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21章 青年期 ~リスター帝国学校 3年生 幻獣編~

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第443話 レプリカへ

2032年9月2日7時


 朝食を摂り、観光のため早く宿を出た俺たち。さすがに登城するにはまだ早い。ハチマルには部屋で留守番をしてもらった。宿には白金貨よりも価値のあるお宝がたくさん眠っているからな。


 ウオールの街は朝から露店が並び、賑わいを見せていた。


「のう? マルスは本当にクラリスとエリーのことが好きなのかえ?」


 歩いていると突然姫が聞いてくる。


「どうしてそんなことを?」


「うむ……クラリスとエリーの2人にあれだけ密着して寝ていているにも拘わらず……」


 ああ……今日の俺たちの姿を見てそう思ったのか。


 確かに今日は凄かった。目が覚めると俺は横向きになっていた。


 正面にはエリー。エリーは俺のことをまるで子犬かのように優しく抱きしめていた。両頬には豊かな感触が。なんとか理性を働かせて幸せスポットから抜け出そうとするも、クラリスが後ろから俺のお腹に手を回して寝ていたのだ。


 身動きがとれない俺は、仕方なくもう一度目を瞑ったが、当然あの状態で眠れるわけがない。MPを枯渇させるのも考えたが、時間がかかる上に起きるのも遅くなるのでやめておいた。


 何度もいうが俺は起きようという意志はあったからな。解こうと思えば解けたかもしれないが、美女の睡眠を邪魔したくない。だから泣く泣く俺はあの場に留まったのだ。


「姫、あれがいつものことなのよ。ミーシャなんてマルスのお腹を跨いで覆いかぶさるのよ……私もたまにしちゃうけど」


 最後の一言は姫に聞こえなかったらしく、姫の矛先はミーシャだけに向かう。


「なっ!? 一歩間違えれば……破廉恥な!」


「破廉恥じゃないよ! そんなこと言ったら姫だって履いてないじゃん!」


「何を!? これは対策なのじゃ! そんな意味では……」


 今日も絶好調の2人。履いてない? 対策? 仲の良い2人にしか分からない何かなのだろう。


 2人を放っておいて視線を前に向けると、遠くから俺たちを目掛けて、時計の紋章の刻印が入った銀色の甲冑を装備した1人の男が歩いてくる。


「や、やぁ……」


 ばつが悪そうに声をかけてくるゲイナード。


「おはようございます」


 俺が返事をすると、隣にいたクラリスも微笑む。


「ゲイナード様。おはようございます。昨日は大丈夫でしたか? かなり酔われていたようでしたが? 今もまだ顔が赤いようで……」


 実はクラリス、ゲイナードが意識を失ったのは、飲み過ぎだと思っているのだ。男色家という情報も事前に教えられていたし、いつも潰れて意識を失うミーシャがいるから、そう錯覚してもおかしくはないのかもしれないが。


「あ……いえ……あの……はい……」


 クラリスに見つめられ、顔を真っ赤にし、しどろもどろになるゲイナード。それをまだ酔っていると勘違いしたクラリスがゲイナードに近づこうとするが、このままでは確実に意識を失うに決まっている。


「クラリス、悪いけどあの2人を止めてきてくれ」


 俺の言葉にクラリスは、ゲイナードに軽く会釈をしてから、まだ続くミーシャと姫の争いの仲裁に向かう。


「なにか用でしたか?」


 去り行くクラリスを一生懸命目で追うゲイナードに質問する。もうゲイナードはレプリカに入る資格がない気がするのは俺だけだろうか?


