第340話 報
2032年2月1日10時頃
「やりました!」
「きゃゃゃぁぁぁあああ!!!」
アンザーンの街から北西に向かって3日後の昼前の事だった。俺とハチマルがいつものように馬車の前を警戒しながら走っていると、【黎明】の馬車の中からアリスの歓喜の声と同時にミーシャの悲鳴が上がる。
「どうした!?」
急いで【黎明】のワゴンの中を覗くと、そこにはアクアロッドを持ったアリスと制服がびしょびしょになったミーシャの姿があった。
「ご、ごめんないさい! ミーシャ先輩! 外に向けていたのですが、急に水が出てびっくりしちゃって!」
という事は? そう思ってアリスを鑑定すると
【名前】アリス・キャロル
【称号】-
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】10歳
【レベル】35
【HP】69/69
【MP】184/189
【筋力】46
【敏捷】55
【魔力】51(+1)
【器用】50(+1)
【耐久】46
【運】20
【特殊能力】細剣術(Lv7/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv4/C)
【特殊能力】水魔法(Lv1/G)(New)
【装備】聖銀のレイピア
【装備】戦姫の法衣
【装備】偽装の腕輪
【装備】守護の指輪
やはり水魔法を習得していた。移動中もずっと馬車の中でアクアロッドを握りしめ練習していたからな。
「おめでとう! アリス! やったな!」
アリスを祝福すると、アリスもすぐに嬉々とした表情となり
「はい! ようやく習得できました! これはもうお返し致しますね!」
そう言って俺にアクアロッドを渡してくると、ミーシャが
「アリス! 本当におめでとう! でも私パンツまでビショビショになっちゃった。まだ次の街まで時間かかるんでしょ? 着替えたいんだけど……」
ミーシャも最初はビックリして悲鳴を上げただけで、アリスの水魔法習得を喜んでいたが、ミーシャの言うとおり全身濡れてしまっていた。
他のメンバーも今のミーシャの悲鳴に驚き【黎明】の馬車に寄ってくるが、俺が大丈夫だと言うとみんなすぐに馬車に戻った。
ちなみにクラリスはずっと【紅蓮】の馬車の中で眼鏡っ子先輩の隣にいる。
濡れたミーシャがワゴンから降りてくると、ある事に気づいた。
「ミーシャ……お前、かなり大きくなったよな?」
俺の言葉に少し自嘲気味に
「マルスも私のナイスバディにやられちゃった? どうしてもと言うのであれば私のおっぱ……」
「確かにミーシャ先輩は大きくなりました! 毎日のように神聖魔法でマッサージしているからかもしれませんね!」
「悔しいけどもうミーシャは雲の上の存在になってしまったわね……私もアリスにマッサージをお願いしようかしら」
「……うん……ミーシャ背が高くなった……大人っぽい……」
そうなのだ。ミーシャの背が相当高くなったのだ。今日は2月1日。ミーシャの誕生日、そしてエリーの誕生日でもあるのだ。
え? あっちは大きくなっていないのかって? もしも大きくなっていたらみんながそこを祝ってくれるだろうが、祝ってくれないという事は……察してくれよな。
「ミーシャ、エリーの言うように本当に大人っぽくなってきたな。なんか綺麗系と言うべきなのか分からないが、お姉さんって感じがするぞ? 俺はこのままのミーシャが好きだな」
俺の言葉に嘘偽りはない。あと何センチか身長が伸びれば、前世では直視できないほどの綺麗系な容姿になると思う。
「え? それって褒めてくれているの? 自分で言うのもなんだけど全然こっちは成長してないよ? マルスの周りにはクラリス、エリー、カレン、アリスとみんなスタイルがいい人ばかりじゃん? 私みたいな棒スタイル嫌じゃないの?」
棒スタイルって……ミーシャの周りの女性はみんなスタイルがいいから、どうしても比べてしまうのかもしれないな。
「俺はその人に合ったスタイルが好きだな。前にも言ったけどミーシャの今のままが好きだよ」
俺の言葉に気分を良くしたのか
「ありがとう! 今から着替えるけど一緒にくる? サービスするよ?」
と揶揄いながら俺が作ったパーテーションの中に入って着替える。外見は大人でも中身はそのままだな。
そんなミーシャのステータスはというと
【名前】ミーシャ・フェブラント
【称号】-
【身分】妖精族・フェブラント女爵家長女
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】45(+1)
【HP】82/82
【MP】385/385
【筋力】66(+3)
【敏捷】87(+2)
【魔力】73(+3)
【器用】78(+2)
【耐久】47(+3)
【運】5
【特殊能力】槍術(Lv8/B)(7→8)
【特殊能力】水魔法(Lv7/C)
【特殊能力】風魔法(Lv6/D)
【装備】風精霊の槍
【装備】幻影のローブ
【装備】幻影の小盾
【装備】大精霊の靴
【装備】偽装の腕輪
【装備】守護の指輪
ビッチ先輩に似たようなステータスになってきている。まぁビッチ先輩の方が器用値は高いのだがそれ以外は全てミーシャが上だ。
ミーシャが着替えている間に、パーテーションの周囲を警戒しているエリーも鑑定する。
【名前】エリー・レオ
【称号】-
【身分】獣人族(獅子族)・レオ準女爵家当主
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】47(+1)
【HP】150/150
【MP】122/122
【筋力】97(+3)
【敏捷】123(+5)
【魔力】27(+1)
【器用】35(+1)
