第471話 ビーチにて
2032年9月20日9時
「うっわ! エグいなぁ……やっぱクラリスって男の夢をすべて兼ね揃えているよなぁ。エリーも捨てがたいし、カレン様の成長も楽しみ。タイプの違うミーシャに姫、そしてフランとフレンクラスのスタイルを持つアリス……その娘たちを好き放題できるマルスも、素晴らしい体つき……そそるねぇ」
サンマリーナのビーチで、うつ伏せになる俺の隣で舌なめずりするゲイナード。
ゲイナードの視線が海辺でビーチバレーをするクラリスたちと俺の顔、そして尻を往復する。当然けつの穴にはこれでもかというくらい力を込めている。本当にいつ襲い掛かってくるのか怖くてたまらない。
そんなことより、どうしてゲイナードがここにいるかって?
なんとこいつ、俺たちがサンマリーナに行くと聞くや否や、カストロ公爵に休暇を貰って御者としてついてきたのだ。
今頃第2騎士団は女淫魔に誘惑され、首になっていることだろう。ゲイナードが戻るころにはもう第2騎士団はないかもしれない。こいつは自分の立場が危ないということを分かっているのだろうか?
と、そこにまたもクラリスたちに声をかける男が1人。後ろ姿しか分からないが、筋骨隆々の黒光りした男。娯楽がないとはいえ、近くを通る男たちは必ずクラリスたちに声をかけていくな。
「ほら、ゲイナードさん。出番ですよ」
涎を垂らすゲイナードに、ナンパ師を追い払ってもらう。
ゲイナードの魅せる筋肉が役立つのはこういう場所だけだからな。ナンパ避けにはちょうどいい。
が、今回のナンパ師、どうやら女性陣も気に入ったのか、話がはずんでいるように見える。
そこにゲイナードがナンパ師を追い払おうと、剣呑とした雰囲気が流れるが、その空気も大きな笑い声と共に一転してしまった。
何をしているんだ! 起き上がろうとすると、うつ伏せで寝ていた俺の両肩に柔らかいものが触れ、俺の両耳に女性の甘い声が響く。
「ねぇ色男? あんな尻軽女たちは放っておきなよ」
「ボクたちと遊ばない?」
え? この声って……? 振り向くとそこにはかなり攻めた水着姿のヒルダとマチルダが。ダイナマイトボディを豪語するミーシャの布面積よりも少ないぞ!?
「ヒルダさん! マチルダさん! ってことはあの黒光りは……?」
「久しぶりね。マルス。そう、あれはリュートよ」
ヒルダが囁くと、俺の右半身に体を預ける。左半身にもマチルダの体が重なる。
なんで女性の体ってこんなにも柔らかいんだろうか? と思っているところにクラリスが駆け寄ってくる。
「ヒルダさん! マチルダさん! どいてください!」
クラリスは俺の目の前でしゃがんで俺の腕を引っ張り、2人に埋もれた俺を救出しようとする。
「マルスもにやけてないで2人を払いのけて!」
俺の顔がにやけているのは、ヒルダとマチルダに埋もれているからではない。
目の前に広がる、白い生地にピンク色の小さい花の刺繍が入ったビキニのショーツがあるからだ。ピンク色の花の先に広がる花園はきっと……うっ、心臓が痛くなってきた。
クラリスが一生懸命俺を救出しようとしている中、クラリスを猛追してくる1人の人物が。
その人物から放たれる殺気は鬼のように具現化し、俺の背中に乗るマチルダとヒルダに放たれた。
「じ、冗談だよ……エリー」
「お、落ち着こう。きっとボクたちは話せばわかるよ」
エリーの逆鱗に触れた2人は飛び上がり、直立する。
「……許さない……コロス……」
カストロ公爵の件でまだ気が立っているのか、本当に殺しかねない勢いだ。
「エリー、今回だけは見逃してあげて。ヒルダさん、マチルダさん。これが最後のチャンスですからね!」
頬を膨らませるクラリスに、平身低頭のヒルダとマチルダ。
一方、クラリスに許せと言われたエリーは、俺の背中に重なるように横になり、マーキングしなおすかのように首筋にキスマークをつける。
俺も上半身裸でエリーもビキニ。そして目の前には絶景……もう起き上がることは不可能だ。
「相変わらずとんでんもねぇハーレムだな! 1人増えてやがるし、聞けば魔族で容姿端麗! うらやましい限りだぜ!」
リュートが背中を丸めながら、のそのそと歩いてくる。ゲイナードもその後ろを前かがみで続く……ってお前? リュートの尻を見てないか? ターゲットが俺からリュートに移ってくれたのであればそれはそれでいいのだが……。
2人の後をカレン、ミーシャ、アリス、姫と続く。
「こんな体勢で失礼します。お久しぶりです! どうしてここに?」
うつ伏せで挨拶をする俺にニヤリと笑うリュート。まぁキカン棒化しているのはお互い様だしな。
「ああ。バルクス王国に行っていたんだけどよぉ。A級冒険者昇格試験の入れ替え戦に指名されるだろうとのことで、ギルドから招集されてな。まぁ予想はしていたんだが、舐められているようで気分が悪りぃ……が、クラリスたちの水着姿を見られたからな。今は天にも昇る気分だぜ!」
背中を丸めていたリュートが急に胸を張ると、滾ったパトスも天を向く。よかったな、相棒。圧勝だ。
リュートの言う入れ替え戦とは、B級冒険者がA級冒険者に挑戦する試合のこと。たしかB級冒険者はA級80位まで指名できるんだったよな……ってことは93位の俺も指名候補か?
「あのー……僕はまだそういうの聞かされていないんですが、もしかしたら指名を受ける可能性はありますか?」
「それはねぇな。噂だけだがあのゲンブを圧倒したという話が広がっているからな。わざわざそんな相手を指名する酔狂な奴は、この世にいねぇはずだ。師匠もそう言ってたぜ?」
そうか。ということは、俺は来年もA級冒険者か。
これだけは絶対に死守しなければな。じゃないと神聖魔法使いのアリスを他のAランクパーティが奪われるかもしれない。
「師匠というのはミックさんですか? 一緒に行動していたはずでは?」
俺がリュートに質問した時だった。目の前にあったピンクの花が視界から消えたのは。
「「「ミックさん!」」」
クラリス、ミーシャ、アリスが声を揃える。俺の上に被さっていたエリーもクラリスと同時に立ち上がる。
うつ伏せになりながら後ろを見ると、そこにはミックとここにいるはずのない、意外な人物がこちらに向かって歩いていた。
なんか書いちゃいましたw
最後のステータス章となります。










