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21章 青年期 ~リスター帝国学校 3年生 幻獣編~

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第466話 浄化

「マルス! 桶を作って!」


 そう言いながら横たわる一角獣(ユニコーン)の下へ駆けるクラリス。


 一角獣(ユニコーン)のすぐ近くにクラリスが腰を下ろし、スカートの端を少し持ち上げ、靡かせる。


 すると、クラリスの膝の上に頭を乗せる一角獣(ユニコーン)。すぐに目を閉じようとするが、そこに土魔法で作った桶を持っていくと、クラリスがその桶に聖水を注ぐ。


 いつもの聖水とは違い、どこか輝いて見えるのは、きっと聖水に神聖魔法を仕込んだ特別製なのだろう。


 一角獣(ユニコーン)は目を見開き、まるで何日も飲まず食わずだったかのように、美味しそうにスペシャルドリンクを飲む。


 ぐぬぬ……俺もそれは飲んだことがないのに……まぁそんなことを言っても仕方ない。


 一角獣(ユニコーン)はクラリスに懐いているようだし、襲うこともないだろう。


 今のうちに俺も消火活動をと思い、森に目を向けると、先ほどまで燃え広がっていた炎は鎮火されており、ところどころ煙が出ている程度だった。


 それでも森の中の様子や、女性陣のことが気になったので森の中に入り、サーチで皆の位置を探る。


 すると唱えた瞬間、こちらに近づいてくる一団が。


「「「マルス!!!」」」


 まず姿を見せたのはエリー。真っ先に俺の胸に飛び込んでくる。


「マルス! マルス! マルス!」


 何度も俺の名を呼びながら首筋に吸い付いてくる。


 するとエリーの後をミーシャ、アリス、カレン、姫の順で続く。


「良かったよ! やっぱりマルスに雷は効かないんだね!」

「マルス先輩! あとでお話を聞かせてくださいね!」

「火はしっかり消火したから安心していいわよ!」


 笑顔で次々に胸の中に飛び込んでくる中、姫だけは様子が違った。


「……お主……本当に死んだかと……」


 俺の顔を見て泣き出す姫。姫なりに心配してくれたんだな。


「悪かった。姫には伝えていなかったが、俺は風魔法使いというよりも、雷魔法使いなんだ。当然雷魔法の才能の方が高い。そして俺にはその雷が効かない」


「――――っ!? あれだけの風魔法使いなのに!? それに才能……じゃと?」


「ああ。あとで姫にも俺の力の一端を見せるから。心配させてすまなかった。それにありがとう」


 まだ泣き止まない姫の肩に手を置き、軽く抱き寄せると、姫は遠慮がちに俺のわき腹辺りに手を回す。


 姫の白い髪の毛からは、日本時代を彷彿させるお香のような落ち着きを感じる香りが漂う。


「そういえばカストロ公爵とフランさん、フレンさんはどうした? ハチマルは?」


 少しの間、皆との再会を喜んだが、ずっとこうはしていられない。確認するべきこと、やるべきことはまだある。


「レプリカにいる者たちを避難させているわ。私たちもついていこうと思ったのだけれども、火の手が上がったのを見て、途中で引き返してきたの。ハチマルには3人の警護を頼んでいるわ」


 俺の質問に答えてくれたのはカレンだった。ということは、今も避難を続けているのか。であれば、早めに伝えないとな。一角獣(ユニコーン)のことも伝えないとならないし。


「エリー、アーリマンはもういないよな? それに女淫魔(サキュバス)の匂いも」


 いまだに俺の首筋にキスマークを並べているエリーに問う。サーチでも引っ掛からなかったし、エリーもハンカチを口元にあてていないから、予想はできたがそれでも念のために確認する。


