第128話 戦士の休息
【名前】-
【称号】-
【種族】デストレント
【脅威】B-
【状態】良好
【年齢】3歳
【レベル】10
【HP】142/142
【MP】42/52
【筋力】51
【敏捷】20
【魔力】42
【器用】10
【耐久】25
【運】1
【特殊能力】土魔法(Lv3/F)
キラーアントを踏み潰した木を鑑定してみた。この木が魔物なのか……よく見ると目と口がある……気持ち悪い……
蟻たちをどうやってか足止めしていた気がする、がMPが減っているから土魔法で何か足止めをしたのかもしれない。ちょっとどんなものかデストレントと戦うことにした。
デストレントの目の前に踊り出るとデストレントの口が動いた。するとぬかるんでいた足元の土が固まって足が固定されてしまった。これでキラーアントは動けなくなったのか……
動けなくなった俺に対してデストレントはキラーアントの時と同じように踏み潰そうとしてくる。俺は雷鳴剣と火精霊の剣を抜いてデストレントの足の裏? に突き刺した。
綺麗に足の裏の中心に剣が刺さり、そのまま火精霊の剣に火魔法をエンチャントして木の内部から発火させると、あっさり燃え広がりデストレントを倒すことは出来たが、火を見た魔物たちが一斉にここに集まってくる気配がした。
急いでその場から後退しサーチで周囲の魔物の気配を探ると、100匹近い魔物が先ほどのデストレントの近くに集まった。
なんか「ブーンブーン」ととても五月蠅い……翅のこすれる音のようだ……蜂かもしれない……
遠くから目を凝らして見るとやはり蜂だった。体長1m弱の蜂が100匹くらい飛んでいたのだ。俺は昔から蜂が大嫌いだ。1匹がこちらに飛んできたので鑑定してみると
【名前】-
【称号】-
【種族】キラービー
【脅威】C-
【状態】良好
【年齢】1歳
【レベル】3
【HP】30/30
【MP】3/3
【筋力】15
【敏捷】44
【魔力】1
【器用】15
【耐久】18
【運】1
ステータスはかなり低いが脅威度C-。おそらく毒持ちなのであろう。そして飛んでいるという点も厄介だ。敏捷値もそれなりに高いので攻撃を当てるのは難しそうだ……これで脅威度C-か……同じ脅威度であればオークジェネラルの方がよほど楽勝だろう
しばらく様子を見ていると別のキラーアントの群れが死の森へ向かって行く気配がした。近づいてみるとやはりキラーアントだ。50匹くらいはいる。そのキラーアントの群れが先ほど俺が倒したトレントの近くを通りかかると、キラービーが一斉にキラーアントに対して襲い掛かった。
空中から一方的に刺されるキラーアントはほぼ無抵抗で殺されてしまった。キラーアントの酸攻撃も上に対して飛ばすことができないらしい……
俺はキラーアントが全滅するとキラービーに気づかれないようにゆっくりとその場を後にし、砦に戻った。キラービーをどうするか……トルネードが一番いい気がするが……
砦に帰る途中にまた死の森へと向かうキラーアントの群れを見かけた。これからまたキラービーに殺されるのだろう。キラーアントはどこに行ってもやられる役なのか……そのうえ俺に巣穴まで破壊されるとなると、なんか可哀想になってきた。
かなり遠くまで行ったと思ったが砦まで20分くらいしかかからなかった。そして砦には大量のキラーアントの死骸が積まれている。南無……
砦に向かっているキラーアントを1匹も倒すことなく俺はみんなの元に戻った。増築された砦に俺が戻るとちょうどみんなが起きてくるタイミングだった。起きてこないのは1人遅く寝たであろうミネルバといつも通りのエリーだけであった。
俺はすぐにお風呂に入り体を清めてから起きているメンバーと話をした。
「今、死の森の近くまで行ってきた。死の森では蜂と木の魔物を確認したが、蜂の魔物はかなり手ごわそうだし、数も多い。木の魔物も対処を誤ればとんでもない事態を巻き起こす可能性がある。最初はメンバーを絞って挑みたい。
ブラム、バロン、ドミニクはここに残ってミネルバの護衛をしてくれないか? ミネルバはイザーク辺境伯の所で一生懸命鎖術を習っていた。俺が言うと誤解されてしまうかもしれないが、ミネルバは努力家でいい子だ。少し思い込みが激しいところはあるが……3人に頼んでいいか?」
