第251話 エルシス
「やったね!今日は昨日と違って安心して見ていられたよ!」
「相手が女じゃないというだけでこれだけ安心できるのもある意味凄いわね」
ミーシャとカレンが2回戦を勝った俺にねぎらいの言葉? をかけてくれた。
「本当におめでとうございます! 私も今日は安心して見られました! 今日は私も先輩のマッサージをしに行きますからね! だから義姉さんはミネルバ先輩と私の部屋に来てもらう事にしました!」
おー、今日はクラリスとエリーとアリスにマッサージをしてもらえるのか。
まぁエリーはすぐに寝てしまうだろうから実際にはクラリスとアリスの2人になるわけだが……
「もしかして私との試合結構危なかったの? 実際対戦していた私は全く歯が立たない気がしたんだけれども……」
ビッチ先輩がみんなに聞くとクラリスが
「そうですね。もしもビッチ先輩が影縛りのクナイを使わなかったらマルスはビッチ先輩を足止めすることは出来なかったと思いますし……いくら作戦がハマったとはいえ、ずっと誘惑され続けていたら、マルスはそのうち身動きが取れなくなっていたと思うのであくまで私はですけれども昨日が一番の正念場だと思っていました」
クラリスの言葉にいつものようにエリーが頷くとコディを除いた全員が納得していた。
「誘惑って……そんなつもりは無いんだけどそう捉えられちゃうか。でもB級冒険者にもなるとそれなりの経験を積んでいるだろうから私の色気なんて効かないと思うし、ましてやクラリスやエリーといった美人に囲まれているマルスであれば私の誘惑なんて効かないわよ。ねぇマルス?」
これは返事をしにくい……首を縦に振ればビッチ先輩に魅力がないと捉えられてしまうし、否定すればクラリスたちに大目玉を食らう事になる。
「と、取り敢えずここで話すのもあれですから宿に戻りませんか?」
「そうだな。ビッチ先輩にも色々エルシスの事を聞きたいからな」
俺の言葉にアイクが賛同してくれ宿に戻る事になった。
コロシアムから出ると、長身でやせ型、金髪ロン毛のイケメンに声をかけられた。身長は俺と同じくらいだ。
少し目が特徴的で蛇の目の様な印象を受ける。
え? 蛇の目をした男はイケメンじゃないって?
みんな俺の前世を見てないからそんなことが言えるんだ。エルシスがイケメンじゃなかったら前世の俺が報われないだろう?
「君が次の対戦相手のマルス君だね。俺はエルシス。エルシス・エルストだ。俺以上のハーレムを築いていると聞いたものだからどんなものか見に来たら想像以上で驚いたよ。今まで数多くの女を見てきたけれどそこに居る女たちは間違いなくトップクラスだ。特に金と銀の子は見ているだけでも涎が出てくる。明日俺が勝ったら君のハーレムは俺の物でいいよね? 女も弱い男にはついて行きたくないだろうしね」
俺の返事も待たず一方的にエルシスが話しかけてくると、エルシスの周りにはずっとエルシスをマークしていたであろうフレスバルド騎士団員5名が展開していた。
手を出してこない以上手は出せないのか? そんなことは無いか。元クラウン公爵家の者だから手を出すとどんな事態を招くか分からない……いや、分かってしまうから手を出せないのか。
「エルシス! 昨日も言ったがマルスには……いやリスター帝国学校の生徒には近づくな!」
スザクが怒鳴ると
「いいじゃないかスザク、俺とお前の仲だろう? それに俺の可愛い後輩でもあるからな。しっかりと女を可愛がってあげるのも先輩としての役目だろ?」
「黙れ! 警告はしたぞ!?」
「そんな本気になるなって。分かったよスザク。だけどマルス君。さっき言ったことは本気だからね。もしも明日俺が勝ったらそこにいる女全員俺の物だからね」
エルシスは侍らしていた女性たちの肩に手をまわして去っていった。
「何あいつ! あんな気持ち悪い顔でよくあんなこと言えるわね! マルス! 絶対に勝ってよね! もし負けたら私は舌を噛んで死ぬわ!」
宿に戻って開口一番クラリスがエルシスに対して怒りをぶちまけるとエリーもいつものようにクラリスに追随する。2人共激おこぷんぷん丸である。
さっきも言ったがエルシスはかなりかっこいい部類に入るのだが……少し眼鏡っ子先輩の兄のキザールに似ている気もする。
「お兄様! なんでエルシスに呼び捨てにされて黙っていたのですか!? 平民が次期フレスバルド公爵にあんな口を叩くなんて不敬罪で即死罪でもよろしいのではないですか!?」
カレンはエルシスにも怒っていたが、それ以上にスザクに対して憤慨しているようだった。
