第270話 検証
あとがき長いですが読んで頂けると嬉しいです。
「人が前より増えたわね。この分だと迷宮飽和の心配もないかもしれないわね」
久しぶりのアルメリア迷宮は以前より冒険者が多かった。
多いと言ってもいつものように魔物とエンカウントするのは変わらないが、冒険者たちが比較的安全な通路で体力を回復させていたり、作戦を立てたりしている。中には迷宮の罠にかかって負傷している者もいたが命に別条がなさそうだったので、ポーションだけ渡して先に進む。
「そうだな。この分だと第2の【月兎】はすぐに誕生しそうだな」
皆の最後方で俺とクラリスは話をしている。
魔物と戦っているのは【暁】のレベル30前後の者たちだ。
具体的には、アリス、バロン、ミネルバ、ブラッド、そして眼鏡っ子先輩だ。たまにライナー、コディが参加し、ダメージを食らったらアリスが回復している。
眼鏡っ子先輩以外は久しぶりの戦闘で目が輝いている。
順調なペースで2層に降りると、1層とは違い冒険者は全くいなかった。
さすがに2層ともなると先ほどの1層のように楽には敵を倒せないらしく、魔物を倒すのに少し時間が掛かり始める。
アリスのヒールの回数もだいぶ増えてきたが、聖銀のレイピアの効果でなんとかMP切れを起こさずにすんでいた。ダメージを与えるとMP回復ってやっぱりチートだよな。
2層も中間くらいまで進み、通路を歩いていると眼鏡っ子先輩が本当に辛そうな顔をして、最後方を歩いていた俺の所まで下がってきた。
「マルス、ちょっと疲れちゃったから休憩させて。腕と足がもうパンパンで」
この言葉に一緒に後方まで下がってきたアイクが
「マルス、すまない。エーデにヒールをかけてやってくれ。俺たちはこの先の部屋で魔物と戦っているからよろしく頼む」
そう言ってアイクはアリスを除く【黎明】と眼鏡っ子先輩を残して先に行ってしまった。きっと魔物と戦いたくてうずうずしているのであろう。
「じゃあ義姉さん、ヒールをかけますからね」
「相変わらずスパルタ兄弟よね。じゃあ立ったままでいいから腕と足を神聖魔法を使ってマッサージしてよ。そっちの方が疲れが取れるわ」
まぁ確かにそうだろうな。眼鏡っ子先輩に言われるがまま腕をマッサージしながらヒールをかけて眼鏡っ子先輩の足をマッサージする。
ふくらはぎを軽くマッサージして終わりにしようとすると
「もっとしっかりやってよ、もう少し上も、もっとこっち、ちゃんと見て」
言われるがまま上を見るとやはり白い楽園が見えるわけで……
「義姉さん! もうそれ以上上はダメです! マルスもなにずっと見ているのよ!」
俺がクラリスに怒られる姿を見られたのがよほど嬉しかったのか、眼鏡っ子先輩は満足そうに歩き始めた。
嬉しいんだが迷惑なドS兄嫁だ。
眼鏡っ子先輩の後を追って次の大きな部屋に入ると、ちょうどアリスが最後のグリズリーベアを倒したところだった。
「おお! アリス! 今のでレベルが上がったぞ!」
アリスを鑑定するとレベルが上がっていたので教えてあげると大喜びしていた。
【名前】アリス・キャロル
【称号】-
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】10歳
【レベル】31(+1)
【HP】51/60
【MP】38/161
【筋力】40(+1)
【敏捷】48(+2)
【魔力】42(+2)
【器用】43(+1)
【耐久】40(+2)
【運】20
【特殊能力】細剣術(Lv7/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv4/C)(3→4)
【装備】聖銀のレイピア
【装備】戦姫の法衣
【装備】偽装の腕輪
レベルアップする前から敏捷、魔力、耐久が1ずつ増えていたので、実際には今回のレベルアップで全て1ずつ上がったことになる。
アリスは最近ずっと神聖魔法を磨いており、水魔法、風魔法も習得中だから残念ながら細剣術のレベルは上がっていなかった。まぁここからがなかなか上がりにくいんだけどね。その分神聖魔法のレベルが上がっていたので良しとしよう。もしかしたら今度こそキュアが唱えられるようになっているかもしれないからまた教えてみるか。
他にもレベルが上がったものが居たが、それはまたの機会にしておく。
え? 早く教えろって? 楽しみは取っておいてくれ。こっちにも大人の事情があるからな。
戦闘に全く参加していない、俺、クラリス、エリー。カレン、ミーシャ以外全員HPが減っていたので、ここであの検証をすることにした。
「みんな、ちょっと今から新しい魔法の検証をしたいからこれから俺が指定した場所に行ってくれ」
