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11章 少年期 ~リスター帝国学校 2年生 デアドア神聖王国編~

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第182話 枯れない涙

2031年4月10日


 俺たちは今日エルハガンの街を出発する。


【黎明】【創成】の10名を、教皇、アリーナ、セラフをはじめ、冒険者、住民たちも見送りに来てくれた。みんなに礼を言われながら雷の紋章で覆われた街を出る。


 エルハガンの街を出発して10分くらい馬車を走らせ、少し小高い丘で馬を止めた。最後に外からエルハガンの街並みを見ようとミーシャが提案したのだ。


「今まで行った街の中でエルハガンが一番いい街だったなぁ。お母さんに連れられて色々な街に行ったけど、ここまで一体感のある街は無かったなぁ……」


 ミーシャが感慨深げに言うと、カレンも


「そうね……冒険者、住民がこんなに1つにまとまっている街もなかなか無いわね。それもこれも教皇様のおかげなんでしょうけど……でも……」


 と言いかけたがカレンはその後の言葉を飲み込んだ。ドミニクはずっとエルハガンの街を見ていた。


「ドミニク……本当にこのままでいいのか?」


 俺がドミニクに聞くと


「どういう意味だ?」


「このまま、俺たちと次の目的地セレアンス公爵領に一緒に行っていいのか?」


「それ以外の選択肢はないだろう? 俺はリスター帝国学校2年Sクラス序列7位、【暁】という最高のクランに所属する【創成】のメンバーだ。そして何よりクランマスターには大恩があり、俺は何も返せていないからな」


 俺の質問にドミニクが予め用意していたという感じで返答した。


「なぁ。俺はドミニクの事を本当の仲間……親友だと思っている。ドミニクはどうだ?」


「当然、俺はマルスを最高の仲間で親友だと思っている。そして尊敬もしているし、目標でもある」


「ありがとう……では仲間であり親友の俺から最後にもう一度聞く。ドミニク、本当にこのままでいいのか? ドミニクはどうしたいんだ?」


 俺とドミニクの会話に他のメンバーはみんな固唾を飲んで見守っている。特にソフィアはとても辛そうな顔をしている。


「……俺は……エルハガンに残りたい……教皇様の手助けをしたい……街の住民に手を差し伸べたい。できる事ならヒスの代わりをしてやりたい。だけど……【暁】からも抜けたくない……」


 ドミニクはずっと胸の中に秘めていた気持ちを吐露した。うっすら目には涙が溜まっている。


「ドミニク……仲間や親友っていうのは離れたら解消されるものなのか? クランも離れたら抜けないといけないのか?」


 俺の言葉を聞いたドミニクが目を丸くしながら


「……どういうことだ?」


 問いかけてくる。


「エルハガンに残るからといって【暁】を抜ける必要はない。もしも俺が辛くなった時は応援を頼むからその時はバテないで、駆けつけてきて欲しい。もちろん逆もある。ドミニクが困ったことがあれば俺たちを真っ先に頼って欲しい。必ず助けに来る。だってドミニクは【暁】に所属する仲間であり、親友だろ?

