第278話 夢の中
「くっ! 本当にこいつら強いな!」
「でもアイク兄がいるからこの前より大分楽ですよ! 前はオーガのMPを枯渇させてから戦っておりましたから!」
「そうね! 4人でこうやって戦えば前ほどきつくはないかもしれないわ! エリーに感謝ね!」
「エリー! 無理するなよ!」
エリーはオーガの脇を駆け抜けながら俺の言葉に頷く。
4層に潜った俺たちは早速10体のオーガと戦った。
今年の初めより強くなったし、装備もいいもので揃えている。そして今回はアイクもいる。内心かなり余裕だろうと思っていたのだが、そうでもなかった。
やはり後方にいるオーガの支援が厄介でなかなか攻撃が通らないのだ。
するとエリーから
「……私突っ込む……マルス、義兄が前衛……クラリス後衛」
と言い出し、当然俺はエリーを突っ込ませることに反対したのだが、カルンウェナンの効果で戻って来られるから1回でいいから試したいと言われたので試してみたらドはまりしたのだ。
後方のオーガたちの間をエリーがすり抜けるようにして駆け抜ける。駆け抜ける時に軽く1撃を加えて、後方のオーガたちの注意を引き付けると、後方のオーガたちは前方のオーガたちの支援が出来なくなり、俺たちの攻撃も通りやすくなった。
ただ心配なのがエリーはダメージを負ってもなかなか戻ってこないのだ。
すぐに戻ると嬉しそうに言ってくれたのに、まるで戻ってくるのが嫌なのかと思ってしまうほどだ。
「エリー、もっと早く戻ってきてくれ。不安で仕方ないんだ」
オーガたちを倒した後にエリーに言うと
「……うん……分かった……」
さっきからこの繰り返しだ。
俺もエリーと一緒に突っ込むことも考えたが、そうするとエリーが危なくなっていざ俺の所に来ても危険のままという事があるから却下だ。
どうしようかと考えていると
「どうしたの? マルス?」
俺の視界がクラリスの可愛い顔でいっぱいになるくらいの至近距離で俺の顔を覗き込んできた。おかげで胸のドキドキが止まらない。
「いや……エリーがダメージを受けてもなかなか戻ってこないから心配で……」
「そうね、多分エリーはマルスが危険な目に合うのであれば、自分がなった方がマシと思っているはずよ。でも許してあげて。私もそう思ってしまうほど、ボス部屋から出てきた時のマルスは弱っていたの」
それを言われると何も言えないんだよな……
「じゃあさ、私ももう少し前に出るからエリーが危なくなったら私に声をかけてよ。ラブラブヒールで回復するから」
「そうか! それで行こう! その度にクラリスに抱き着いてもらえ……」
勢いで心の声が出ると、クラリスが顔を真っ赤にして「バカ」と言ってそそくさと先に進んでしまった。
4層の中間手前くらいまで来たところで、さすがにもう遅いから戻る事にした。
遅いと言っても18時を回ったところだからまだまだ潜っていられるのだが、クラリスとエリーにはなるべく早く休んで欲しいのだ。
夜更かしはお肌の敵っていうからな。
安全地帯に戻ったのは21時頃、他のメンバーはもう全員ご飯を済ませていた。
「随分長い事潜っていたから心配したわ? やっぱりオーガってそんなに強いの?」
カレンが聞いてくるとアイクが
「ああ。ステータス以上の強さがあるな。なんせクラリスですらダメージを負う相手だからな。だが相当いい訓練になって楽しいな。ずっとここに居たいくらいだ」
4層に行った後も夢の国扱いするアイクは本当に凄いと思う。
「他のみんなはどうだ? 今の階層できついとか、楽過ぎるとかないか?」
俺の言葉にアリスが手を挙げて
「正直私は3層では相当足を引っ張っていますが、このまま3層のパーティに残っていいですか? 絶対に戦力になりますので!」
「ああ。神聖魔法使いが一緒に迷宮に潜ってくれるだけでもありがたい。このまま俺の班に居てくれ。危なくなったら俺の後ろに来てくれれば守る事が出来る」
ライナーがアリスをフォローすると
「私もアリスの事ちょくちょく見ているから大丈夫だよ。危なくなったらすぐに行くから。だからアリス、今日からあれお願いね」
自分の胸を揉むようにミーシャがアリスに言うと
「分かりました! 今日からミーシャ先輩の胸をずっと神聖魔法でマッサージしますね!」
そこは大きな声で言わなくてもいいところだと思うぞ? アリス。
「じゃあ、ライナー先生の班はアリスをしっかり見てあげてくれ」
俺の言葉にライナー班が全員頷く。ちなみにライナーもレベルが上がっているようだ。
【名前】ライナー・オルゴ
【称号】剣王
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】34
【レベル】39(+1)
【HP】91/91
【MP】54/79
【筋力】49(+1)
【敏捷】54(+2)
【魔力】24
【器用】62(+2)
【耐久】31(+1)
【運】0
【特殊能力】槍術(Lv7/B)
