第371話 魔族とブレア
2032年5月25日10時
「もうそろそろ検問エリアだな」
「そうね……コディは自分がいるから大丈夫だと言っていたけど本当に任せていいのかしら?」
クラリスが少し心配そうに問いかけてくる。
「まぁコディに任せてみよう。こっちはこっちで色々考えているから。な? カレン?」
「そうね。コディがしっかりやってくれるに越したことは無いのだけれども」
カレンは俺の鎖に巻かれた左手を俺の右膝の上に乗せてから答える。
もう鎖を巻きつけるのが趣味だと思っている者もいるだろうが、決してそんなことは無い。だが巻き付けることで確かに上達するのが速くなっているのが分かる。
この数か月の俺の訓練の賜物を見てくれ。
【名前】マルス・ブライアント
【称号】雷神/剣王/風王/聖者/ゴブリン虐殺者
【身分】人族・ブライアント伯爵家次男
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】49
【HP】142/142
【MP】8280/8460
【筋力】122(+1)
【敏捷】117
【魔力】138
【器用】118(+2)
【耐久】120(+1)
【運】30
【固有能力】天賦(LvMAX)
【固有能力】天眼(Lv10)
【固有能力】雷魔法(Lv10/S)
【特殊能力】剣術(Lv10/A)
【特殊能力】棒術(Lv1/G)
【特殊能力】鎖術(Lv2/F)(G→F)
【特殊能力】火魔法(Lv6/C)
【特殊能力】水魔法(Lv6/C)
【特殊能力】土魔法(Lv8/B)
【特殊能力】風魔法(Lv10/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv8/A)
【装備】雷鳴剣
【装備】氷紋剣
【装備】火精霊の鎖
【装備】鳴神の法衣
【装備】偽装の腕輪
【装備】守護の指輪
【装備】守護の指輪
【装備】男のロマン
な? 鎖術のレベルは上がらなかったが才能が上がった。
だが俺以上に成長した者がいた。
【名前】カレン・リオネル
【称号】鞭王
【身分】人族・フレスバルド公爵家次女
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】44
【HP】63/63
【MP】721/822
【筋力】44
【敏捷】42
【魔力】96(+1)
【器用】54(+2)
【耐久】38(+1)
【運】1
【特殊能力】魔眼(LvMAX)
【特殊能力】鞭術(Lv6/B)
【特殊能力】鎖術(Lv1/G)(New)
【特殊能力】火魔法(Lv8/B)
【装備】火精霊の杖
【装備】レッドビュート
【装備】火精霊の法衣
【装備】火の腕輪
【装備】偽装の腕輪
【装備】守備の指輪
【装備】獄炎のネックレス
ついにカレンが鎖術を覚えたのだ。お嬢様の鞭と鎖の攻撃を受ける幸せ者? は誰だろうか?
ちなみにカレンと一緒に火精霊の鎖を使っている。まだ女性陣に鎖を巻きつけるのは集中力を使い、かなり疲れるから俺が疲れたらカレンが使うという形だ。
バーグッドを出て10日、俺たちは鎖を巻きつけ合いながらも強行軍で東に進んだ。
今までみたいに通過する街に毎回立ち寄り、冒険者ギルドで行方不明になっている者たちの情報を集めたりはせず、ひたすら東進だ。
その日泊まる街に冒険者ギルドがあれば、グランザムの話を聞き、宿に戻ってからみんなで話し合うを繰り返す。
西側からグランザムに行くためには、必ずその手前のディクソン辺境伯領を通らないと行けないのだが、そのディクソン辺境伯領に検問が設置されているというのが分かった。
ディクソン辺境伯領からグランザムに通じるルートは何個かあるが、俺たちが通るルートは一番警備が手薄とされているところを通る。
コディが説得できなかったら強行突破するつもりなのかって? そんなことはしないさ。もっとエレガントにな。
「止まれ! ここから先は通行禁止だ!」
検問エリアに着くと早速兵士たちに止められる。数は10名ほどで、外に出ているのは俺とアイク、それにコディの3人だ。念のためハチマルも馬車の中に入ってもらっている。
今回はアイクではなく全てコディに応対を任せる事にしている。
ここでメサリウス伯爵の名を使うとかえって厄介な事になりそうだからな。
「俺はヘルメスの街出身のビサン男爵家のコディ・ジョラスだ! ヘルメスの街に戻るために通りたい!」
「ヘルメスの街の魔族だと!? ……しかも貴族家の者……少々お待ちください。私どもでは判断つきかねます」
兵士たちの態度がどんどん軟化し、そのうちの1人が判断を仰ぐため誰かを呼びに行ったようだ。
「ほらな。俺だったら何とかなるだろう?」
もうコディは通れるものだと思っているらしい。しばらく待つと兵士がキラキラとした立派な鎧を着た者を連れてきた。
「隊長、この方なのですが、ヘルメスの街の魔族だとか……人族は通すなと言われているのですがどうすればいいのか……」
兵士が連れてきた者に言うと
「コディ様、私はここの指揮を取らせて頂いている者ですが、こちらの検問エリアからは誰も通すなと言われております。魔族の方であれば、ここより北の領都ザキデスの検問からであれば、通れるかと思われます。尤も通れるのは魔族の方だけであり、お連れの方々が通れるかは確約できませんが」
申し訳なさそうに立派な鎧を着た者が頭を下げる。
