第305話 頼れる義兄
2032年1月18日20時
MPを枯渇させて3時間が経ち目を覚ました。
まず外に出て様子を見に行こうとするとちょうど風呂から上がってきたサーシャが声をかけてくれた。
「あら、おはよう。現状を報告するわね。南門の方は周囲の魔物を倒しながらコロネまで辿り着いたからもう安全との事よ。今はアイクとライナー、アリス、ミネルバ、クロムの5人でコロネの先端部分から出てくる火喰い狼を倒しているらしいわ」
もうそこまで行けたのか。コロネの先端部分まで行ければもう安全だろう。
火喰い狼側からしてみればコロネのトンネルを抜けた瞬間に左右から剣や槍で斬られたり串刺しにされるのだからたまったものじゃない。
コロネから少し離れた正面にライナーが囮として待機しておけば、火喰い狼はライナーに向かってくるはずだから、ライナーは火喰い狼が吐く火を斬る練習にもなるし、コロネ先端の左右にいる者たちからすれば安全に経験値を稼ぐことができる。
注意しなければならないのが、ミックたちのように不測の事態に陥った時だ。囮役1人と火喰い狼の死角となるコロネの左右から攻撃する2人と、もう1人周囲を警戒する者がいないといけない。だから4人以上でコロネに向かっているのだろう。念のため後で確認をしておかないといけないな。
「西門はどうなっているのですか?」
「西側はあまり進んでいないのよ。というのもかなりの広範囲に火喰い狼が散らばってしまっていてね。この時間にクラリス、エリー、カレン、ミーシャの4人だけで遠くまで行ってもらうのは、いくらあの子たちが強くてもダメだとスザク様が仰ってね。今は火喰い狼を南門の方へ行かせないようにしているのと、ここの周辺を守ってくれているわ」
スザクが慎重な人で良かった。もしもその4人が行くのであれば俺も一緒じゃないと落ち着かない。
「ありがとうございます。それでは僕は2階の寝室と浴室を作りますね」
階段を上がり2階部分を作ろうとするとサーシャが
「MP枯渇はまださせないで。21時になったらみんなが戻ってきて作戦会議をするらしいから。あと私はスザク様に先に休んでいろと言われたから先に休ませてもらうわね」
俺の後に付いてきながら話しかけてくる。
「南門の人たちもですか? せっかくコロネの所まで行けたのに?」
「ええ。しっかりと休養を取ってからリムルガルド城下町攻略に乗り出すとの事よ。みんな朝早くから活動しているから疲れているし、まだ爆発的に火喰い狼が増えているわけではないから、本格的な迷宮飽和はまだだろうとの事よ」
確かに今日は6時に集合だったな。みんなが起きたのも相当早いし、野営地の事もあったから肉体的にも精神的に疲れているのかもしれない。クラリスたちが撤退するのであれば先に南門の方から撤退してほしいが……
「南門から撤退するように伝えてもらえますか?」
俺の言葉にサーシャが笑いながら
「もうスザク様が向かっているわ。コロネの蓋を閉じるついでにね」
俺が何も心配なんてする必要なかったのか。
「じゃあ先に寝室から作るので、サーシャ先生は2階で休んでください」
「ありがとう。あとミーシャから伝言があるんだけど……」
ミーシャからの伝言を聞いた後に寝室から作るとサーシャはすぐに綺麗な寝顔を見せた。
ちなみにミーシャからの伝言は俺たちの寝室のベッドは3人用くらいのサイズを2つにしてくれというのと、女性用の大きいお風呂を用意してくれとの事だった。
今回は人数も多いし、どういった組み合わせで寝るのかも想像がつかないので寝室を多めに作り、浴室も男性用、女性用の大きいサイズの物を用意した。小さいのも作ろうと思ったのだが、建物も大きく、そして壁を厚くしている分MPを大量に消費してしまい、そこまでは作りきれなかった。
21時を前にして外に出ていた者たちが戻ってきて徐々に騒がしくなる。まず帰ってきたのが、アイクたち南門に行っていた者たちだ。
「アイク兄! ちょっとここに義姉さんが寝ているのですが、2階に連れて行ってもらえないですか?」
眼鏡っ子先輩は仮のベッドで寝てもらっていたのだが、俺が抱っこしたり、風魔法で運んだりするのに抵抗があったため、アイクが来るまでそっとしておいたのだ。