【特殊能力】剣術(Lv10/A)
【特殊能力】水魔法(Lv3/E)
【装備】ソニックブーム
【装備】氷の刃
【装備】水精霊の法衣
【装備】偽装の腕輪
ライナーもかなり訓練をしているが、レベルアップによる成長がかなり鈍い。まぁライナーに関しては圧倒的防御力がウリだからステータスはそこまで必要ないのだが。
「あれ? エーデはどうした? 居ないみたいだが?」
アイクの質問にブラムが
「ああ、エーディンは風呂に入って飯食ってすぐに寝たぞ。相当疲れたんだろうな」
もしかしたら眼鏡っ子先輩はまだ怒っているのかもしれないな。
今度しっかりマッサージでもして機嫌を取らないとな。
「じゃあ俺達も風呂入ってくるから、もうみんなは寝ておいてくれ。明日も明後日も明々後日も迷宮漬けだ。しっかりと体力は回復させておいてくれよな」
アイクがみんなに言うとみんなも素直に従いそれぞれの部屋に戻る。
アイクと一緒に風呂に入ると鑑定してくれと言われたので、アイクの鑑定をするとレベルが上がっていたので教えると大喜びしていた。
【名前】アイク・ブライアント
【称号】槍王
【身分】人族・ブライアント伯爵家嫡男
【状態】良好
【年齢】14歳
【レベル】41(+1)
【HP】130/130
【MP】785/1241
【筋力】95(+3)
【敏捷】75(+1)
【魔力】50(+1)
【器用】53(+2)
【耐久】85(+3)
【運】10
【特殊能力】剣術(Lv6/C)
【特殊能力】槍術(Lv9/B)
【特殊能力】火魔法(Lv7/C)
【特殊能力】風魔法(Lv2/G)
【装備】火精霊の槍
【装備】火精霊の剣
【装備】火幻獣の鎧
【装備】火の腕輪
【装備】守護の指輪
【装備】偽装の腕輪
ステータスの上がり方が凄いだろう?
これはレベルアップによるものだけではなく、アイクの努力補正も掛かっている。
毎日俺と同じくらい訓練をしているからな。
風呂を出ると4層に潜ったメンバー以外はもう寝室に向かっており、エリーも風呂から上がっていた。
長湯のクラリスを待ってから飯を食べてから部屋に戻るのだが、部屋に戻るためにはブラッドとコディの部屋を絶対に通らないといけない。
2人の部屋に入ると案の定2人は抱き合っており、寝言でクラリス、クラリスと言って求めあっている。
こいつら寝るたびにクラリスの夢を見られるのか?
「ちょ……気持ち悪いから早く行きましょう」
すぐに2人の部屋を抜けてアイクはすでに眼鏡っ子先輩が寝ている部屋に入って、俺達も自分たちの部屋に戻る。
隣の4人部屋とのパーティションを外してあるので、先に寝ている美女たちの寝顔を見るとやはりみんな可愛い。
そして先ほどのミーシャとアリスの約束はしっかりと守られたようだ。ミーシャの胸にはアリスの手が添えられていた。
結果が出ればいいのだが出なかった場合またミーシャが落ち込むのかもしれない。
あまりじろじろ見ているとクラリスに怒られそうだから自分のベッドに戻りエリーに声をかける。
「エリー、今日は疲れただろう? マッサージしようか?」
嬉しそうにエリーが頷いてベッドに横になると
「じゃあ私がエリーの下半身やるから、マルスは上半身やって」
「分かった。エリー、特にどこをマッサージしてほしい?」
「肩、腕、背中、ふくらはぎ、もも、足の裏」
やはり動き回るエリーは体にかなりの負担がかかるんだろうな。
「分かった。マッサージをするから気持ち良かったらそのまま寝てくれ」
「……せっかくのマッサージ……寝るのもったいない……起きてる……」
俺が肩を、クラリスが足の裏をマッサージし始めるとあっという間にエリーは意識を手放した。
寝たからといってマッサージをやめず、しっかりとエリーの体をほぐしてから横になる。
「ブラッドとコディはいいよなぁ」
寝っ転がりながらクラリスの方を見ながら呟くと
「なんで? マルスがあの2人を羨ましいと思う事なんて何かあるの?」
「いやさ、クラリスの夢をずっと見ていられるっていいよな。俺はいつもぐっすりだから夢を見たことがないんだ。覚えていないだけかもしれないけど」
クラリスが白い肌を赤く染め、俺の首に手を回し、おでことおでこをくっつけて超至近距離で囁く。
「夢の中の私は夢が覚めたら消えちゃうけど、マルスの前にいる私は絶対に消えないわよ? マルスはどっちの私が好きなの?」
クラリスの肩と腰に手をまわして
「当然、目の前にいるクラリス。でも夢の中でも会いたいんだ」
「ありがとう」
どちらからという訳でもなく唇を重ね、しばらくそのままお互いの感触を楽しんでいるといつの間にか深い眠りについていた。
そして夢の中でようやくクラリスが出てきてくれた。
どういった内容か教えろって? そんな野暮なこと言うなよ。ここはみんなの想像に任せるさ。
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