【耐久】79(+3)
【運】10
【固有能力】音魔法(Lv2/C)
【特殊能力】体術(Lv8/B)
【特殊能力】短剣術(Lv8/C)
【特殊能力】風魔法(Lv3/G)
【装備】カルンウェナン
【装備】ミスリル銀の短剣
【装備】風の短剣
【装備】戦乙女軽鎧
【装備】風のマント
【装備】風のブーツ
【装備】雷のアミュレット
【装備】偽装の腕輪
相変わらず偏ったステータスだが、エリーに関してはもう戦闘面での不安要素はない。エリーで心配な事はやはりミリオルド公爵やラースの事だな。
早くクラリスに相談したいのだが、クラリスは眼鏡っ子先輩にずっとつきっきりだから学校に戻ってから相談するとするか……
2032年3月1日10時
「みんなありがとう……本当に……今日はうちに泊まってゆっくりしていって」
眼鏡っ子先輩が目に涙をため、声を詰まらせながら俺たちに感謝している。
そう、ようやく今日メサリウスに着いたのだ。眼鏡っ子先輩の体に障らないように馬車をゆっくり走らせたり、長時間の移動を避けてた為、西リムルガルドから1か月以上もかかった。
まぁ何よりも眼鏡っ子先輩とお腹の子供が大事だからな。ここは慎重になり過ぎるくらいでちょうどいい。
それでも普通より早く到着しているという。例えば商人が冒険者を雇わずにこの距離を移動しようとすると、魔物が出てしまうと何週間とか1つの街に留まることになってしまうとの事だ。
屋敷の前に着くと眼鏡っ子先輩の父親のメサリウス伯爵や伯爵夫人、そして執事のムラーノや他のメイドたちも全員で俺たちを迎えてくれた。
「アイク! ありがとう! エーディン! よくやったな! 丈夫で元気でアイクの様な立派な子供を産んでくれよ! サポートは私たちがするからな! 長旅で疲れただろう? これからゆっくりと休め!」
メサリウス伯爵がアイクと眼鏡っ子先輩をハグしながら泣いて喜んでいる。
これは後でクラリスが眼鏡っ子先輩から聞いたと言って俺に話してくれたのだが、メサリウス伯爵はアイクとエーディンの子供をずっと望んでいたらしい。
眼鏡っ子先輩がメサリウス伯爵家当主ではなく、アイクがメサリウス伯爵家当主の為、アイクと眼鏡っ子先輩の間に子供が生まれなかった場合、アイクに側室を取らせて世継ぎを産ませ、その子を跡取りにしないといけないからだ。
まぁ眼鏡っ子先輩がアイクと婚約していなかった場合は廃爵だったから、それよりはマシだよな。
「はぁ……ようやく着いた……さすがにこの1か月は疲れちゃった」
クラリスがメサリウス伯爵にハグをされている眼鏡っ子先輩を見ながら安堵のため息をつき、俺に身を寄せてくる。ずっと神経をすり減らしていたからな。ため息をつくのも無理はない。
クラリスとこうやって触れ合うのは本当に久しぶりな気がする。
エリーやカレン、ミーシャ、アリスとは馬車の中で一緒になったり、買い出しを一緒にしたりとかしていたので触れ合う機会はあったのだが、いつも眼鏡っ子先輩の隣にいるクラリスには近づかないようにしていた。
「本当にお疲れ様。寝る前にマッサージでもしようか?」
「うん……ありがとう。今日はお言葉に甘えさせてもらうね」
この日はメサリウス伯爵の屋敷にみんなでお世話になる事にした。
屋敷に入ると豪華な食事が用意され、伯爵と食事を一緒に摂った。
食事の席でカレンが、アイクの活躍のおかげでフレスバルド家の代官が近いうちにメサリウス伯爵領から引き上げることを伝えると、メサリウス伯爵のアイクを見る目は、もう主を見るような眼差しだった。
この調子であれば、アイクがメサリウス伯爵となっても眼鏡っ子先輩の両親からも協力が得られて、うまくメサリウス領を治めることができそうだな。
食事を終え、俺たちに割り当てられた部屋に戻り、久しぶりに6人水入らずの時間を過ごした。
2032年3月2日7時
「それではアイク兄、義姉さん、行って参ります」
「ああ! リーガン公爵によろしく伝えておいてくれ!」
「マルス! 私が恋しくなったらいつでも来ていいのよ!?」
眼鏡っ子先輩がクラリスのハンカチを片手にいつもの調子で声をかけてくる。まぁこっちの方が安心はするが、可愛がりが激しすぎるのも考えものなんだよな……
5分くらい馬車を走らせていると
「マルス! マルス!」
と外から俺を呼ぶ声がする。これは先ほど別れたばかりのアイクの声だ。
馬車を止め、ワゴンから降りると後ろからアイクが走ってきて
「今、これが早馬で届いた。リーガン公爵からの手紙だ。こっちはマルス宛てに、そしてこっちは俺宛てにだ」
俺宛ての1通の封筒を渡される。アイクは自分宛ての手紙を開封すると、そこにはリーガン公爵から知らせがくるまではメサリウスでゆっくりしていなさいというような内容が書かれていた。
他にも何枚も手紙はあったが、どれもリスター連合国での上級貴族としての立ち振る舞いや注意点が書かれていた。
「良かったですね! アイク兄! これで心置きなく義姉さんの近くに居ることが出来ますね!」
「ああ! 覚えることは沢山あるが、一安心だな。出産に立ち会えないのは残念だが、それは仕方ないな。それよりマルスの方の手紙には何が書いてあるんだ?」
アイクに言われ俺も自分宛ての封筒を開封すると1枚の手紙しか入っていなく、2つ折りにされた手紙の裏から見ても明らかに短い文章というのが分かった。
そして手紙を開いて見てみると、たった一言しか書かれていなかったが、これが何を意味するのかがすぐに分かった。
アイクもすぐにその意味を理解し、俺と顔を見合わせる。
その手紙に書かれていた事とは……
『目覚めた』
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