第35話 正体
本日4話目です。
扉を開けると、ビートル伯爵含め、騎士団員たちが俺に片膝をつき謝ってきた。
「申し訳ない。マルス君。正直我々は少しだけ君を疑っていた」
そういうと伯爵や騎士団員たちは頭を下げた。
「え、どうしたんですか? 状況がいまいち分からないのですが……」
「我々はダメーズ男爵が反乱を起こすという事を事前に知っていた。マルス君も加担しているかもしれないという思いから、監視をしていたんだ。もちろん信じてはいたが、どうしても保険として監視をしていた。
君が違和感や視線を感じるというのは、ダメーズ男爵の手の者と我々の2つから監視されていたので当然なのだ。今日の朝の時点で完全に疑いは晴れてはいたのだが伝えることが出来なかった」
「いろいろな説明が出来ない僕の方にも責任はありますからね。謝罪を受け入れますので」
俺はそういうとビートル伯爵の手を両手でとり、立ち上がってもらった。
「まず僕の方から報告したいのですがよろしいですか?」
「そうだな。じゃあ私の別邸で報告を聞こう。こちらからも話しておきたいことがある。いいかな?」
「はい。分かりました」
そう言って俺たちはビートル伯爵の別邸に馬車で向かった。
別邸に向かっている時にダメーズ男爵も同行していることに気づいた。
ただ手首に縄がかけられている。この人また何かやらかしたのか。
ビートル伯爵の別邸まではそう時間はかからなかった。
別邸と言え伯爵の家だからかなり豪華だと思ったのだが、そうでもない。
イルグシアのブライアント家のほうが大きいくらいだ。
伯爵の家に着き、広い部屋に通された。
そこにはダメーズ男爵の他にも6名ほど手縄をされている人がいた。
それにランパード家の二人、つまりグレイとエルナもいた。
二人とも手縄はされていないから、何かをやらかしてここに来たという事ではないのであろう。
クラリスが二人に気づき、二人の下に喜んで駆け寄る。
緊張した面持ちの二人もクラリスが来ると顔が崩れた。いわゆる嬉し泣きだ。当然だがよっぽど心配だったのであろう。
「お父さん、お母さん、ただいま帰りました」
「無事でよかった。報告はこれから聞くからね」
その様子を見ていた俺はランパード一家に会釈をしてから伯爵に報告した。
「本日ボス部屋を攻略致しました。ボスはゴブリンキング2体でした。これがゴブリンキングの魔石です」
俺はゴブリンキングの魔石だけ取ってきていたので、ビートル伯爵に渡した。
「ありがとう。マルス君。それにクラリス嬢もよくやってくれた。先ほども言ったが改めて謝罪させてもらう。私は君がそこに居るダメーズ男爵と組んで何か良からぬことをするのではないかと疑っていたんだ」
ってことはダメーズは何か良からぬことをやらかしたという事ね。
「ただ今日の朝マルス君は1時間も早く待ち合わせ場所に来た。これはダメーズ男爵と組んでいるのであれば絶対にやらない事だったんだ。計画が破綻するからね。もともとそこまでは疑ってはいなかったのだが、多少は疑っていたのは事実だ。許してくれ」
「はい。先ほども言いましたが、謝罪を受け入れます」
「ありがとう。さて褒賞の話に移ろうか。何か望みのものはできたか?」
「いいえ、まだ何も決まっておりません……」
「そうか、それではまず決定事項を伝えよう。まず、バーカー男爵家は取潰しとする! またバーカーズ6名の冒険者登録を抹消し、ダメーズ・バーカーと共に全員奴隷とする」
おぉーなかなか思い切った決定だなと思っていたらダメンズ一味が騒ぎ出した。
もうダメンズには用がないらしく、騎士団に首根っこを掴まれて連れていかれた。
「さて、騒々しい奴らもいなくなったところでもう一つ。グレイ・ランパードよ。本日より男爵とする」
これにはビックリした。思わず声が出てしまった。
当の本人は事前に聞いていたのだろう、あまりびっくりした様子はなかった。
だからさっきから緊張していたのか。
クラリスが目を輝かせながら
「やったね!お父さん、お母さん。これから領民の為に頑張ってね」
「あ、あぁなんか俺たちは何もしていないのに複雑な気分だ」
「グレイよ、そう言うでない。クラリス嬢がこんなに立派に育ったのは間違いなく親である2人のおかげだ。正式な叙爵は後日となるが、今日から男爵を名乗ることは許す。
できれば先に話したお願いを聞いてほしいのだが、決心はつかないか? もちろん命令ではないから断ってくれても構わない」
事前に何か言われていたのであろう。何を言われたかは気になる。
「えぇ、まだ決めかねているところです」
「そうか、ただ知っての通り恐らくあまり時間がない。またこちらからも連絡させてもらうと思う。今日は家に帰って、クラリス嬢も含めて久しぶりに親子3人で時間を過ごし、相談してみるといい。マルス君は今日この家に泊まってもらう事とする。よろしいか?」
俺は頷き、グレイがビートル伯爵に
「承知いたしました。家に帰って相談します」
グレイはそう言った後、俺の方を見てこう言った。
「マルス君、今日もクラリスを守ってくれてありがとう。いつも君には感謝しっぱなしだ。まだ何もお礼が出来ていないが、もうしばらく待ってくれ」
「いえ、居候させて頂き、また楽しい時間を過ごさせて頂いたので十分です」
まぁお金は途中から払っていたんだけど、看板娘つきだったからね。いくら払っても足りないくらいだ。
「では我々はこれで失礼させていただきます」
そう言うとグレイとエルナは退出していった。
クラリスも「また後でね」と言って部屋を出て行った。
「ではマルス君、いろいろ話したいこともあるがまずはシャワーとご飯にしようか」
「ありがとうございます」
俺はシャワーを浴びて、ダイニングに向かうとたくさんの食事が用意されていた。
騎士団の何人かも招かれており、賑やかでとても楽しい食事だった。
念のため食材一つ一つ鑑定したが、毒とかは入っていなかった。
食事の際に騎士団員の1人が
「申し訳ないが、君の行動をずっと監視していた。許してくれ。ただそのおかげで君がとても素晴らしい人間という事が証明できた。ポーションやインゴットを通常の値段、もしくはそれ以下で卸してくれて我々騎士団含め多くの街の住民が感謝している。本当にありがとう」
次々に俺を監視していた報告が挙げられた。
どうやらここにいる騎士団員は全員俺を監視していた人らしい。
さすがにもうちょっと危険を察知できるようにしないとな……こんなに見られていて違和感とかいっているようじゃダメだな。
そのあとも次々と騎士団員の人たちからお礼や賛辞を贈られた。
ちょっと照れ臭かったが、みんな喜んでいたので嬉しかった。
騎士団員たちはこの後まだ仕事があるのか、それぞれの持ち場に戻っていった。
伯爵と2人になると伯爵から質問された。
「本題にはいろうか、マルス・ブライアント君」
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