HPの減った者たちをこの大きい部屋の中で散らばってもらうと
「これからクラリスが回復魔法を唱える。効果の範囲を知りたいから散らばってもらった。クラリス、俺の所に来てくれ」
クラリスは少し顔を赤く染めながら俺の後ろに来ると、何も言わずに後ろから俺の腹あたりに両手をまわしピタッと抱きついてきた。
クラリスのいい匂いと背中に当たる感触に思わず相棒が反応しそうになるが、頑張って堪えるとブラッドが
「姐さん! 見せつけるのはよしてくれ!」
悲痛な叫びをあげると
「私だってみんなに見られたくないわよ! この魔法はマルスとくっつかないと発現しない、がった……魔法だからこうしているのよ!」
どんどんクラリスの体温が高くなっているのが分かる。相当恥ずかしいんだろうな。
「そ、そんな……」
ブラッドとコディは相当落胆している。
「じゃあ、クラリス、まずは一番遠いアイク兄だけを回復してみてくれ」
これでもしも他の者まで回復してしまったらクラリスと猛特訓が出来る。出来るまでずっとこの幸せな状態を続けられるのだ。
「バカ……」
クラリスは俺の思考を読み取ったのか、バカと言ってきたが、このバカはいつものバカという意味じゃないことくらい俺でも分かる。クラリスも期待しているのかもしれない。
「ラブラブヒール」
そんなことを考えていると先ほどのバカと言った声と同じくらいの小さい声で、クラリスがラブラブヒールを唱えると、部屋中にヒールの光が広がったがHPが回復したのはアイクだけだった。
どうやら成功してしまったらしい……楽しい猛特訓の夢が……
「じゃあ次はブラッドとコディ以外を頼む」
テンションの下がり切った俺の言葉にクラリスが頷くと、少し時間をおいてからクラリスが魔法を唱える。
「ラブラブヒール」
するとブラッドとコディ以外のメンバー全員のHPが回復した。
うーん……優秀過ぎるな……これではもう検証することがなくなってしまう。
「クラリス? どうしてすぐにラブラブヒールを唱えなかったんだ?」
「回復する人たちを認識するのに少し時間が掛かっちゃって……これは猛特訓が必要かもね?」
クラリスが顔を真っ赤にしながら、珍しく上目づかいで媚びるように言ってきた。
絶対に猛特訓するぞ! クラリスがもう無理といってもやるぞ!
「ちょっと、冗談よ、冗談。最後にブラとコディね。ラブラブヒール」
ラブラブヒールの光が部屋中を包むと、ブラッドとコディのHPも回復した。
「これが姐さんの愛か……最高のご褒美だな」
ブラッドが感無量とばかりに言うと
「ああ……もう死んでもいいかもしれない」
コディが涙を流しながら喜んでいた。
ただここで気になったことが1つある。近くに居たブラッドのHPが全回復しなかったのだ。
少なくとも俺はハイヒール以上に回復している気がしたのだが……もしかしたらこれはクラリスの愛情度に回復量が比例するのかもしれない。今度俺のHPが減っている時にまたやってもらおう。
だがさすがにこの仮説を言うのは、ブラッドとコディにとって酷な事だから言うのはやめておこう。
ラブラブヒールの検証を終え、2層をどんどん進んでいくと3層に降りる階段がある部屋まで来た。
魔物を危なげなく倒すと
「みんな! 分かっているな! 今日の朝俺が言ったことを絶対に忘れないでくれ! 特にブラッド、コディ! もしも答えにくい質問をされたら他の者に振るようにしてくれ! それと……」
屋敷を出発する前に言ったことをもう一度みんなに周知してから3層に降りた。
ステータス表記を少し変えてみました。
見づらいでしょうか?
何個かのパターンも試してスマホでもチェックしました。
よろしければ感想欄にステータス表記の事を書いていただけると嬉しいです。
HPとMPを同じように書くと分かりづらかったので今までのままにしてあります。
またTwitterでも書きましたが、この作品は努力や加齢によっても
ステータスが上がるので1レベル上がってもそれがレベルによる上昇か
努力、または加齢による上昇かの区別をつけることが難しいです。
いい案があれば是非教えて頂ければと思いますm(__)m
皆様の感想によっては今まで通りの表記に戻すことも考えておりますのでよろしくお願いします。
次の投稿は少し遅れるかもしれません。
少しでも面白い、続きが気になると思う方は
★★★★★とブクマの方を頂けたら私のモチベーションにも
なりますので是非よろしくお願いしますm(__)m
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