第34話 ダメーズ・バーカー
本日3話目です。
忌々しい奴らめ!
マルスとかいうどこの馬の骨とも知れない奴がきてもう1週間がたつ。
予想外の魔物達の行進は起きたが、俺が気絶している間に収まった。
街の分かってない奴らはガキのことを剣聖だの言っているが、本当は俺の剣が特別なのだ。
あれはミスリル銀の剣だから、ゴブリンの100体くらいは楽勝に決まっている。
クラリスというガキも許せない。
高貴なる俺様を差し置いて、下賤なる民どもを優先してヒールをかけやがって。
住民の代わりはいくらでもいるが、俺様の代わりなどどこにもいないという事がなぜ分からない。
そして一番許せないのはビートルの奴だ!
運がいいだけで上級貴族の伯爵になりやがって。
どうせゴマをするのがうまかったのであろう。
しかし我慢もあと少しだ。
ディクソン辺境伯に取り入ってもう何年も経つ。
そしてビートル伯爵がガキどもと一緒に迷宮に入る日が決行日だ。
迷宮飽和が収まったと聞いて住民が増えたと喜んでいるが、それは全てディクソン辺境伯からの間者だ。
奴らは手の付けられない凶悪犯らしいからディクソン辺境伯が免罪すると言えば、たとえ騎士団が相手でも命を投げ出すだろう。
ビートル騎士団もいけ好かない。
なんせ俺の命令を聞かなかったからな。
俺がこの街を治めるようになったらこき使ってやるから覚えていろ。
俺はディクソン辺境伯の指示通り、道具屋と武器屋でポーションや武器を買いそろえた。
買った武器やポーションは間者に渡す。
もちろんクーデターの為にだ。
ビートルはバカだ。俺の行動に全く気付いてないようだ。
よくこんな無能が伯爵になれたものだ。
ビートルを始末する際どうやって伯爵になったか聞いてみるのもいいかもしれない。
もしかしたら王族の弱みの一つくらい握っているのかもしれない。
それにしてもディクソン辺境伯からの納品の依頼が予定よりもだいぶ多い。
間者200名だから200名分の武器やポーションだけかと思ったら、倍以上の500ずつ揃えろとのことだ。
さすがに俺一人で揃えるのはまずいので間者の何人かを使って買いあさった。
まぁこうやって頭が回るからビートルが俺の翻意に気づかないのであろう。
ビートルが無能と言うよりも、このダメーズ・バーカー男爵様が有能すぎるのであろう。
費用は後から倍にして返すとディクソン辺境伯が言ったので、バーカー家の私財を投げうってなんとか揃えた。
そして今日が作戦実行の当日。
俺は朝からビートル伯爵を見張っていた。
もちろん間者たちと一緒に。
伯爵たちが迷宮に入って30分が経った。
計画実行の時間だ。
あと1時間もすれば、俺はこの街の英雄になり、子爵にもなれる。
作戦はこうだ。
まず間者200人が騎士団を襲って制圧する。
いくら騎士団といえどもこの前の魔物達の行進でまだ装備がそろっていないから武装した凶悪犯の前に戦意を失うはずだ。
最近武器屋に並ぶ商品は全て俺らが買い占めている。
回復薬もそうだ。圧倒的にこちらが有利だ。
多少の犠牲が出てしまっても仕方がない。
あとは迷宮から出てきた伯爵を始末できればこちらのものだ。
まぁ伯爵の所には一番の手練れの【バーカーズ】を送っている。
もしかしたら伯爵は迷宮で不慮の事故にあっているかもしれないがその時はその時だ。
住民たちも無能なビートルよりもこの有能なダメーズ様が治めた方がいいと思っているに違いない。
後に伯爵となる予定だから住民たちには今のうちに閣下とでも呼ばせるか。
おっと、そんなことを考えていたらもう間者たちが騎士団の詰め所を襲っていた。
しかし間者の数がやけに少ないな……
あ、そうか!襲撃時間は伯爵が8:00に迷宮に入る予定だから迷宮突入から30分経ってからと伝えてあった。つまり当初の予定は8:30だった。
しかし1時間も早く7:00に伯爵が迷宮に突入したのが誤算だった。
これで7:30に襲撃するやつと8:30に襲撃する奴でばらけてしまったのか……
これはどちらが正解なのだろうか?まぁ天才の俺だったら中間の8:00に襲撃するがな。
ただ間者が襲っているはずの詰め所は静かだった。
普通は剣戟の音や怒声や悲鳴が上がってもおかしくないんだけどな……
まぁ騎士団にはろくな装備がないから諦めたのか……いくら装備が無いからと言って抵抗もしないとは……他愛もない奴らめ。
しばらくすると俺は詰め所のほうに向かって様子を見に行った。
情けなく捕らえられている騎士団員たちを見るために。
中を覗こうと門をくぐると突然門が閉じられた。
「ご苦労だったな、ダメーズ・バーカー」
なぜか騎士団員が俺に向かってため口をきいてきた。
なぜ俺にそんな口を利くのかという事に気を取られて、なぜ間者に制圧されているはずの騎士団員がここにいるのかという疑問など飛んでいた。
「おい、口の利き方に気をつけろ。不敬罪に処するぞ」
「そうだな、お前は明日から貴族でもなく、平民でもなく、奴隷だからな。口の利き方に気を付けなければならないな」
「な、何を言っている?」
「本来であれば死刑なんだが、人手不足でな。お前たちは奴隷という事になった」
そう言うとほかの騎士団員たちが俺を拘束した。
なんだこいつらは気でも狂ったか?
まぁ高貴なる俺を前にして緊張でもしているのか。
「今なら、少しは減免してやるぞ。死刑ではなくムチ打ちくらいで許してやろう」
「さすがに、このダメバカは頭が逝ってるな。この状況を分かってないらしい。話にならん」
騎士団員の一人がそう言うと、全員で俺を侮辱するように笑ってきた。
さすがにこの器の大きい俺でも頭にきた。
「おい、間者はどうした?なぜここにいない?」
「もう自白したようなものだな。あいつらはすでに捕えておる。お前の無い頭では理解できないと思うから教えてやるが間者の中にこちらの手のものが多数入っていた。500人分の武器やポーションをおかしいと思わなかったのか?その装備のほとんどは我々騎士団に流れたのだよ。あと30分後に第2波がくるんだろ?もう捕らえる手はずは整えてある」
間抜けな間者どもめ! 俺に無駄な金を使わせやがって!
30分間ずっと俺は罵詈雑言を浴びていた。
そして30分後新たに間者たちが捕縛されてきた。
多少戦った音は聞こえてきたが、あっさりしたものだった。
「さて、ダメーズ。お前はこっちに来い」
そう言われて、迷宮の前でビートル伯爵がくるまで正座をさせられるはめになった。
俺をここに連れてくると迷宮から出てきたバーカーズにすぐに制圧されてしまうのに。
こいつらはやはり無能だな。
伯爵は今頃バーカーズによって捕らえられているはずだ。
扉が開いた時のこの無能共の顔を思い浮かべると笑えてくる。
ただ待てどもなかなかバーカーズ達は来ない。
何時間経っただろうか。もう足がしびれて立てと言われても立てない。
ようやく迷宮の扉が開いた。
よし!バーカーズ達が出てきた。
さすがDランクパーティだ。
「よくやった!バーカーズ!褒めてつかわす!早くこの縄を解いてくれ」
俺がバーカーズ達の手首にも縄がされているのに気づくのにはそう時間はかからなかった。
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