒に行動していたのだが、朝は他の冒険者たちもクエストの受注なので忙しく周りに気を使っていられる余裕はなかったようだ。


 ギルドの受付にルシアがいたので、ルシアに声をかけた。ルシアというのはギルドマスターのラルフの娘だ。


「大至急ラルフさんに報告したいことがあるのですが、取り次いでもらえますか?」


「どうしたのですか? 用件をまず仰ってください」


「アルメリア迷宮が迷宮飽和(ラビリンス)を起こす可能性があります。至急取次ぎを」


 その言葉を聞いたルシアは俺たちを2階のギルドマスターの部屋に連れていってくれた。


 ルシアがラルフの部屋の前まで来るとノックをし


「イルグシアのジーク卿のご子息から報告があるとの事です」


 ルシアの言葉に中から「入れ」と声がした。


 俺たちは部屋に入ると部屋には先客がいた。


 小奇麗にしている初老くらいの爺さんだ。どこかで見たことがあるような……


 ギルドマスターのラルフがいち早くその人物を紹介してくれた。


「お前たちこちらにおわすお方は、カーメル辺境伯エビン・サオルム様だ」


 ラルフがそう言うと爺さんがとてもゆっくり立ち上がって


「初めまして、エビン・サオルムだ」


 穏やかで優しい表情でカーメル辺境伯が自己紹介をしてくれたので、俺たちもそれぞれ自己紹介をした。全員の自己紹介が終わるとラルフが用件を聞いてきた。


「それで、お前たちはどうしたんだ?至急の報告があると聞いていたが?」


「はい。本日僕たちはアルメリア迷宮の2層へ向かおうと思ったのですが、2層の様子が異常でしたので報告に参りました」


「2層だと? もうそんなところまで……まぁお前たちなら当然か……続けてくれ」


「はい。2層にはキラーアントという蟻の魔物がたくさんおりまして。奥が見えないくらいでした。もし僕たちが攻撃をして奥にいるキラーアントが大量に僕たちを襲ってきたら対処が出来ないと思い報告に参った次第です」


「お前達でも無理か?」


「やってみなければ分かりませんが、やった結果無理でしたというのは……もっと万全の状態で挑んで無理だった場合は諦めも付くでしょうが、何の準備もなく僕たちだけで挑んでその結果、街を滅ぼすという事はしたくなかったので」


「うむ。1回私も見てみたいがお前たち、これから私を迷宮の2Fまで案内できるか?」


 ラルフがそう言うとカーメル辺境伯も


「私も同行したい。何しろ私が治めているところだからな。申し訳ないが私の護衛も頼めるか?」


「……はい。大丈夫かと思います。獣人の奴隷と一緒に潜っておりますので人数的に問題ないかと……」


 それを聞いたカーメル辺境伯が


「獣人の奴隷だと? どこで買った?」


「このアルメリアのヘリクさんの所です」


「獣人たちは素直に従ったのか?」


「いいえ、バーンズ様とこちらにおります弟のマルスが少し手合わせをしまして……少しは認めていただいたようで、私たちであれば仕えても良いとの事でしたので……もちろんバーンズ様は()()まだ仕える気はないとの事でしたが」


「バーンズと会話をしたのか?」


「はい。弟だけですが。他の獣人たちもバーンズ様が人間と話すのはとても珍しいと驚いておりました」


「……そうか……お前たちには獣人たちが従うのか……」


「今魔石の換金をしておりますが、すぐに発たれますか?」


「あぁ! 早いうちがいいな。辺境伯もよろしいでしょうか?」


 ラルフがそう言うとカーメル辺境伯も頷いた。


 俺たちは1Fに降りていくとまだ魔石を換金している黒い三狼星たちと目が合った。


 黒い三狼星たちは俺たちに対してしっかりお辞儀するとそれを見ていたカーメル辺境伯が


「本当に認められているのか……信じられないな……」と呟いていた。


「ガイ、もう換金は終わりそうか?」


 アイクがそう聞くとガイが


「まだまだかかりそうです。どうか致しましたか?」


「ああ。今からまた迷宮に潜ることになった。お前たちにはこのお2方の護衛をしてもらいたい」


 アイクがガイにそう伝えるとラルフが


「俺はここのギルドマスターだ。もう腕はさび付いているがまだ少しは戦える。魔石の換金はこちらでしっかりやっておくから安心してくれていい。お前らは最優先でこちらのカーメル辺境伯の護衛を頼む」


