第143話 それぞれのリスター祭
2030年11月6日
なぜかリーガン公爵に私とアリスが校長室に呼ばれた……校長室には握手会の時に見た美人先生が居た。もしかして私たちの美貌と才能を見抜いたのかしら?
「まずあなた達2人の名前を教えてください」
リーガン公爵が少し警戒しながら私とアリスに尋ねた。
「ソファアです」「アリスです」
と簡素に答えた。失敗したぁ……もっとしっかり挨拶するべきなのにそれにソファアって噛んでしまった……あまりにも緊張して頭が真っ白になってしまった……これではお姉ちゃんポイントが下がってしまう……
「ソフィアさん、アリスさん。なぜあなた達2人はあの場所にいたのですか? あそこは関係者専用の部屋だと思うのですが?」
や……もしかしてこれは私たちの事を不審者だと思っている?
「……エーディンさんに連れてきてもらいました」
「なぜエーディンがあなた達2人を連れてきたのですか? あなたはエーディンとどういう関係ですか?」
完全に疑われている……握手会での事、メイド喫茶での事、そしてドミニクとの事を話すとようやくリーガン公爵の警戒が解けたようだ。
「サーシャありがとう。もう戻っていいわ。あとは私たちだけで話すから」
リーガン公爵がそう言うと美人先生がリーガン公爵に頭を下げて部屋から出た。そう言えばこの人はドミニクにサーシャ先生って呼ばれていたな。
「マルスの試合を見てどう思いましたか? かっこよかったですか? それとも怖かったですか?」
怖い……? そうか……言われて初めて気が付いた。力を持つ人はいつも粗雑で暴力に訴えて物事を解決する。マルスもあの年で凄い力を持っている。
だけどマルスを初めて見た時から一度も怖いと思わなかった。たしかにずっとビンタしている時のマルスの表情を見ていなかったら怖いと思っていたかもしれない。
だけどあの時ビンタをするたびにどんどん悲しい顔になっていった。そんな人を怖いと思うわけが無い……私が思いを巡らせているとアリスが
「とてもカッコいいと思いました! 怖いなんて少しも思わなかったです!」
完全にマルスに惚れているアリスは躊躇う事なくリーガン公爵に言った。するとリーガン公爵が
「そうですか。それでは2人とも今の学校を卒業したら……」
リーガン公爵が私とアリスの目を見ながら話しているとリーガン公爵からなんかザワっとした……普通ではない視線を感じた。
なんだろう……この不快感……するとリーガン公爵がアリスを驚いた表情で見ている。
「アリスさん……9歳なの?」
え……? 名前しか言っていないのになぜ年齢が分かるの? しかしアリスはなんの疑問にも思わなかったのか
「はい。9歳です。来年受験なのでダメもとでこの学校を受けようと思います!」
アリスが意気込んで言うとリーガン公爵が、机の中からある物を取り出して私たちの前に置いた。鑑定水晶だ……どうやらリーガン公爵はどうやってかアリスの特殊能力が分かるようだ。だが絶対の確信はないらしい。鑑定水晶で鑑定されるのだけは阻止しなければ……
だがリーガン公爵は私たちに鑑定水晶を見せると、私たちを鑑定せずにすぐ机の中にしまった。
「間違えたわ。こっちを出そうと思ったのに……」
すぐにやられたと分かった。もう私の表情の変化でアリスが特殊能力を隠さないといけない存在というのを見抜いたのだろう……次にリーガン公爵が机の中から出したものは入学手続きの書類だった。書類と水晶を間違えるわけがない……白々しい……
「アリスさん。リスター帝国学校に入学することを許可します。もちろん試験は不要です。しっかりと考えてくださいね」
と言って入学手続きの書類を2部私に渡してきた。
「もちろんソフィアさんも歓迎しますよ。妹のアリスさんだけでは不安になる気持ちも分かりますから。だけど他校から転入する場合は必ず1年生からスタートとなります。リスター帝国学校は他の学校の卒業生が入ってくることも多いですからあまり年齢差は考えなくてもいいでしょう。
また書類にも書いてありますが5年制ですが1年生で卒業することも可能です。今年は1人だけ1年生で卒業する者がおります。他の学年にも何名か卒業する者がおります。1年生で卒業してもしっかりリスター帝国学校卒業生として卒業証書を渡しますので安心してください」
な、なんと……大陸で最難関のリスター帝国学校に入学できるって……だけどこの学校にはこのリーガン公爵がいる……適当に話を終わらせて早く帰ろう。
少しすると予想外のことが起きた。この部屋をノックする音がするとなんとマルスが入ってきた。
か、かっこいい……こんなカッコいい人を怖いと思うわけがない。
そしてこんなカッコいい人が自分の経歴を偽るわけがない。3歳で冒険者登録を疑った奴や最年少B級冒険者を疑った奴出てこい! 私が罵声の限りを尽くしてやるわ!
