第318話 真の勇者へ
リムルガルド城下町の南門から出ると、すぐに南門を塞いだ。その間ライナー、ブラム、ブラッド、コディ、クロムは先に砦に戻って休んでもらった。みんな徹夜だからな。ブラッドとコディはクラリスがかなり疲れている事を心配しており、なかなか帰ろうとしなかったがスザクとアイクの命令により渋々砦に戻っていった。
「さっきの揺れはやはりマルスの魔法か?」
「はい。魔の森の時と同じ魔法を使いました。サンダーストームという魔法で雷魔法と風魔法の混合魔法です」
俺と【黎明】女性陣が一緒に歩いているところにアイクが聞きに来た。
「やはりそうか。これはみんなに言うつもりなんだな?」
「はい。結構迷いましたが言うつもりです。ですが神聖魔法以上に今は秘密にしてもらいたいです。砦に戻ったら皆にも口止めをするので協力お願いします。特にブラッドとコディはなんか危なそうなので、クラリスにも言ってもらおうかなと。いいかな? クラリス?」
「ええ、当然よ。ブラコが雷と言っただけでも口を利かないと言っておくわ」
まぁクラリスにここまで言ってもらえればあの2人は絶対に漏らすことは無いだろう。
なぜ雷魔法を神聖魔法以上に隠すかというと当然もう1人の転生者の件があるからだ。もしも俺が雷魔法を使えるとしれば、もしかしたらだが俺を疑うかもしれない。雷=転生者なんて安易な決めつけをしないとは思うが念のためにだ。
2032年1月23日15時
砦に戻ると先に戻っていた5人はもう既にご飯を済ませて寝ていた。さすがにずっと南門で警戒していたから疲れたのだろう。俺たちも早速風呂に入って夕飯というには少し早いが食べる。
「皆さん。少し僕の話を聞いてくれませんか?」
食事中に席を立ち、みんなに言うとみんな静まり、俺の方を見る。
「先ほどリムルガルド城下町に入ったメンバーは分かると思うのですが、僕は雷魔法というものが使えます。ですがこのことをしばらく内緒にして欲しいのです。理由を今は言う事ができませんが、どうかよろしくお願いします」
あまり込み入ったことを言わずに俺の要望だけを伝えた。この発言は主にスザク、ビャッコ、ミック、そしてレッカに向けてだ。
俺が頭を下げると隣に座っていたクラリスも立ち上がり頭を下げる。それを見たエリー、カレン、ミーシャ、アリスも一斉に席を立ち同じように頭を下げた。するとこれを見たミックが
「分かった。マルスの頼みであれば約束しよう。元々俺はマルスたちに借りがあるからな」
野営地の時の事をいっているのか。案外義理堅いんだな。
「ありがとうございます。ミックさん」
お礼を言うとミックが「気にするな」とだけ言って食事を続ける。
「……ビャッコ……叔父さんに言ったら……許さない……絶対に……」
返事をしないビャッコにエリーが釘を刺すとビャッコが困った表情をするが
「分かりました。私は先ほど何も見なかったことにしましょう。絶対に口外は致しません」
エリーに頭を垂れて誓ってくれた。あとはスザクとレッカだがこちらも
「お兄様。私はマルスの下に嫁いでもフレスバルド家とは良好な関係を築きたいと思っております。どうかよしなに」
カレンの言葉にスザクだけでなくレッカも驚いていた。正直俺も驚いたくらいだ。このカレンの言葉はもしもカレンが俺の下に嫁いできて、俺とフレスバルド家に何かあった場合、カレンは俺に付くと言っているようなものだからな。
「……分かった。フレスバルド家としてもマルスを敵に回したくないからな。レッカもいいな? 雷魔法の事は父上にも内緒だぞ」
レッカはスザクの言葉に頷き、カレンに頭を下げた。
「皆さんありがとうございます」
話はここで終わると思っていたが、意外な所から横やりが入った。
「マルス、実際雷魔法ってどんなものなんだ? 少しだけでも見せてもらう事は出来ないのか?」
バロンが興味深そうに聞いてきたので、俺は思わずとんでもない事を口走ってしまった。
「すまない。最近少しはコントロール出来るようになったとは言え、見せたりすることは出来ない。だがこの雷鳴剣を持つことによって少しはどんなものか……」
俺がそこまで言うと、隣にいたクラリスは頭を抱え、少し離れたところにいたアイクが必死になって首を振っていた。俺も疲れていたのかもしれない。バロンの顔を見るまでなんで2人が頭を抱えたり、首を振っているのか分からなかった。
「マルス! 是非その雷鳴剣を貸してくれ! 雷の刺激なんだよな!?」
もうバロンは大好物を目の前にずっと待てをされている獣の様な表情をしていた。
や、やばい……だがさすがにあそこまで言ってバロンに雷鳴剣を渡さない訳にはいかない。仕方なくバロンに渡すと……感電しながら新たな刺激に目覚めて涙する男の姿がそこにはあった。
2、3秒感電状態を楽しませて、雷鳴剣をバロンの手から取り上げると、ものすごく悲しそうな表情をしたが、さすがにここまでにしておこう。
でも待てよ? 雷鳴剣を握る事によって雷耐性を得て、雷鳴剣を振う事で雷魔法を習得することが出来れば……立派な勇者の出来上がりではないだろうか? だって勇者に雷は必須条件だよな? ここはバロンに雷鳴剣を渡して真の勇者を目指してもらうべきなのだろうか?
