第493話 積まれる魔石
――――翌日
「グレーターデーモンを召喚している奴がいるかもしれないだと!?」
起きてから皆に俺とクラリスの考察を共有すると、スキャルが一際大きなリアクションをとる。
「確かにそう考えれば倒した途端にグレーターデーモンが入ってくるというのは納得できるけど、グレーターデーモンって脅威度Aよ!? そんなことができるの!?」
どうやらカレンも俺とクラリスの仮説には疑問符がつくようだ。
「あくまでも可能性の話だ。もしかしたらもっと強い奴がいるかもしれないと頭には入れておいてくれ! じゃあ行こう!」
早速グレーターデーモンたちを狩りに7層へ向かうと、昨日のようにまた階下を覗いているデーモンたち。
こいつらだけはホーリーで倒し7層に上がると、またもグレーターデーモンが部屋の隅でデーモンを召喚しているところだった。
「打ち合わせ通りやるぞ!」
グレーターデーモンのヘイトを買うのは俺の役割。
まぁ基本的にグレーターデーモンはデーモンを召喚しているだけなのだが、グレーターデーモンの攻撃が他の者にいったらヤバいからな。
続いてエリー、ミーシャ、アリスの3人がそれぞれ1体ずつデーモンを相手する。
当然危なくなったら俺がメインで援護するが、援護するのは俺だけではない。
クラリスにも魔法の弓矢で4体目のデーモンを倒しながら3人を援護してもらう。
そしてクラリスが援護するのは3人だけではない。
残りの1体を相手にする、カレン、姫、ハチマル、スキャルの援護もだ。
この1体だけはレッサーデーモンまで召喚させる。
理由は姫とハチマルにはデーモンはまだ早すぎるからな。
レッサーデーモン5体も正直きついかもしれないが、幸いなことにレッサーデーモンはじめ、デーモンたちの得意な魔法は火魔法だ。火喰い賢狼のハチマルに火魔法は効かない。
それにレッサーデーモンくらいの火魔法であれば姫の芭蕉扇でも弾ける。
それでもきつそうであれば、デーモンの召喚をカレンとスキャルで止めてもらえばいい話。
いざというときのクラリスの援護もあるしね。
しかし、この陣形で戦うと大きな問題点が1つ。
それは俺とクラリスとの距離が遠いこと……つまり俺がクラリスに抱きつけない……というのは半分冗談でラブラブヒールがすぐに唱えられないということだ。
そのリスクを承知でこのように布陣したのには理由がある。
俺たちはグレーターデーモンを召喚する奴がいるのではないか? という考察のもとで動いている。
当然グレーターデーモンより強いだろうし、いつ接敵するか分からない。
だから余力を残すために回復をなるべくアリスにしてもらうことにしたのだ。
なぜアリスかというと、アリスには聖銀のレイピアがあるからな。
聖銀のレイピアは相手にダメージを与えると自身のMPが回復する効果がある。
つまりデーモンを倒し続けている限りMPが枯渇しないのだ。これを利用しない手はない。
カレンかグレーターデーモンのMPが枯渇したらグレーターデーモンを倒し、次の戦闘が始まる前にしっかりとカレンのMPと俺の心を満たして次戦に備える。
それを繰り返すこと数時間――――
「まさかデーモンたちの魔石をこんなに拝める日がくるとはな!」
グレーターデーモンを倒し、次のグレーターデーモンが来る間にスキャルが部屋の隅にまとめられた魔石を見ながらつぶやく。
「もっと増やしますからね! はい、次はスキャルさんの番ですよ!」
女性陣の治療を終え、スキャルにヒールを唱えるアリス。
「しかし、いつまでやるんだこれ」
「アリスのおかげで僕のMPがなかなか減りませんからね。あと5、6時間はやろうかなと思ってます」
「ま、まじか……強くなるわけだ……」
スキャルが絶句する中、皆の治療を終えたアリスが俺の胸に飛び込んでくる。
次のグレーターデーモンが現れるまでこうやって抱きしめることがアリスのご褒美となるらしい。
当然俺のご褒美ともなる。
「……来た……」
エリーの言葉と共に戦闘配置につく女性陣。
これを計10時間以上繰り返し、安全地帯に戻った。
「先輩! どうです!? 私強くなれましたか!?」
安全地帯で風呂に入ってから食事を済ませると、アリスがくるりと回ってアピールしてくる。
「ああ、今回アリスはかなり頑張っているからな! Bランクパーティのリーダーを務められるくらいにはなっているんじゃないか!?」
目を細めてアリスを鑑定する。
【名前】アリス・キャロル
【称号】細剣王
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】11歳
【レベル】43(+5)
【HP】87/87
【MP】180/275
【筋力】63(+9)
【敏捷】74(+8)
【魔力】65(+7)
【器用】64(+7)
【耐久】61(+8)
【運】20
【特殊能力】細剣術(Lv8/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv5/C)(4→5)
【特殊能力】水魔法(Lv1/G)
【装備】聖銀のレイピア
【装備】戦姫の法衣
【装備】偽装の腕輪
【装備】守護の指輪
幻獣の森でもかなりレベルが上がったがフォグロス迷宮に入ってからの成長も著しい。
ステータスを教えてやると、
「いつか皆さんに追い付いて見せます!」
と、気合を入れるアリス。
「アリスばっかりずるい! 私も鑑定して!」
