第236話 コディ
「まずは挑戦者の入場です! 4大魔法全て使い、我らが北の勇者バロンとの双璧を成すこの人は、圧倒的魔力でここまで勝ち上がりました! ハーレムキングの横暴を止めるのはこの人なのか! 東の大魔道! コディィィ・ジョラスゥゥゥウウウ!」
名物アナウンサーの紹介と共に堂々とコディと呼ばれた魔族が入場してくる。魔族といってもあまり人間と容姿は変わらないのか……変な模様が顔や体にちょこっと入っているくらいだ。
「続いてはこの方の登場です! 一度でいいから見てみたい。マルスが試合で負けるとこ。今日で好き勝手やってきた黒歴史に終止符は打たれるのか! リスター帝国学校最強にして最狂! ハーレムキング! マルス・ブライアントォォォオオオ!」
名物アナウンサーの酷い紹介を受けて入場すると大きな笑い声と共に大歓声が上がった。
アイクとの優勝決定戦の時のように会場が揺れている。コディの前まで歩いて入場するとコディが話しかけてきた。
「まずはありがとうな。俺の挑戦を受けてくれて」
コディは手を伸ばして握手を求めながら俺に言ってきた。
「ああ、俺も魔族に興味があったんだ。それに凄い魔法使いなんだろ? 勉強させてもらおうと思ってな」
俺がコディの差し出した手を握るとコディは強く握り返してきた。そして手を握ったままコディが
「もしも俺が勝ったらマルスにはイセリア大陸に来てもらいたい。今ちょっと大変な時期でな。マルスの兄のアイクは来年伯爵になるんだろう? 伯爵様にはこんなこと言えないからな。同じ年で最強を決めたいというのも嘘ではないが、こっちが俺の本当の思いだ。約束してくれるか?」
なんか約束という言葉を妙に強調してきた。
「俺がイセリア大陸に行って何をするかにもよるが即答は出来ない。学生だし、リーガン公爵の許しもいるだろうし、イセリア大陸に行くとなれば親にも伝えたい。それに俺はパーティリーダーであるし、クランマスターでもあるからな。ちなみにイセリア大陸で俺は何をするんだ?」
「そうだな。基本的にやってもらう事は至って単純だ。ただただ溢れてくる魔物達を倒してほしい」
「分かった、ただ年末年始にかけて先約があるんだ。俺が負けて先ほどの条件を諸々クリア出来たらでいいか? ただもしも俺が行くとなると絶対2人は付いてくると思うがそれでもいいか? もしかしたらもっと増えるかもしれないが? それに俺が勝った場合は何をしてくれるんだ?」
俺がどこかに行くと言ったら間違いなくクラリスとエリーは付いてくるだろう。いや付いてきてくれるよね? 見捨てないよね?
「それでいい。だが大人数すぎても持て成す事が出来ないかもしれない。全員強ければまた話は違うのだが……まぁそれは後で決めよう。俺が負けた時か……正直負ける事なんて考えていなかったが……」
後で決めようって……本当にコディは負けると思っていないらしい。コディが悩んでいたので俺はすかさず
「じゃあコディ、コディの装備しているマントをくれよ」
俺の言葉にコディがビックリして
「お前……もしかしてこのマント知っているのか……?……分かった。負けるつもりは無いからいいぞ」
冗談で言ったつもりがなんとOKしてもらえてしまった……ヤバい、クラリスにさっき言われたばかりなのに……実は入場と同時にコディを鑑定していたのだ。魔族だし万が一のこともあるからな。
【名前】コディ・ジョラス
【称号】-
【身分】魔族(魔人族)・ビサン男爵家嫡男
【状態】良好
【年齢】11
【レベル】35
【HP】88/88
【MP】302/422
【筋力】42
【敏捷】30
【魔力】62
【器用】51
【耐久】45
【運】1
【特殊能力】体術(Lv4/D)
【特殊能力】呪術(Lv5/C)
【特殊能力】火魔法(Lv7/B)
【特殊能力】水魔法(Lv6/C)
【特殊能力】土魔法(Lv5/D)
【特殊能力】風魔法(Lv1/F)
【装備】強欲の杖
【装備】男のロマン
男のロマン! かつて手に入れることを諦めた物が目の前にあったのでつい……恐らくコディのステルスという魔法はこれだろうな。
みんなは男のロマンにしか目がいってないかもしれないが、俺はしっかりステータスも確認していたよ? なかなか強いけど正直負ける相手ではないな。
固有能力も持っていなかったし『あいつ』ではないと思う。でも必ずしも固有能力を持っているという訳でもないのか……
「では約束だからな!?」
再度コディが確認したので
「分かった。約束な」
俺の言葉にコディは満足したように握手を解いた。コディは魔法使いだから闘技場の一番端まで下がる。俺も同じように後ずさりしながら一番端まで下がると
「マルス、コディの魔力はどれくらいなの? もしもマルスが魔法を斬った時に私でも相殺できる?」
選手控室からカレンが聞いてきた。カレンの隣にはアイクもおり、そして驚いたことにクラリスとソフィアまでいた。