「あ、ああ……カストロ公爵がもう来てくれとのことだ。宿でゆっくりしているのかと思い、呼びに来たのだが……」


「分かりました。あまり早く伺っても悪いかなと思い、観光していたのですが……」


「そうか、では悪いがこのまま案内するからついて来てくれ」


 賢者様を連れてきていないのでどうしようか迷ったが、迎えに来るほど急いでいるようなのでゲイナードに従う。


 しばらく歩くと時計塔が見えてきた。この先にはレプリカに続く橋がある。


 見事な建造物に、皆が感嘆のため息を漏らす中、ゲイナードが足早に進むので、後を追う。


 時計塔は下を通過できるようにくりぬかれており、カストロ騎士団が不審者を侵入させまいと目を光らせている。


 ゲイナードが俺たちの身分を照会してくれ、セキュリティチェックなしで橋へと進めた。


 レプリカへ続く長い橋を渡っていると、最後尾を歩いていたミーシャが突然大きな声を上げる。


「ねぇ! 何あれ!? 槍!? 槍みたいなのがいっぱい刺さっているんだけど!」


 ミーシャが指さす方に視線を向けると、時計塔の反対側には、金属と思われる棒が、剣山のようにびっしりと埋め込まれていた。


 俺たちが足を止めそれを見ていると、ゲイナードが説明してくれる。


「ああ、あれは二角獣(バイコーン)対策らしいんだ。詳しくは分からないが、はるか昔この地に二角獣(バイコーン)が現れたときに、当時の冒険者たちの知恵を集めて作ったと聞いたことがある」


 へぇ……あれで対策かぁ……思い当たるのは1つくらいしかないけどなぁ。


「カストロ公爵が待っている。急ごう」


 踵を返しゲイナードに急かされ歩くこと5分、ようやくレプリカの前に着いた。


 リムルガルド城を模倣しているというだけあり、大きな門に門塔、側塔、そこから城壁が伸び城壁塔が連なっていた。


 またリムルガルド城のように禍々しいオーラなどは微塵も感じない。それどころかどこか神聖な気配が漂っているように思えるのは、ここが女の園だからだろうか。


「そういえばマルスはレプリカの中を見たいと言っていたが、メイドたちの居住塔も見るのか?」


 城門の前でゲイナードが足を止めて振り返る。


「居住塔なんてあるんですか? できれば拝見させていただきたいのですが……やはり男の僕に見せるのは気が引けますかね? そうであれば、女性陣だけでも見てきてもらいたいのですが……」


 居住空間を知らない男に見られるのは嫌な人も多いだろうからな。断られたら最悪見取り図かなにかを貰えればいい。


「いや、そうじゃない。もちろん抵抗がある者もいるだろうが、カストロ公爵が命じれば首を横には振ることはできない。ただあまり期待はしないでおいてくれ」


 期待をするなだって? 俺の頭の上に『?』マークが浮かんでいるのが見えたのだろう。


「女性だけで暮らすとなると、気が抜けることがあるということだ。人によっては幻滅するかもしれないからそのつもりで」


 部屋とかが汚いということか? メイドなら身の回りを綺麗にすることも仕事ではないのか?


 それに女性だけで暮らす【黎明】部屋なんかは、毎日掃除している俺の部屋よりも綺麗だぞ? まぁリビングとクラリスたちの部屋だけしか入ったことはないが。


 そんな俺にミーシャが声をかけてくる。


「今、【黎明】部屋は綺麗じゃんって思ったでしょ?」


 素直に頷くと、ため息交じりに答える。


「だってさ、少しでも散らかしたり、服を脱ぎっぱなしにすると、すぐにクラリスが怒るんだもん。ね! エリリン!?」


「……クラリス……鬼……悪魔……」


 エリーも同調するが、クラリスが無言の圧をかけると、すぐに今の発言を撤回する。


「……嘘……クラリス……かわいい……天使……怒らない……」


「あ! エリリンが裏切った!」


 きっとこの2人が問題児なのだろうが、さらに姫もとなるとクラリスの心労が窺える。


「じゃあ、行きましょうか?」


「あ、ああ……そうだな」


 呆気にとられているゲイナードに声をかけ、期待と不安に胸をふくらませながら、レプリカの中に足を踏み入れた。


『転生したら才能があった件 2』

9月29日発売です!

是非手に取ってください!


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲイナードの怪しい反応w これで二刀を持って『両刀遣い』になってくれたら家名に似合うかもw [気になる点] 宿ある白金貨よりも価値のあるお宝と言えば、賢者様も含まれてるのか?w ヒメリは対…
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