第291話 招待
「何が起こった? いきなり手がしびれたんだが? そして今も右手がいう事をきかない」
ミックが自分の右手を見ながら呆然としていると、スザクも駆け寄ってきて
「ミック大丈夫か? それにしても今一瞬金色に剣が光ったように見えたが?」
スザクはミックを心配しながらも、俺に説明を求めるような目を向けてくる。
「この剣はたまに相手を痺れさせる効果があります。尤も装備者はもっと痺れますが」
雷魔法の事とか馬鹿正直に言わなくてもいいよな。
「まさか、俺の事を知らない者に初見で負けるとは思わなかった……よく魔弾に反応できたな。あんな完璧に反応されたのは初めてだ」
「なんか飛んでくるのかなと予想していたら、たまたま剣に魔弾が当たっただけです。次やるときにまた同じことをやれと言われても出来ないと思います」
俺が謙遜しながら言うとミックが大声で笑いながら
「その年でそこまで強くて謙遜も出来るのか!? そりゃあスザクやレッカが気に入るわけだ! カレンちゃんも相当いい旦那を見つけたな。もしかしたらカレン以外にもいい女性がいるんじゃないか?」
ミックの言葉にスザクが
「残念ながらミックの言うとおりだ。今度マルスの婚約者達を見るといい。たまげるぞ?」
「何? カレンちゃん以外にも婚約者がいるのか? 相当前に見たっきりだが、ちょっときつい感じかもしれんがフレスバルド家でも歴代1位2位を争うくらいの美貌だよな? これはリムルガルドから戻ってきたらしっかりと拝ませてもらわないとな!」
またしてもミックが大声で笑うと
「じゃあ日が暮れる前に戻るか。マルスの強さも再認識できた事だしな」
スザクに促されて俺たちも西リムルガルドの街に戻る。
先程の食事処のようなところでスザクたちと別れるとアイクと2人でクロムの用意してくれた屋敷に急いで帰る。早く愛する者たちに会いたいからね。
もう日は落ちているが、西リムルガルドの東側は先程よりも冒険者たちの数が多く、騒ぐ声が何度も打ち返す波のように聞こえてくる。
その喧騒を躱しながらクロムの用意してくれた屋敷に走って帰る。
領主の館を抜け西側まで来ると東側と違い、もう煌びやかな鎧を着た者たちが外にはいないようでいつもの落ち着きを取り戻していた。
「「ただいまぁ」」
俺とアイクが屋敷に戻ると【黎明】女性陣と眼鏡っ子先輩が急いで俺たちを出迎えてくれ
「おかえり! 何かあったの? すごく遅いから心配したじゃない」
クラリスがみんなを代表して聞いてくる。お母さんみたいだな。
「うん、話すと長くなるから風呂に入った後しっかりと説明する。明日以降の事もみんなに伝えないといけないしね」
「分かったわ。もう料理も出来ているからマルスたちが上がったら夕飯にしましょう」
急いでアイクと風呂を済ましてから食堂でご飯を食べながら明日以降の事やミックの事、そしてミックとの試合を話した。
「さすがマルスね、まさかミックさんを初見で倒すなんて。ミックさん相当悔しがっていたんじゃない?」
カレンが嬉しそうに聞いてくる。ミックもカレンの事を知っているような口ぶりだったがカレンもミックの事を知っているようだ。
「いや、笑っていたよ。もしかしたら本気じゃなかったのかもしれないな」
そういえばあまりというか全く悔しいという感じはしていなかったな。
その後もみんながミックとの戦いの詳細を聞いてくる。やはりA級冒険者がどういう攻撃をしてくるのかは気になるのだろう。特にバロンはいつにも増して真剣だ。
「A級冒険者にはそういう攻撃する者もいるのか……今のうちに耐性をつけておかねばな。ミネルバ、後で手伝ってくれ」
真面目に言っているのかふざけて言っているのかの判断が難しいが、恐らくバロン自身は真面目に言っているのであろう。
バロン、なんにでも耐える事を訓練するのではなく、躱したり、撃たせないようにするという訓練はしないのか?
