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11章 少年期 ~リスター帝国学校 2年生 デアドア神聖王国編~

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第171話 聖都エルハガン

 なんだこの数の魔物達は……迷宮飽和(ラビリンス)どころの騒ぎじゃないぞ……エルハガンに近づくにつれて魔物達の数が分かってくる。


 俺たちはエルハガンの南西から来ており、エルハガンの西と南の街門にはそれぞれ1000匹ずつのゴブリンがいるのだが、問題は北東方面だ。視界が全てゴブリン達で埋まっていた……


 ようやく先行していたクラリス、エリー、ドミニクたちの所まで辿り着くとドミニクが


「すまない! マルス! 先走り過ぎた! 俺では道を切り開けないから先頭を頼む!」


 ドミニクが悔しそうに俺に言いながら馬車の運転を代わる。どうしても自分で何とかしたかったんだろうな……気持ちは分かるし、素直に自分の実力が不足していると認められるところがドミニクのいいところだ……


 クラリスとエリーが本気で道を切り開こうと思えば楽に突破できただろう……しかし2人はドミニクの為に敢えてブレーキを踏んだのだと思う。


「みんな! 街の西側の連絡橋からエルハガンに入る! 南側の敵を出来るだけ倒しながら西に向かうからそのつもりで! 俺の後ろにカレン、ミーシャ、アリス、ミネルバ、ソフィア! その後ろに馬車2台!そして最後尾にクラリスとエリーの隊形でいく!」


 素早く陣形を敷くと、エルハガンの南西から北に進み

 その際東方面の魔物の集団に魔法を放つ。


「カレン! どでかい魔法を東側の魔物達に放ってくれ!」


 俺が言うとカレンは待ってましたと言わんばかりに


「フレアボム!」


 両手を空に掲げて大きな声で叫んだ。


 レッカが使ったフレアボムをいつの間にかカレンは習得していた。馬鹿でかい火球をエルハガンの南側にいるゴブリン達の中心に飛ばすと、火球が着弾した瞬間に火球が爆ぜ、着弾した周囲のゴブリン達は燃え尽き魔石に変わる。


 フレアボムの爆発後の炎上もかなり凄かった。


「マルス! あまり連発は出来ないからね!」


 カレンが言いながら次のフレアボムをまたゴブリン達に放つ。俺も負けじと進行方向の北側に向かってトルネードを放ちゴブリン達を蹴散らす。


 数が多すぎるので何匹か討ち漏らすが、後ろに控えているクラリスたちが討ち漏らしたゴブリン達を仕留める。


 ようやく西の連絡橋の所まで来たので、門を開けてもらうため、ドミニクとバロンが運転している馬車2台と、ソフィアとアリスを先行させて、門の所まで行ってもらい残りの俺たちが連絡橋でゴブリンを迎え撃つ。


 ドミニクたちの話がすぐに伝わったのか西側の街門が開いたので、連絡橋の入り口にトルネードを放ちゴブリン達が入って来られないようにしてようやく聖都エルハガンの街に着いた。


 街の中はかなり大慌てと言う感じだ。しかしパニックにはなっていない。


 冒険者や騎士団らしき者たちがいろいろな場所で作戦を話し合っている。別の場所では住民たちが建物の火を消しているし、けが人を運んだりしている。


「マルス! こっちに来てくれ!」


 ドミニクが先頭に立って俺たちを案内する。連れてこられたのは、大聖堂のようなでかい建物だった。


「ここに教皇様がいる。取り敢えずクエストの件を聞こう」


 まずは街の北と東の魔物を先に討伐したほうがいいと思ったが、考えたらあの量の魔物を討伐しきるのは一日二日では無理な話だ。耐えられると判断しての行動だと信じてドミニクについて行った。