え? 雷鳴剣を渡したらバロンは真の勇者ではなく違うものになるって? まぁそこはバロン次第だ。俺は何も責任を取れないからな。それにバロンが雷鳴剣を装備しながら戦闘すると、嬉々とした表情に魔物が恐れをなして逃げていくような気がしなくもない。
「さて、バロンの気もすんだだろうし、明日の予定を言う。明日はリムルガルド城下町のボス部屋に挑む。メンバーは俺、ビャッコ、ミック、マルス、クラリス、エリーの6名だ。残った者たちはリムルガルド城下町の火喰い狼を頼む。リーダーはアイクだ! レッカ、アイクのサポートを頼む。俺たちもリムルガルド城下町の火喰い狼をある程度倒し終わってから突入するつもりだからそのつもりでいてくれ!」
スザクがバロンの姿を見て苦笑しながら話す。
ボス部屋は6名までしか入れないだろうから、このメンバーがいいのかもしれないな。ミックの所がアイクになってもいいのだが、火耐性持ちの相手にはミックの方が分があるからミックを選んだのだろう。
まだまだ夜はこれから……というかまだ夜にもなっていないが、だいぶ疲れていたのと、緊張から解き放たれたのか眠くなってしまったので、まだみんなが食事をしている中、先に寝ると言い寝室に向かうと【黎明】全員とサーシャも寝ると言って結局は全員で寝ることになった。
「みんなしっかり火傷が無いか確かめたのか?」
「当然だよ。マルスの為にも綺麗な体でいたいもん。みんなお風呂場で隅から隅までチェックしたよ。ね? クラリス?」
ミーシャが揶揄うような表情でクラリスを見るとクラリスはただただ顔を真っ赤にしてうつむくだけだった。
「マルスもこれで安心した? これから私たちがマッサージしてあげるから、マルス、クラリス、うつ伏せになって」
「お母さんだけじゃなくて私もやるよ! 今日のマルスはめっちゃカッコよかったから大サービスしてあげる!」
「私も当然やるわよ。ハチマルのモフモフを堪能しながらマッサージを受けるといいわ」
「私もやります! 今日はみんなの役に立てなかった分、ここで本気出します!」
サーシャの言葉にみんなが便乗し、俺たち3人をマッサージしてくれるという。サーシャにマッサージをしてもらうのは少し気が引けるな……そう思っていると
「マルス、厚意に甘えましょう」
クラリスがそう言ってベッドに横になると少し間を開けてエリーも横になる。俺も2人の間で横になり、エリーを寝かしつけるが、エリーはマッサージしてもらえないのかと気になると隣から
「エリーだけじゃなくてカレン、ミーシャ、サーシャ先生は火傷や傷を見るついでに私がお風呂場で神聖魔法を使いながらマッサージしたのよ」
だから俺とクラリスだけなのか。エリーはいつものようにすぐに寝ると、いつもの青リンゴの匂いよりも少し甘い匂いが鼻腔をくすぐる。マッサージを受けるとすぐに瞼が重くなり、意識を夢の中へ手放した。
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