第461話 迸る閃光
迸る閃光
【名前】-
【称号】-
【種族】キングアーリマン
【脅威】A
【状態】良好
【年齢】1歳
【レベル】3
【HP】412/412
【MP】408/587
【筋力】102
【敏捷】35
【魔力】100
【器用】108
【耐久】145
【運】1
【特殊能力】風魔法(Lv8/B)
【特殊能力】魔物召喚(Lv5/D)
【詳細】自分より魔力が低い者を様々な状態異常にする
大きな目玉の化物の翼は1枚20m以上もあった。しかもその翼にも直径1mくらいの目玉が何個もあり、無数の目が俺たちを見下す。真ん中のデカい目だけは一角獣を捉えていた。どうやらこいつのメインターゲットは一角獣みたいだ。
一方の一角獣はキングアーリマンと俺、それと俺の後方に視線を配っている。
そんな中、背後からクラリスの悲痛な叫び声が響く。
「フランさん! フレンさん!」
振り向くとそこには双子が、カストロ公爵の前で両手を広げていた。その整った顔の半分以上が石化しており、体の方も徐々に石に変化している。カストロ公爵の盾となっていたのだ。
まずい! これがキングアーリマンの状態異常か!? 【黎明】女性陣はほとんどが状態異常対策をしているが、キングアーリマンの魔力が高い。下手したらエリーやアリスは一部が石化してしまうかもしれない。姫に至っては状態異常耐性の装備を何も身に付けていない。
「クラリス! カストロ公爵と2人を後方に連れて行ってくれ! エリー! アリス! 姫! 3人も何かしらの状態異常に陥る可能性があるから前に出てくるな!」
女性陣がカストロ公爵と双子を担いで後方に下がると、
「マルス! 使うわ!」
クラリスが神聖魔法使用の宣言をする。さすがにこの状況でダメとは言えない。それに俺が首を横に振ってもクラリスは神聖魔法を使う。それは俺が一番知っている。
「分かった! 頼む!」
クラリスの両手が優しく光るのを、カストロ公爵が口をパクパクさせながら見つめていた。カストロ公爵にだけは知られたくなかったが仕方ない。
みるみるうちに双子の石化が解除され、皆が安堵の表情を浮かべる。
視線を一角獣とキングアーリマンに戻すと、キングアーリマンの無数の目からアーリマンがどんどん召喚されている。目から目玉の魔物が出てくる光景に思わずすっぱいものがこみ上げてきそうになるが、ハンカチを口元に当て落ち着かせる。
召喚されたアーリマンたちもまっすぐに一角獣を目指す。まるで俺たちがここにはいないかのようだ。
だからといって傍観するわけにはいかない。カレンから一角獣は戦闘しすぎると二角獣になってしまうと聞いているからな。
ヘイトが俺に向かってもいいように、女性陣から少し離れてからアーリマンたちにウィンドカッターを連射する。
本当はトルネードで一網打尽にしたかったのだが、アーリマンたちは泉の上空を飛んでいる。泉の水をまき散らしたくなかったので、ウィンドカッターで1体ずつ仕留めることを選択した。
脅威度A……以前、獄炎狼と戦い、大苦戦したが、あれは地形が悪かった。
対してキングアーリマンは空を飛んでいるのと状態異常攻撃が強いので、脅威度が高いのかもしれないが、俺相手にはアドバンテージにはならない。
今も両翼の目から嫌な視線を浴び続けているが、体調に変化はない。それどころか俺は、召喚されたアーリマンの人生を1秒満たず終わらせている。
そんな俺をキングアーリマンも無視できなくなり、大きな目玉がこちらを向く。その巨大な目からは禍々しい視線を感じた。きっと状態異常攻撃をしかけているのだろう。無数の目よりも状態異常付与の効果が強いのかもしれない。
それでも変わらず俺には何の変化もない。悪いな。魔力に限らずステータスは俺の方が全て上だ。
かといって楽勝というわけではない。俺のウィンドカッターに対して風魔法をぶつけ、威力を軽減してくるのでなかなかHPが削れない。キングアーリマンの耐久値が高いのが影響している。
だがそれも時間の問題。ねじ伏せてやる! いつしか俺は早く倒したいという一心から夢中になって左右の手刀を振り下ろしていた。
魔力を込めた手刀を振り下ろすと空気が割れる音と共に、風の刃がアーリマンを裂きながら、キングアーリマンを襲う。
このウィンドカッターをキングアーリマンは相殺しきることはできないようで、徐々にキングアーリマンのHPが削れていく。このまま削り続ければ数分後には倒せる!
と、思った時、甘い香りが鼻につく。その匂いに我慢できず、元をたどると銀髪の娘が俺を誘うようにウィンクしている。
ずっと抑え込まれていた劣情に支配されるのが自分でも分かる。もっと匂いを。
本能に身を任せて銀髪の娘を追いかけようとすると、最上級の香りが俺を包む。
「マルス!? 戻った!?」
いつの間にか目の前にはクラリスが。ってことはまた女淫魔に誘惑されていたのか。
「ああ、すまない」
俺の声を聞いたクラリスはすぐに女淫魔を氷槍で貫く。
「油断しないで!」
ごもっとも。慎重に立ち回らなければならなかった。
すぐに周囲の様子を確認すると、召喚されたアーリマンを倒していたのは、カレンとミーシャだった。カレンはファイアボールを浮かべ、ミーシャは氷槍を次々とアーリマン目掛けて放つ。
ファイアボールや氷槍を喰らったアーリマンたちは次々と赤黒い泉に落ちていく。燃えながら落下するアーリマンが、泉に着水すると、水が蒸発し、さらに悪臭をまき散らす。
この悪臭の中でも女淫魔の匂いに反応してしまうのだから、度し難い。
しかし俺よりも信じられない行動をとる者がいた。一角獣だ。
警戒心が強いはずの一角獣。しかしその視線は俺やアーリマンに向くことなく、俺の隣に人物に釘付けとなっていた。
まさか……こいつ? と思った時、1体のアーリマンがいつの間にか一角獣の頭上まで到達していた。そのアーリマンが一角獣に向け、風魔法を発現させる。
鑑定はしていないが、今の弱っているであろう一角獣にアーリマンの風魔法が直撃してしまってはヤバい。クラリスも俺と同時に気づいたらしく、「あっ!」と声を漏らし指をさすことしかできなかった。
それに反応する一角獣。しかしもう遅い。ウィンドカッターが一角獣を目掛けて放たれる。
もう間に合わない! せめて致命傷は避けてくれ! そう思った時、一角獣の螺旋に巻く角が青白く輝く光を纏ったかと思えば、次の瞬間、その光がウィンドカッターを貫きアーリマンを穿つ。
アーリマンに光が着弾した瞬間、轟音と共に空気が激しく揺れる。
ま、まさか……今のは? そう思ったのは俺だけではなかった。隣にいたクラリスが心臓の鼓動を確認するかのように、自身の胸に手を当て一言。
「か、雷……?」