 大聖堂の中に入ると外とは全く違った印象を受けた。静まり返っているのだ。魔物に攻められているのにこんなに静かというのも逆に不気味だ。


「どんなご用件ですか?」


 大聖堂の入り口で祭服を着た女性に声をかけられたのでドミニクが説明する。


「僕たちはリスター連合国からクエストを受けてエルハガンに来ました。依頼主の教皇様にお会いしたいのですがよろしいですか?」


 祭服を着た女が俺たちの事を見て


「分かりました。すぐに教皇様に取次ぎを致します。ついて来て下さい」


 広い大聖堂内を移動するとこの静かな空間で、一か所だけ怒鳴り声が響く部屋があった。俺たちはその怒鳴り声が聞こえる部屋に案内されて中に入ると


「だから何度も言っているだろう! 橋は絶対に落とさない! 魔物はここで止めるんだ! ここの橋を落として魔物が違う街に行ったらどうする!?」


 豪華な祭服の男が怒鳴ると冒険者風の男が


「このままではエルハガンは落ちます! 態勢を立て直すまでだけでもいいので橋を落としましょう!」


 かなり強めに言う。2人とも熱くなっているのか俺たちに気づいていないようだ。


「教皇様! お久しぶりでございます。本日戻ってまいりました」


 ドミニクはただ頭を下げただけの挨拶をした。片膝はつかないのか……? すると豪華な祭服を着た男が


「ドミニク! 良く戻ってきた!……ん? どうやってここに来た? 外は魔物で溢れかえっていただろう?」


 当然の疑問をドミニクに投げかけると教皇が冒険者風の男に命令する。


「ヒス! 明日また話す! 今日は下がれ!」


 渋々ヒスという男が退出するとドミニクが先ほどの教皇の質問に答える。


「西の魔物があまりいないほうから入ってきました。こちら、僕が所属する【暁】のクランマスターのマルスです。僕と同じ年で史上最年少のB級冒険者です」


 ドミニクが俺を紹介したので俺も挨拶をしようと片膝をつこうとしたら、ドミニクが俺の肩に手を置き、首を振った。教皇には片膝をつくなという事か。


「初めまして、教皇様。マルス・ブライアントと申します。クエストを受けてやって参りました。ただクエストを受けた時と大分状況が変わっているようなのでよろしければ説明をして頂けると嬉しいのですが……」


 俺が自己紹介をすると教皇が


「なんと! B級冒険者を連れてきてくれたのか! これはありがたい! リスター連合国のB級冒険者という事はマルスが一番強いという事になるな!」


 あれ? 他にB級冒険者いないのか? と思ったらドミニクが


「マルス。恥ずかしい話なんだがデアドア神聖王国の冒険者のレベルは少し低くてな……B級冒険者と言え、そこまで強くない者もいるんだ。先ほどのヒスという男もB級冒険者なのだが恐らく俺とあまり……いや俺よりも弱いだろう」


 少し沈んだ表情教えてくれる。


「いや……どこも同じような物だろう。バルクス王国も昔であればC級冒険者くらいの実力が今ではB級冒険者として活動しているからな……そんな俺もバルクス王国の冒険者だから教皇様の期待を裏切ってしまったが……」


 俺たちの話を聞いていた教皇が


「なんと……マルスはバルクス王国出身か……そしてその装備という事は……剣士か……」


 俺の言葉と装備でがっかりさせてしまったらしい。まぁこの局面は魔法使いが欲しいよな……範囲魔法で一網打尽にしてくれればと思うのが普通だろう。すると後ろから


「安心してください。私はカレン・リオネル。リスター連合国フレスバルド公爵家の()()で魔法使いです。それにマルスは剣聖と呼ばれておりますが、本当に強いのでご安心を」