「ああ……昨日の話を聞いていなければ間違いなく何かしらの罰は与えていたと思うのだがある噂を聞いてな。エルシスは結婚をするらしいんだ。そしてその相手がとんでもない大物だ。カストロ公爵家当主レオナ・バルサモ本人らしい。真偽は今確かめているのだが、もしもレオナの婚約者に手を出したら大騒ぎになるだろう? だからカレン、ここは堪えてくれ。明日マルスに全てを託そう。マルスなら絶対に勝てるはずだ」
「え……でもそれはリスター連合国の禁止事項ではないのですか? 公爵家同士の婚姻は認めないというのがルールだったはずでは?」
そういえばそのような事を聞いたか、習ったかしたな。
「ああ。でも今エルシスは平民だ。そしてあの時クラウン公爵家から追放した判断は間違いではない。むしろ父上もリーガン公爵も積極的にエルシスの追放に賛同したのだ。もしもカストロ公爵と初めから結婚する気でいたのであれば大問題だと思うが、あの時の追放はそんなふうではないからな。
問題はそのエルシスと結婚をしようとするレオナの方だ。どう考えてもレオナの行動はおかしい……エルシスのクレイジーさは俺とレオナが一番良く分かっているはずなのだが」
「それでも絶対に反対するべきです! 公爵家同士が血縁を持ってしまうととても大きな力となってリスター連合国のパワーバランスが崩れてしまいます! そんなことくらいお父様やリーガン公爵だって分かっているでしょう?」
激しくカレンがスザクに抗議をすると
「カレン、どうやら父上もリーガン公爵もセレアンス公爵も全員今回のエルシスとレオナの件には言及しないらしい。どうやら3人とも思う所があるらしくてな……」
リーガン公爵なら絶対に反対しそうなんだけどな……カストロ公爵とはかなりの犬猿の仲なんだろう? それにレオナってカストロ公爵だよな? なんでスザクはカストロ公爵と言わずにレオナと言うんだ?
「スザク様とカストロ公爵、そしてエルシスはどういった間柄なのですか? とても親しいような印象を受けたのですが……」
たまらず俺が質問すると
「ああ。俺達3人は元リスター帝国学校のSクラスで一緒だからな。序列は俺が1位でエルシスが2位、そしてレオナが3位だ。知っている者もいるかもしれないが、レオナは神聖魔法使いだ」
この言葉にヒュージ以外の全員が驚いた。
「と、取り敢えず僕がエルシスを倒せば問題ないという事ですかね? エルシスに勝とうが負けようが結婚は止められないと思いますし……」
「いや、そんなことは無いはずだ。エルシスはA級冒険者にならないとクラウン公爵家には戻れないからな。流石にレオナも平民とは結婚する気はないだろうし、カストロ公爵家の者も反対するはずだ。だからマルス! 明日の試合だけは絶対に勝ってくれ! リスター連合国の今後にも関わってくる!」
もちろん絶対に勝つつもりだ。もしも俺が負けたらクラリスは舌を噛んで死ぬと言っているからな。
「ではエルシスの戦闘スタイルを教えてください。見たところとても華奢でしたので技巧派のような気がするのですが……」
俺の言葉にスザクとビッチ先輩が同時に話そうとするが
「ビラリッチ、まずは俺の知っている事から話をさせてくれ。まずエルシスは完全に突進型の前衛だ。得物はクレイモアと呼ばれる大剣を軽々と振り回す。ちなみに筋力値だけで言えば、恐らく俺が見た中でもダントツだろう。バーンズ様よりも高いと思う……あと剣の腕前だが、お世辞にも高いとは言えない。ただ耐久値がかなり高いからマルスは近づかないでひたすらエルシスの射程外から攻撃をしていれば間違いなく勝てると思う。次はビラリッチの知っている事を聞かせてくれ」
バーンズよりも筋力値が高いって異常だな……絶対に近づきたくない。
「今スザク様が言っていた事と1点を除いてほとんど同じよ。あの細い体からは考えられない完全に筋肉ゴリラね。違う所は今日の試合前にも言ったけど、メインウェポンは伸びるらしいわ。常人では持つ事すら出来ないから、外れ武器らしいのだけれどもエルシスはそれを軽々と扱うらしいわ。そして驚くのはその射程なんだけど何十メートルという話よ。もしそれが本当だったらエルシスにコロシアムの中心に立たれたりでもしたら、どこでも射程圏内という事になりそうだからもしかしたら接近戦にしか活路が無いかもしれないわね」
遠距離で受けてしまうと遠心力も加わって吹っ飛ばされるかもしれないから、ビッチ先輩の言う通り接近戦をした方がいいのかもしれない。ちなみにスザクはこのことを知らなかったらしい。
延々とエルシス対策をみんなで講じて夕食を食べた後部屋に戻って身を清めてからクラリスとエリーの泊っている部屋にスペシャルマッサージを受けに行った。
何がスペシャルかって? それは俺も知らない。だけどクラリスがさっきそう言ったんだ。スペシャルマッサージをしてあげるから期待してねって。
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