マルスの事を見ているとなんかまた緊張してきた……それにしてもこの細そうな体のどこにあんな力があるのだろうか? 今度マルスの体をじっくり見てみたい。そんなことを考えているとマルスと少し目が合った。
え……? なに? まず私のを見てから? な、何言っているのこんなところで……後で2人っきりになった時に言ってちょうだい。ごめんなさい。
マルスは私の言葉を察してくれたのかすぐにリーガン公爵の方に目を向けた。リーガン公爵はもう私たち2人がリスター帝国学校に入学するのが決まっているかの言い方だ。
マルスがリーガン公爵との話を終えると出て行ってしまった。もっといてくれても良かったのに……
その後も色々質問されたりして、結局その日は書類を2部持って帰った。
2030年11月11日
私たち【聖女隊】と【聖女の盾】は今デアドア神聖王国に帰っている最中だ。昨日までの楽しいリーガンでの思い出が頭をよぎる。アリスの豪運は凄かった。5日連続でメイド喫茶のチケットが当選したのだ。もしかしたらマルスが私に会いたいという感情も手伝ったのかもしれない。
昨日はとても濃密な時間を過ごせた。なんとまた女子が私たち2人しか当選していなくて、私の両隣にはマルスとドミニクがついた。ドミニクのことも忘れていないから大丈夫よ。2人して私の気を一生懸命引いている姿を見ると胸が熱くなってくる。
「飲み物何にする?」「どれ食べたい?」「また来てね」
こんなこと言われたらいくら私でもコロって落とされてしまうわ。
この学校に来ればマルスとドミニクのサンドイッチを堪能できると思うともう私の意志は固まっていた。
これはもしかしたらリーガン公爵の企みか? こうやってマルスとドミニクを与えておけば私がリスター帝国学校に入学すると思っているのか? ば、馬鹿にしないで! 私はどちらか1人でも来るわよ!
それに何よりクラリスと話をしてみたい。どうやればあれだけ綺麗に……可愛くなれるのか。きっともうスキンケアとかしているのだろう。あとあの顔の傷が一晩で治ったのも不思議だ。少しくらい跡になっていると思ったんだけど綺麗な肌に戻っていた。やはり綺麗な顔には傷は残らないというのは本当らしいわね。
「アリス、リスター帝国学校に入学するの?」
私は2人っきりの馬車の中でアリスに問いかけた。
「うん。絶対に行くよ。リスター帝国学校に」
アリスの答えに淀みがない。
「分かった。私もリスター帝国学校に行くわ。アリス1人では心配だもの……特にリーガン公爵には気を付けないと多分アリスが神聖魔法使いって事バレているわよ?」
私がアリスにそう言うとアリスは驚いていた。私がリスター帝国学校に行くことに驚いていたのか、それともリーガン公爵がアリスの神聖魔法に気づいている事に驚いたのかは分からなかった。
☆☆☆
「勝者! クロム・バルクス!」
闘技大会で優勝してもマルスという男には会えなかった。メイド喫茶の抽選にも当たらなかったし……セレアンス公爵の嫡男を倒した剣聖。てっきりマルスが3か月前に俺が負けた相手だと思ったのだが……
だがマルスという男は金髪だという。俺が負けた相手は金色の刺繍が入った白い制服を着ていたが黒目で黒髪……少し背が高くてどこか不気味な感じがした。
間違いなくこの学校の1年Sクラスの制服を着ていたのだが……Sクラスに黒髪自体が居ないそうだ……ではあの時の男はなぜこの学校の制服を着ていたのだろうか?
取り敢えずバルクス王国に戻ってまた修行をするか……焦らなくてもいつかまた会える時が来るだろう……その時は必ずリベンジする!
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