こうねだるのはミーシャ。
ミーシャをこうやってちゃんと鑑定するのはいつ以来だろうか? ミーシャだけではない。他のメンバーも見てないか。
「ああ、もちろん。見させてもらうよ」
【名前】ミーシャ・フェブラント
【称号】-
【身分】妖精族・フェブラント女爵長女
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】50(+5)
【HP】90/90
【MP】104/411
【筋力】75(+7)
【敏捷】98(+11)
【魔力】81(+8)
【器用】86(+8)
【耐久】52(+5)
【運】5
【特殊能力】槍術(Lv8/B)
【特殊能力】水魔法(Lv7/C)
【特殊能力】風魔法(Lv6/D)
【装備】風精霊の槍
【装備】幻影のローブ
【装備】幻影の小盾
【装備】大精霊の靴
【装備】偽装の腕輪
【装備】守護の指輪
どこのパーティに出しても恥ずかしくないこのステータス。
当然出すつもりはないが、敏捷値がもうそろそろ100を超えることを知ったミーシャはさらに努力を誓った。
自身のステータスを把握しているであろうカレンの鑑定もしてみる。
【名前】カレン・リオネル
【称号】鞭王
【身分】人族・フレスバルド公爵家次女
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】48(+4)
【HP】69/69
【MP】604/855
【筋力】50(+6)
【敏捷】47(+5)
【魔力】105(+9)
【器用】62(+8)
【耐久】42(+4)
【運】1
【特殊能力】魔眼(LvMAX)
【特殊能力】鞭術(Lv6/B)
【特殊能力】鎖術(Lv1/G)
【特殊能力】火魔法(Lv9/B)(8→9)
【装備】火精霊の杖
【装備】レッドビュート
【装備】火精霊の法衣
【装備】火の腕輪
【装備】偽装の腕輪
【装備】守備の指輪
【装備】獄炎のネックレス
【黎明】の火力担当はついに魔力が100を超え、火魔法のレベルも9に。
相手もカレンを先に倒さなければならないというのは分かっていると思うが、先に消火したミーシャ、アリスを切り崩すのは困難。
それに前衛は2人だけではない。
俺の膝枕で寝ている【黎明】最強の前衛がいるからな。
【名前】エリー・レオ
【称号】-
【身分】獣人族(獅子族)・レオ準女爵家当主
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】52(+5)
【HP】174/174
【MP】130/130
【筋力】108(+11)
【敏捷】138(+15)
【魔力】30(+3)
【器用】40(+5)
【耐久】89(+10)
【運】10
【固有能力】音魔法(Lv2/C)
【特殊能力】体術(Lv8/B)
【特殊能力】短剣術(Lv8/C)
【特殊能力】風魔法(Lv3/G)
【装備】カルンウェナン
【装備】ミスリル銀の短剣
【装備】風の短剣
【装備】戦乙女軽鎧
【装備】風のマント
【装備】風のブーツ
【装備】雷のアミュレット
【装備】偽装の腕輪
デーモンすら触れさせない疾さのエリー。
前衛としての能力だけであればスキャルを凌駕する。
姫も鑑定しようと思ったのだが、俺たちの戦い方にまだ慣れてない姫は、ハチマルを連れてすでにベッドの中。
だから最後にクラリスを鑑定してから寝ようとしたら、さすがに皆も疲れたのかベッドに入ることに。
皆が可愛い寝息を立てる中、まだ起きているクラリスに問う。
「クラリス、視ていいか?」
突然話しかけられたことにビックリしたのか戸惑うクラリスだったが、少し考えた後、静かに頷く。
「ありがとう。じゃあ視るよ」
心なしか緊張しているクラリスに対して鑑定を行う。
【名前】クラリス・ランパード
【称号】弓王・聖女
【身分】人族・ランパード子爵家長女
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】59(+6)
【HP】140/140
【MP】985/2172
【筋力】94(+12)
【敏捷】100(+15)
【魔力】129(+20)
【器用】122(+21)
【耐久】90(+11)
【運】20
【固有能力】結界魔法(Lv4/A)
【特殊能力】剣術(Lv7/C)
【特殊能力】弓術(Lv9/B)(8→9)
【特殊能力】水魔法(Lv8/B)
【特殊能力】風魔法(Lv4/F)
【特殊能力】神聖魔法(Lv10/A)
【装備】ディフェンダー
【装備】魔法の弓
【装備】聖女の法衣
【装備】神秘の足輪
【装備】偽装の腕輪
【装備】氷雪のネックレス
【装備】天使のイヤリング
実は【黎明】の中で鑑定するのが一番久しぶりだったクラリス。
グランザム、幻獣の森、そしてフォグロス迷宮と強敵ばかり倒してきたが、レベルが上がるのがだいぶ緩やかになってきた。
しかし、そのステータスは間違いなくA級冒険者レベル。
強くなったなぁと見つめていると、
「あ、あれ? もしかして見るって鑑定のこと……?」
心なしか残念そうな口調のクラリス。
「え? そうだけど……?」
「もう! ちゃんと鑑定するって言ってよね! てっきり私は……」
そう言うと同時に布団に潜ってしまった。
あれ? 俺なんか変なこと言ったかな?
そんなことを考えながらMPを枯渇させて意識を手放した。
 