 カレンは次女という部分を強調すると、


「おお! フレスバルド筆頭公爵家の何百年ぶりかの次女か! これは絶対に期待ができる!」


 カレンの話を聞いた教皇のテンションが上がった。

 もしかしてフレスバルド家には何かの呪いでもかかっているのだろうか? 長男と長女しか生まれない的な……


「ではさっきのマルスの問いに答えるとしよう。クエストを依頼した1か月くらい前まではこんなに魔物が多くはなかった。ここまで増えたのは2週間くらい前からだ。徐々に街の外での迎撃が厳しくなり1週間前からこのエルハガンで籠城をしている。

これでもデアドア神聖王国では要塞化されている方だからな。城塞都市イザークと比べると天と地の差があるが……本当は魔物達全てを掃討してほしいのだが、それは流石に無理だろうからリスター連合国からの増援や補給が出来るように西門か南門の安全を確保してもらいたい」


 まぁほぼ予想通りの返事だな。


「分かりました。西門と南門の安全を確保しながら魔物達の討伐をさせて頂きます。今日はもう遅いので明日から取りかかろうと思います。あと街や門、街壁などの改修もしてよろしいでしょうか?」


 教皇が頷き、俺たちは教皇の間から退出した。教皇の間から退出すると部屋の前に先ほど教皇と話していたヒスと呼ばれた男が待ち構えていた……なんか面倒な予感がする。


「おい! ドミニク! 話がある!」


 ヒスがドミニクに対して怒鳴った。


「なんだ? 忙しいから手短に頼む」


 ドミニクが冷静に言うと


「さっき、俺がお前より弱いと言っていたよな?」


 まさか部屋の外からドミニクの声が聞こえていたのか? なんという地獄耳だ……


「……ああ。申し訳ないが事実を述べさせてもらった」


 ドミニクの言葉にヒスは激昂し


「どちらが本当の剣聖か、今ここではっきりさせてやる! 剣を抜け! ドミニク!」


 ヒスがそう言って剣を抜くとドミニクが


「ヒス……申し訳ない……俺はもう剣聖と名乗ってはいないんだ……名乗る資格ももう無い。ヒスもデアドア神聖王国の外に出れば分かる」


 ドミニクの言葉にヒスは驚きのあまり声が出ないようだ。そしてドミニクが言葉を続ける。


「ヒス……今日はもう遅いから、また今度話そう。じゃあな」


 ドミニクがそう言うとヒスはその場で呆然として剣を鞘に納めた。ヒスは予想外に話の分かる奴だった。


 大聖堂を出て俺たちは宿を探すグループと街の北門と東門の様子を見てくるグループの二手に分かれた。


 宿を探すのは【創成】、北門と東門を見てくるのが俺たち【黎明】。街の西側から入ってきたから北と東の方の様子は分からなかったが、実際に来てみるとかなりの被害を受けていた。


 至る所でボヤが発生しており、道端には矢が突き刺さっている。街壁が低いから矢や魔法が飛んでくるのか……まずは街壁を高くしなくてはな……


 北門に向かっている時に俺がカレンに


「なぁカレン聞いていいか? フレスバルド公爵家の次女という言葉に教皇様が驚いていたがどういう意味なんだ?」


「あら? マルスは知らなかったっけ? フレスバルド家の子供のことを。じゃあ後で教えるわね。もう北門が見えてきちゃったし」


 少し寂しそうにカレンが答えた。

出来立てほやほやです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マルスくんが上位の為政者にでも、意思を曲げずステータス隠していること [気になる点] マルスくんが周りから舐められすぎてないか心配です [一言] 更新頑張ってください!楽しく読ませていただ…
[一言] フレスバルド公爵家に関しては、このお話の「引き」の部分のカレンのセリフがなんとなく暗示してる黒そうな雰囲気感じただけです。黒さの程度によって何種類か想像してますが、どれになるかは次回のお楽し…
[良い点] ヒスさんが、名前つながりでヒステリーなのかと思ったら、物分かりが良かった。 [気になる点] フレスバルド公爵家の次女って言うところは… 使えるのだけを残してってことなんだろうけど、他はどう…
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