ミネルバもバロンの言葉に嬉しそうに頷く。お前ら本当にいいパートナーに巡り合えてよかったな。
食事を終え寝室にいくとエリーを除く【黎明】全員で俺の疲れた体をほぐしてくれると相当疲れていたようで、泥のように眠ってしまった。
2032年1月15日 7時
「みんなおはよう」
筋トレを済ましてお風呂に入り、同室の【黎明】のメンバーみんなで食堂に行くと、アイクと眼鏡っ子先輩以外の全員がテーブルについていた。
今日は珍しく、アイクは筋トレを休んで部屋から出てこなかったので
「アイク兄どうしたんだろう……筋トレも来なかったんだけど」
俺が誰にいう訳でもなく呟くと、隣に座っていたクラリスが
「マルス、今日はお義兄さんの誕生日でしょ? お義姉さんとずっと一緒に居たいのよ」
あ、そういう事か……もしかしたら朝から開戦……
「朝から変な事考えないでよね。こっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃない」
クラリスが顔を赤く染めながら言うとちょうどアイクと眼鏡っ子先輩が食堂に入ってきた。
どこかアイクはスッキリした様子に見えるのは俺だけだろうか? それに眼鏡っ子先輩の肌もツルッツル……まぁ眼鏡っ子先輩の肌はいつもツルツルか。
「おはようございます。アイク兄、先にご飯をいただいております」
「ああ、遅くなって悪かったな。俺達も早く飯を済ませてしまおう」
アイクと眼鏡っ子先輩が座り2人の様子を見ているとアイクが気づいたようで
「どうした? マルス? 何かあるのか?」
流石にジロジロ見過ぎたらしく、アイクが俺に聞いてきたので咄嗟に
「アイク兄、誕生日おめでとうございます。加齢によりステータスが上がっていたので鑑定をしておりました。申し訳ございません」
「おおー! じゃあ教えてくれ!」
うまく誤魔化せたようだ。ただ鑑定をしていたのも事実だ。本当だよ?
【名前】アイク・ブライアント
【称号】槍王
【身分】人族・ブライアント子爵家当主
【状態】良好
【年齢】15歳
【レベル】44
【HP】150/150
【MP】1250/1250
【筋力】102(+2)
【敏捷】80(+1)
【魔力】52
【器用】55
【耐久】91(+2)
【運】10
【特殊能力】剣術(Lv6/C)
【特殊能力】槍術(Lv9/B)
【特殊能力】火魔法(Lv7/C)
【特殊能力】風魔法(Lv2/G)
【装備】火精霊の槍
【装備】火精霊の剣
【装備】火幻獣の鎧
【装備】火の腕輪
【装備】守護の指輪
【装備】偽装の腕輪
アイクに教えると喜んでいた。この1年間アイクはほとんど俺たちと一緒に行動をしてきたからな。1年前のステータスから比べると全然違う。
飯を食べ終えるとちょうど来客が来たので、アイクが応対する。
アイクと俺が屋敷にいる限りは俺達2人が出迎える事にしている。
俺たちはバルクス王国の伯爵家の者だし、アイクに関してはステータスを見てもらうと分かるようにブライアント子爵家当主だから、ごたごたに巻き込まれる可能性が少ないと判断しての事だ。まぁ消去法でもあるんだけどね。
応対したアイクがすぐに戻ってきて
「マルス、スザク様がいらっしゃっている。上がるように言ったのだが、すぐに帰るとの事なので来てもらってもいいか?」
アイクの言葉に俺が頷くとカレンもスザクに会いたいとの事だったので一緒に行くことにした。
「おはようございます、スザク様」
「おはようございます、スザクお兄様」
俺とカレンが挨拶するとスザクが嬉しそうな顔をして
「2人共おはよう」
と挨拶を返す。やはり可愛い妹を見ると頬が緩むのはどこの世界でも一緒だよな。
スザクは屋敷の玄関ポーチのような所にいたので中に入るように促すと、ここでいいと言うので話し始める。
「出発は予定通り、ジオルグたちが戻ってきてからだ。そして今日ジオルグたちが出発した後に6人でお互いの連携を……」
スザクが話をしていると街の中心の方、つまり領主の館の方から大歓声が聞こえた。
「どうやらジオルグが鬨の声を上げたな。もうそろそろジオルグたちも出発のようだ」
スザクがそう言って領主の館の方を見ると屋敷に走って向かってくる者がいた。
「アイク先輩! マルス先輩!」
息を切らせてクロムが俺たちのところまで来ると、聞きたくない言葉を聞いてしまった。
「兄上が是非お2人に会いたいとの事なのですが、一緒に来て頂けませんか?」
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