ちなみにバロンはもう既に風魔法で2階に運んでいる。
アイクは頷き優しく眼鏡っ子先輩をお姫様抱っこし2階に運ぶと今度はアリスやクロムがこの砦の事を褒め称えてくれた。
そしてクラリスたちと一緒にミックたちも西リムルガルドから戻ってきて、スザクを含めた全員がこの砦の中に揃うと早速会議を寝ているメンバー以外で始めた。
スザクが南門や西門、そしてこの周辺の事を詳しく説明を始める。先ほどサーシャから聞いた内容とあまり変わりはなかった。次に明日からの予定がスザクから発表される。
「明日以降まずはこのあたりの安全を確保する! まずは南門だが、今日と同じようにコロネから出てきた火喰い狼を叩いてもらうが、明日以降は24時間体制だ。アイク、ライナー、ブラム、ブラッド、コディ、クロム、そしてアリスとエーディンの8名! 交代制で討伐を頼む! リーダーはアイクだ! アイクが24時間のシフトを決めてくれ! エーディンは砦の建設を優先してもらうから明日の戦力には加えないでもらいたい!」
もしも西と南で分けるのであればほぼ予想通りのメンバーだ。
「次に西門だ! 俺とビャッコ、ミックにレッカ、そしてサーシャ、クラリス、エリー、カレン、ミーシャ、ミネルバだ。マルスとバロンも砦の建設が終わり次第こっちに合流だ! 全体のリーダーは俺だが、南門で良く分からない事があれば、まずはアイクに質問してくれ! アイクは自分の思うように指揮してもらって構わないが迷ったら俺に相談をするように!」
この後、南門のアイク班と西門のスザク班に分かれて相談を始める。スザクが西門担当の俺たちに
「取り敢えず西門は朝と夜の2交代で分けるつもりだ。朝は女、夜は男で。その辺り意見のある者はいるか? もしも何かあるのであれば挙手を頼む」
この質問に俺が手を挙げると、質問を許されたので
「僕も朝……というよりもカレンと同じ時間にしてもらえないでしょうか?」
俺の言葉にカレンを除く女性陣全員とスザクが少し驚く。なぜカレンを指名した? という雰囲気だ。案の定スザクが
「なんでカレンを指名するのだ? いや、兄としては嬉しい限りなのだが……」
やっぱり少し変な誤解をしているな。恐らく女性陣も同じ事を考えているだろう
「カレンは最近特別な才能に目覚めました。それを僕が上手くサポートできればなと思っております。これにはクラリスとミーシャの協力も必要……」
そこまで言うと、名前の上がらなかったエリーがとても寂しそうな顔をしたので
「クラリス、エリー、ミーシャの協力が必要なのです」
と言い直すとエリーがみんなと同じように安心したような表情を見せた。
カレンと組むミーシャには当然協力してほしかったし、テイムの事でクラリスの知恵も借りたい。エリーもテイムの訓練をしている時に周囲を警戒してもらうのに必要だしな。
「うーむ……マルスがそこまで言うのであれば、ここはマルスを信じてその通りにしよう。もうここまでのマルスの貢献度からすれば、疑うのがバカらしいからな。
それでは6時から18時をマルス、サーシャ、クラリス、エリー、カレン、ミーシャ、バロン、ミネルバの8人、18時から6時までを俺、ビャッコ、ミック、レッカの4人で凌ぐが、マルスとバロンはなるべく俺たちの支援を頼む」
スザクはそう言ってバロンにも気づかいをすると寝ているバロンに代わりミネルバが頭を下げた。
とても頼れるし、みんなへの配慮もでき、ジオルグの要請もしっかり断る所は断り、歩み寄れるところは歩み寄るいい義兄だ。しかも疲れているだろうに、6時まで寝ずにレッカと砦の番をするとの事だ。
なるべくスザクの負担を減らすべく、女性陣には早く風呂に入ってもらい、ご飯を食べてからサーシャの眠る寝室に向かった。
最後の部分少し訂正するかもしれませんが、変更したとしても内容に大きな変更はございません。
寝室でテイムの事を話そうみたいなことを書いたほうが分かりやすいかもしれないと判断した場合に変更すると思います。
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