「……うん……多分……森にいない……」


「ありがとう。皆に頼みがあるのだが、誰かカストロ公爵の所に行って、再度ここに来るように伝えてくれないか? 二角獣(バイコーン)一角獣(ユニコーン)に戻ったと」


 一角獣(ユニコーン)に戻ったと告げると、皆の表情がさらに緩む。そして一番に姫が口を開く。


「オレンジ……カストロ公爵との交渉は妾に任せるのじゃ!」


 いや……交渉ではなく、伝えるだけなんだが……大丈夫か? と思っていたら意外な者もあとに続く。


「……私……ついてく……姫1人……心配……」


 まさかのエリー。だが、俺としてもエリーがついて行ってくれれば安心だ。


 カストロ公爵に伝えるという意味では不安だが、エリーが同行するとレプリカに戻る道中、もしも魔物が湧いた時にもすぐに対応できるからな。


「……なんか2人に任せるのは不安だから私も行くわ。ハチマルも連れてきたいし」


 俺と同じ不安を覚えたカレンも行ってくれるという。この3人であれば安心して任せることができるな。


「ありがとう。魔物が湧いてくるかもしれないから気をつけてくれよな」


 3人を見送ると、ミーシャとアリスの2人と一緒にクラリスの下に戻る。


「あー! 私も一角獣(ユニコーン)を膝枕したい!」

「私もやりたいです!」


 クラリスが一角獣(ユニコーン)に膝枕をしているところを見た2人が騒ぐ。


「ええ、いいわよ」


 クラリスが優しく一角獣(ユニコーン)の頭を抱きかかえるように持ち上げ、その間にミーシャがクラリスの座っていた所に座る。


 一角獣(ユニコーン)はよほど信頼しているのか、クラリスにされるがままだ。もしかしてテイムしてないか? それほどまでに従順な一角獣(ユニコーン)。この調子であれば角を少し削るくらい余裕そうだな。


「ミーシャが水を出して、アリスがその水に神聖魔法を唱えて」


 クラリスのアドバイスに従う2人。


 一角獣(ユニコーン)は2人の聖水をまたも美味しそうに飲み始める。こいつどれだけ飲むんだ?


 まぁ飲みたいだけ飲めばいい。俺たちはまだやらなければならないことがある。


「クラリス。ちょっと来てくれないか?」


 手を差し出すと、シルクのようななめらかな手が重なる。数メートル先の泉に行くだけだから手をつなぐ必要はないのだが、なんとなく触れたかったのだ。


「クラリス。カストロ公爵が来る前にホーリーを唱えてくれないか?」


 悪臭のする泉の前でお願いすると、俺の意図をすぐに理解するクラリス。


「ホーリー!」


 赤黒い泉の表面に広がる魔法陣は、複雑な幾何学模様が煌めき、神秘的な輝きを放つ。魔法陣から伸びる柱状の光は、天だけでなく、深淵も目指すと、その純潔な光に触れた血のように染まった水が瞬時に浄化される。


「す、すごい……」


 想像を遥かに上回る効果に思わず声が出てしまう。


「きっとマルスがくれた装備品のおかげね」


 謙遜するクラリス。確かに装備品の効果もあるかもしれないが、クラリスの神聖魔法の効力が高まっているのも間違いない。


 光の柱が消えると、浄化された水を光に触れていなかった赤黒い水が侵食するが、明らかに色は薄まり、異臭も和らぐ。


 まだMPに余裕はあるが、やり過ぎると不測の事態に対応ができなくなるため、今日はここまでにしておく。クラリスのホーリーであれば、泉の浄化にもあまり時間はかからないだろう。


 ミーシャとアリスの下へ戻ると、一角獣(ユニコーン)の頭はアリスの上にあり、もう目を閉じていた。


 聖水を飲んだせいか、少し体にハリが出てきたように思える。まだまだやせ細っているが、会う前とは別馬? だ。


 それに何より賢者様を飲み込んだことにより、一角獣(ユニコーン)からいやらしさは感じない。


 正直ちょっと怖かったのだ。


 一角獣(ユニコーン)は賢者様を噛み砕いたものを飲み込んだだろう?


 賢者様には俺の煩悩がたんまりと込められている。俺だけではなくブラッドとコディの煩悩も。


 それが溢れ出すんじゃないかと思ったが、そうはならなかった。


 もし賢者様に込められた煩悩が一角獣(ユニコーン)を支配すると、また二角獣(バイコーン)……いや、それ以上の存在になる可能性もあったからな。


 エリーたちが戻ってくるまで、一角獣(ユニコーン)を囲みながら楽しく過ごした。



書籍版双葉社様より発売しております!

是非手に取ってください!

web版とかなり変わっているので、楽しめると思います!


挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 二本角から一本角に戻った際、一本は融合か消滅したのかな? ポロっと落ちたならそのまま手に入ったのかと思ったのにw
[一言] マルスのあまりの悔しがりようから、まさか本物!?のクラリスの聖水かと思ってしまった変態が通ります
[良い点] 煩悩が払われてユニコーンもちゃんとしましたか [気になる点] 聖水が聖水(意味深)に思えてしまった… 賢者様ください
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