な、なぜ……ここにクラリス……そしてソフィアまで……メイド喫茶を出るとリーガン公爵に怒られそうって言っていたのに……
「あ、ああ、コディの魔力はカレンより低いからもしもなんかあった時は頼むよ……」
動揺を悟られないように冷静を装いながら言ったが、クラリスにそんなことが通じるわけが無かった。
「リーガン公爵もね、凄い魔法使いがいるから見に行くでは怒るかもしれないけど、マルスの応援に行くと言えば怒らないかなと思って来たのよ。あと会話の内容はソフィアから一字一句余すことなく聞いたわよ? あのマント、私もカレンも見たことがあるのよねぇ……確かあれは……」
物は言いようという事か……ソフィアの地獄耳だと俺とコディの話の内容はやはり分かるのか。
「も、貰う物が無かったから仕方なくだよ……? こ、コディに貰ったらクラリスに渡して必要な時だけ借りようとしていたんだよ……?」
俺の言葉を聞くとクラリスが笑顔になって
「本当!? なら良かった。頑張ってね! もしも負けたら絶対に私も一緒に行くからね!」
この笑顔は反則だ。例え目が笑っていなくても完全に心が持っていかれる。
「始め!」
リングアナウンサーの声が会場に響くとコディがすぐに
「ファイア!」
大きな声で叫んでファイア飛ばしてきた。俺はいつものようにファイアを雷鳴剣で斬ると
「魔法を斬った……? そんなことが出来るのか……?」
とこちらも新鮮味のないリアクションだった。何度かコディが放つ魔法を斬ると
「今からフレアという火魔法を放つ! これは今までの魔法と違い上級魔法だ! さっきのようにはいかないぞ!? 周りで見ている人ももしもマルスが危ないと思ったらフレアを相殺してもらっても構わないからな!」
コディが俺に気を使ってくれて周囲の者たちに対して叫んだ。こいつ魔族なのにいい奴なんだな。
普通に考えれば実力の分からない者にフレアを放つと下手すりゃ殺人だからな。
武神祭ではお互い相手の実力を知っているし、何かあれば側にいるサーシャやライナー、ブラムが必ず止めてくれるから、生徒同士が本気でやりあっても問題はないのだがな。ある生徒たち……【黎明】のメンバーを除いてだが……
だが1つ違和感を覚えた。コディって俺の事をどうやって知ったのだ? 俺とアイクの優勝決定戦とかを誰かに聞いたわけではないのか? だから俺を指名したのだと思ったのだが、もしもそうであればアイクのフレアを何度も斬った事を知っていると思うのだが……
「フレア!」
当然コディのフレアを誰も相殺しようとしない。まぁここにいる生徒達はみんな知っているからな。
怖がっているのはコディと優勝決定戦をしらない一般のお客さんだけだ。さっきのファイアと同じようにフレアを斬り、真っ二つに割れたフレアをカレンとアイクがそれぞれ相殺した。
「な……フレアをそんなに軽々と……本物の剣聖という事か……マルス! 次からは本気でやらせてもらう! これが凌げたらお前の勝ちでいい! だが同年代でこれを凌げたやつは1人しかいない!いくぞ!」
コディはそう言うとまた大きな声で
「フレア!」
あ、このパターンはもしかしたらフレアの後ろに隠れてというパターンかもと思ったのだが全く違う事が起こった。
魔力眼がコディから地面を這って流れてくる魔力を捉えたのだ。もしかしてと思ってすぐに未来視を発動すると予想通り地面からストーンスピアが発現する直前だった。
これはフレアが着弾する前にストーンスピアで別角度からの攻撃を加えようとしているのか!
俺は地面から突き上げてくるストーンスピアを火精霊の剣で薙ぎ払い、ストーンスピアとほぼ同時に飛んできたフレアを雷鳴剣で斬った。
これはかなり危なかった。
わざとファイアやフレアを大きな声で言っていたのはこの為だったのかもしれない。
フレアの大きな火の塊がコディの姿を隠していたから当然口元は見えない。そしていつも魔法を大声で唱えると思わせておいてここ一番で普通の音量で発現させる……考えたものだな。
2つの魔法を凌いだ俺はすぐにコディの方を見るとまた驚かされることをコディがしていた。
なんとコディが居たところから霧が発生していたのだ。もう先ほどコディが居た場所は全く見えなくなっている。そしてその霧は闘技場を覆いつくそうとしている。
だがこれは俺が何度も想定していたシチュエーションの1つだ。ガスターにやられた日から毎日対策を考えてこの魔法に辿り着いた。もちろん風魔法で霧を晴らすというのも手かもしれないが、この魔法の方が絶対に効果的だと思う。
ガスターとはもう永遠に戦う機会が無くなってしまったのでまさかここで試すことが出来ようとは夢にも思わなかった。
マルスの考えた対策(魔法)とは?
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