「それは困る! 早くヘルメスの街に戻らないといけないんだ! もしも俺が予定通りヘルメスの街に戻れない事によってヘルメスの街に何かあったらお前が責任を取ってくれるのか?」
コディもはいそうですかと引き下がれるわけが無い。しかし男の答えは何を言っても変わらなかった。
「スマン……ダメだった」
肩を落としながら戻ってきたコディに対しアイクが
「よくやったな。あとはマルスとカレンに任せよう」
コディの肩をポンと叩き労うと、俺の方を見て頷く。
馬車の中にいるカレンの手を取り、降りてもらうと、2人で兵士たちの下へ行く。すると隊長と呼ばれていた者が
「先ほどコディ様にもお伝えしましたが、誰であってもここを通すわけには……お通り下さい」
急に態度を変えると、周りの兵士たちが驚くが、その兵士たちも順次「お通り下さい」と言い、道を開けてくれる。
俺とカレンを残し、素早く馬車を移動させ、検問エリアを突破すると、俺が後ろから抱きしめているカレンの瞳がまた妖しく光る。もう分かるよな。魅了眼を使ったのだ。
魅了眼の消費MPが多いので俺が抱きしめているのは、ラブ・エールを唱えるためだ。
後で絶対にバレるだろうなと思ったのだが、魅了眼で操られている最中の事は覚えていないから何も心配する必要がないとの事。
それにそもそも魅了眼を持っている者が非常に少なく、魅了眼にかけられているかどうかも分からない、一般兵クラスであれば尚の事大丈夫とのことだ。
検問エリアを突破しビートル伯爵領に入り、少し馬車を走らせると、魔物がちょろちょろ現れ始める。
一番強い魔物でも脅威度EレベルでほとんどがFとGと戦闘は楽であった。
魔物を倒しながらグランザムを目指すが、クラリスは気が逸っているのか、他の者達よりも足の回転が速い。
本来はここで落ち着けとか言って宥めるのが普通だと思うのだが、そうはしなかった。最近ずっとグランザムの事ばかり心配していたからな。
「みんなは魔物を倒しながら向かってくれ! 俺はクラリスを1人にさせないように後を追いかける!」
「分かった! こっちは任せておけ! マルス! クラリスから絶対に離れるなよ! 今から2名1組に分かれて……」
アイクが俺の言葉に答えてくれ、みんなに指示を出すが、俺はそれを見届けずに急いでクラリスの下へ向かう。
クラリスはもう既に小走りしており、かなり距離が離れてしまっていた。
「ようやく追いついた」
小走りしているクラリスに追い付くと
「ごめんね。ちょっと気が逸っちゃって」
クラリスが立ち止まって後方を振り返ると、アイクたちとはもう何百メートルか離れてしまっていた。
「クラリス、何をしているんだ? 早く行こう!」
みんなが早く来ないかソワソワしながら立ち止まっているクラリスに手を差し伸べると
「え!? みんなを待たなくてもいいの?」
俺の言葉に驚いてきょとんしながら聞いてくる。
「クラリスがみんなを待ってからグランザムに行きたいというのであればそうする。でも一刻も早く行きたいんじゃないか?」
「ありがとう! マルス、じゃあ一緒にお願い!」
差し出した手をクラリスが嬉しそうに強く握りしめグランザムに向かって一緒に走り出す。
2人で走ること1時間弱、ようやくグランザムの街が見えてくると自然とまた走るスピードが上がる。後ろを振り返ってももうみんなの姿は見えない。
徐々に近づいて行くとグランザムの北側で人が集まっているのが分かる。
「クラリス! 北側でかなりの人が集まっているぞ! どうやらあれは……騎士団だ! ビートル騎士団が街の北側にいるぞ!」
まだクラリスは見えないようでさらに走るスピードが上がる。
そしてクラリスも視認できる距離になると騎士団員の声も聞こえてくる。
「そうね! ビートル騎士団だわ! でも何か騒いでいるというか……」
それ以上クラリスは口に出すことは無かった。俺にも聞こえている。檄を飛ばし騎士団員を鼓舞して何者かたちと戦っているビートル騎士団団長のブレアの声が。
「クラリス! ビートル騎士団は誰かと戦っている! 加勢するぞ!」
既に全力疾走のクラリスは何も言わずにただただ走る。一刻も早く辿り着きたかったので
「クラリス! 少しの間我慢してくれよ!」
クラリスの返事を待たずお姫様抱っこをし、風纏衣と鳴神の法衣にエンチャントすると、全力で戦闘が行われているところまで走る。
「ちょ!? 何この速さ!?」
びっくりして必死にスカートを抑えているクラリスを抱っこしながら戦闘が行われている近くまで走ると、ブレアの大きな声が聞こえる。
「魔族共め! お前たちがビートル騎士団員を攫っているのは分かっている! こちらに引き渡せ!」
「何を言っておる! お主たちが妾の仲間たちを攫っているのではないか!? 返せばお主たちを攻め滅ぼしたりはせぬ! 明日また来るがもしも妾たちが望む答えではない場合は覚悟するのじゃ!」
大声で叫ぶブレアに対して一歩も引けを取らずに言葉を返す者を見ると、そこには病的に白く、真っ白な髪の毛、ケモミミに白くふさふさな尻尾、そして少し鋭い目をした女が踵を返してグランザムから去っていく姿が見えた。
最後に出てきた女性が「妾」という言葉を使っておりますが、これはへりくだって自分の事を言っているわけではありませんのであしからず。
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