それに教皇様は絶対にドミニクを必要としている。今の教皇様をサポート出来るのは、教皇様の家族とドミニクだけだ……」


 いつの間にか目頭が熱くなっていた。本当はドミニクと別れたくない。一緒に苦楽を共にしてきた仲間だ……だがこれがドミニクにとっては最善の選択だと思う。


 だから俺はドミニクの背中を押した。俺の言葉にドミニクはおろか、他のみんなも泣いていた。きっとみんなも俺と同じ気持ちだろう。


「マルス……いいのか……?本当に……?」


 きっとドミニクはこういったのだろう……もうドミニクの声は涙声でしっかりと聞き取る事は出来なかったが、俺は何度も頷いてドミニクを抱きしめた。



 みんなひとしきり泣き、落ち着くとドミニクがそれぞれに別れの言葉を言った。


「クラリス……初対面の時の事を許してほしい……ずっと言いたかったんだが、恥ずかしくてな……」


 ドミニクがそう言うとクラリスがドミニクの手を握り


「うん。大丈夫……私もやり過ぎちゃったし……絶対にまた……会おうね……」


 クラリスの濡れた小鼻がまた震え始めた。



 次はエリーだ。


「エリー、マルスの事をよろしく頼む。あと……自分の事を大事にな……」


「……任せて……マルスは私の全て……絶対に守る!」


 そう言って2人は握手した。「自分の事を大事にな」に対する答えがない。



「カレン、ソフィアから聞いたのだが俺の事を心配してくれていたみたいで嬉しかった」


「あの状態のドミニクを心配しない仲間なんていないわよ。ドミニク……しっかり教皇様をサポートしてあげてね」


 カレンは最初から教皇とドミニクの事を心配していたからな。2人が固い握手をしてからドミニクはミーシャの前に立つ。



「ミーシャ、ミーシャにはいつの間にか抜かれてビックリした。それに正直悔しかったよ。今度会う時には必ず勝つからな」


「うん。私の事が恋しくなったら明日にでも戻って来てもいいんだからね」


 ミーシャらしい言葉だった。ミーシャと握手したドミニクは、恥ずかしそうにバロンの前に立った。



「バロン、【創成】を抜けることになってしまうがすまない。だが誘ってもらった時は本当に嬉しかった。実は勝手にバロンの事をライバル視していた。今後も勝手にライバル視するがよろしくな」


「ああ。俺もドミニクの事は良きライバルと思っていた。次に会う時が楽しみだな」


 2人の共通点は剣と相方が……ドミニクとバロンはお互いの背中を手で叩くと、バロンの隣にいたミネルバに対してドミニクが



「ミネルバ、バロンをよろしくな。正直バロンが羨ましかったよ。ミネルバみたいないい子が近くに居てくれてな」


「ドミニクもいい人見つけたじゃない? 良い報告待ってるね」


 ミネルバはソフィアを見ながら言った。ドミニクの羨ましいという言葉を掘り下げると少し変な意味に捉えてしまいそうだから考えることをやめた。


 ドミニクはもう涙腺崩壊しているアリスの前に立った。



「アリス、しっかりマルス、クラリス、ソフィアの言う事を聞くんだぞ。お前は絶対にいい剣士、そして神聖魔法使いになる。デアドア神聖王国の誇りの為にも頑張ってくれ」


 アリスは体を震わせながら泣いている為、返事が出来なかったが、ドミニクの胸に飛び込んで嗚咽を漏らし泣いた。アリスの肩を優しく包み、アリスを解くとドミニクは緊張しているような面持ちでソフィアの前に行った。



「ソフィア、本当に俺の心の支えになってくれてありがとう。ソフィアが居なかったら、俺は今頃正気を保っていられなかったかもしれない。この恩は必ず返す……だからそれまで待っていてくれないか? 必ずソフィアを迎えに行き、幸せにする!」


 これはプロポーズ? みんな息を呑んで見守る。するとソフィアから予想だにしない答えが返ってきた。


「嫌よ」


 ソフィアの言葉にみんな凍り付く……特にドミニクに関してはまさかの出来事だっただろう。しかしソフィアは続けた。


「私は待たないわ。なぜならあなたと一緒にエルハガンに残るから」


「え……? なんと……?」


 ドミニクはソフィアの言葉を理解できていないようだ。


「だから……私の人生をあなたに上げるから、ドミニク、あなたの人生も私に寄越しなさい」


 こ、これは逆プロポーズ……まさかの拒絶からの逆プロポーズをされたドミニクはソフィアを抱きしめ


「ありがとう! 絶対に幸せにするから!」


 顔をくしゃくしゃにしながらソフィアを抱きしめた。ソフィアはドミニクに抱きしめられながら


「マルス……私もドミニクと一緒にここに残りたいのだけどいい? 本当に勝手を言って申し訳ないけど、ドミニク同様【暁】に所属したままというのは無理かしら?」


「もちろんOKだ。ソフィア、ドミニクをよろしく頼む」


 俺がソフィアに言うとソフィアがアリスに


「ごめんね。アリス。どうしてもドミニクを放っておけなくて……でもアリスは私が居なくても、もう【黎明】の一員としてやっていけるわ。みんな……アリスの事をよろしくお願いします」


 ソフィアを抱きしめているドミニクを振りほどき深々と俺たちに頭を下げた。


 アリスがソフィアの所に行き泣き崩れると、ソフィアもアリスを抱きしめて一生懸命涙をこらえていた。


 その様子を見ながら俺たちはしばらくその場にいた。


 春の穏やかな雨がみんなの頬を濡らした。

ごめんなさい・・・

これでこの章最後と昨日言いましたが、あと1話22時に投稿します。

凄く短いですがそちらの方も読んで頂けると嬉しいですm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 会話が臭い
[良い点] うーん、ソフィアのみかー。姉妹丼ならず、残念ドミニク!(待て
[良い点] カクヨムから来ました! これはいいハーレムものだ… [気になる点] エーデとかミネルバとかソフィアとか、恋人がいる(後で恋人と引っ付く)女性キャラまでマルスに気があるような描写が入るのはノ…
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