 ガイがアイクの方を向いて指示を待つと


「ガイ、そういう事だ。よろしく頼む。帰ったら今日は沢山肉料理を食べよう」


「は! 承知いたしました」


 アイクの言葉にガイ、マック、オルの黒い三狼星が頭を下げる。


 奴隷としてのしっかりとした立ち居振る舞いにカーメル辺境伯とラルフは驚いていた。


 俺たちはすぐに迷宮に向かって2層への階段を目指す。


「これほどとは……全員C級以上か……」


 カーメル辺境伯が今度は俺らに驚いた。ラルフも目を見張っている。


 今回、俺は魔法を使わずにミスリル銀の剣だけで魔物達を屠っている。


 それには黒い三狼星が驚いていた。


 まぁ魔術師が剣を使うとは思わないよな。



 1層の最後の部屋にたどり着いた。


 居たのはグリズリーべアではなく、ロックリザードたちだった。


 いつものように俺とアイクとクラリスの3人で倒しきる。


 傍目から見ると、槍士、剣士、剣士の前衛3人がただただ突撃する頭がいかれた脳筋パーティと思うだろう。


 少なくともカーメル辺境伯はそう思っているはずだ。ここまで全く魔法を使っていないからな。



 結局黒い三狼星は一匹も倒すことなく2層への階段まで辿り着いた。


 階下をカーメル辺境伯とラルフが確認すると2人とも目を見開いていた。


「なんだ……このおぞましい光景は……少なくともジーク達がいた時はキラーアントなどという魔物はここにはいなかったはずだが……もしかしたらもっと深いところから2層に来たのか……?」


 ラルフがそう呟いているとカーメル辺境伯が


「どちらにせよ放っておける状況ではないのは確かだ……ラルフよ、どうすれば良い?」


「辺境伯、いったん戻りましょうか? ここで話しているのは危険すぎます」


 俺たちはまた迷宮の入り口まで戻るとギルドマスターの部屋で話し合った。


 黒い三狼星の3人は魔石の換金のために1階で待機してもらった。


「君たち何か案はあるか?」


 カーメル辺境伯が俺たちに聞いてきた。アイクが俺に話すように促してきたので俺が答える。


「まず魔物がどのくらいいるのかが分からないです。もしもキラーアントが1000匹程度であれば対処が出来るかもしれませんが、恐らくキラーアントの上位種が何体もいると思います。そうなると僕たちだけでは火力不足となります」


「それはキラーアント1000匹だけの場合君たち3人だけでなんとかなるという事か?」


「平原で一斉に1000匹を相手にするのであれば無理かもしれませんが、迷宮の中で、それも階段で戦うとなればやりようはあると思います」


「もしも君が指揮を執るとしたらどうする?」


「僕であれば……まずイルグシアから茶色の盾、蒼の牙、赤き翼のCランク3パーティを呼びます。そして奴隷の獣人たちをどうにか説得して全員で1層の最後の部屋で待機します。ここで重要なのが()()()バーンズ様の協力が必要です。もしも3層以降の敵が一緒になって出てきてしまった場合僕たちだけでは脅威度Bの魔物の群れを対処できませんから」


「そうか……やはりそこまでの事か……よしやるだけやってみよう! バーンズが何を要求してくるかは分かっているが……まぁ無理だろうな……しかしジーク卿もいい子供たちを授かったものだな」


 俺は発言が終わったので一歩下がるとカーメル辺境伯が


「君たちも参加してくれるか? 君たちが参加してくれないとこの街はいずれ迷宮飽和(ラビリンス)が起こり必ず滅びてしまう。どうかよろしく頼む」


 カーメル辺境伯はそう言うと俺たちに頭を下げてきた。


 俺が思う貴族のイメージとは全く違う。ビートル伯爵もそうだったがこの世界の()()()()()いい人達ばかりなのだろうか?


 そういえば昔アルメリアに住んでいた時、カーメル辺境伯がまだ伯爵位だったころ、この人はジークとマリアにアルメリア迷宮の魔物の間引きを頼みに頭を下げに来たと言っていたな。


「カーメル辺境伯。どうか頭を上げてください。もちろん一緒に戦わせてください。ここは僕たちが生まれた場所でもあります。父や母も必ずや協力してくれることでしょう」


「ありがとう。やはりジーク卿にアルメリアの事を頼んでおいて正解だった……」


 カーメル辺境伯が少し涙ぐみ、声を少しだけ震わせながら言った。


 そして明日再びジーク達を呼んで会議することになった。


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― 新着の感想 ―
[一言] きっとオバカでは上級貴族をやってられないんでしょうね
[一言] 蟻が山盛り、、ジェノサイドガンが欲しくなりますねぇ
[気になる点] >お前たちこちらにおわすお方は、カーメル辺境伯エビン・サオルム様だ 水戸のご隠居かな?印籠でも出すのだろうか。 いきなり時代劇っぽいセリフで違和感が激しい。
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