俺がバロンの方に向かって問いかけるとバロンが無言で頷いてくれ、同様にブラムとドミニクも頷いてくれた。
「残ったメンバーは死の森へ俺と一緒に行ってもらうが隊形をいつもと変えようと思う。俺が先頭で次にクラリス、そしてクラリスの後ろにカレンでカレンの両隣にエリーとミーシャ、最後尾にライナーで頼む。
今回は本当に慎重に行く。まずは死の森に向かうキラーアントの群れを探すことから始める。キラーアントには生贄になってもらうつもりだ。あと絶対に日が暮れるまでには帰ってくるし、森の中にはまだ入らないつもりだ」
俺があまりにも慎重なので危険という事が伝わったらしい。取り敢えず今4時くらいで7時に出発という事にしてそれまでの時間は各々自由に過ごすことにした。
クラリス以外の全員外でキラーアントを狩る事になったらしい。俺は当分の間、蟻と戦いたくないと思っているので俺も待機。なんか久しぶりにクラリスと2人の時間って気がする……少し緊張する……するとクラリスの方から
「マルスは何するの?」
「うーん、実は何も決めていないんだ……ただ蟻だけは倒したくない気分で。クラリスは何かしたい事でもあるの? 俺に手伝えることがあれば手伝うけど?」
「ちょっとゆっくりしたいかな……最近ずっと戦ってばっかりで……」
確かにずっと戦ってばかりだな……11月はなるべくゆっくりしよう……そう思っているとクラリスは向かいの席から俺が座っている長椅子の隣に座った。
久しぶりに起きているクラリスをドアップで見た気がする。相変わらずいい匂いがする。それになんかドキドキしてきた……そして汗ばんで喉が渇いてきた……今まで一緒に居て好きとは思ってもこんな事なかったのに……目を合わしたいんだが目が合ったらどんなリアクションをしていいのか分からなくて怖い。俺の異変に気付いたクラリスが俺の手を握り
「ちょ……大丈夫? なんか顔が赤いけど熱でもあるんじゃない?」
俺の顔を覗き込んで俺の額に手を当てる。はい。完全にあなたにお熱です。
クラリスが俺の顔を覗き込んだときに目と目があった。恥ずかしかったがなんか胸のつかえが少し取れたし、目と目が合うだけで嬉しかった。だがクラリスはそんな俺の思いを知らずに
「やっぱり熱あるわよ! ……手も……大丈夫? 最近ちょっと頑張り過ぎたんじゃない? 今日は死の森に行くのを休みましょう。体調が万全じゃないと危ないような所そうだし」
クラリスは心配そうに俺の背中を触り始めた。きっと俺がどのくらい汗をかいているのか確認しているのであろう。さすがにこれ以上クラリスの手を汚すわけにはいかない。
「ありがとう。じゃあちょっとお風呂に入ってくるよ。もしもお風呂に入っても熱がありそうだったら今日は休むことにする」
俺はすぐにお風呂に入る事にした。少しクラリスと距離をあければこの高揚感はなくなるから大丈夫だと思ったが俺の事を心配しているクラリスはお風呂から上がった俺を心配して待ってくれているわけで……結局クラリスに押されて今日は休むことにした。
クラリスは何度か俺にヒールをかけてくれるが、神聖魔法では治らない事は分かっている。普段であれば一定以上の効果が出る魔法だが今回は全く効かない事にクラリスは慌てていた。
「ありがとうクラリス。だけど原因は分かっているから心配しなくて大丈夫だよ」
「原因分かってるって……やっぱり体調が悪いって事じゃない……」
心配そうに言ってきたので俺はドキドキしながら正直に
「多分……クラリスに恋をしているんだと思う。なんかここ最近のクラリスは今までとどこか違うようで……」
恥ずかしがりながら俺が言うとクラリスは嬉しそうに、そして恥ずかしそうに……しかしどこか怒ったというか悔しそうな表情をしながら俺に言った。
「あ、ありがとう……でも私の方が恋患いになるのが早かったようね……」
「そんな素振り見たことなかったけど……?」
俺が言うとクラリスが
「当然よ……だってマルスが15時間寝ている時になったんだもん……寝ているマルスをずっと見ていたら私もドキドキしちゃって……」
それは俺の事を心配なドキドキも入っているのでは? ある意味吊り橋効果かも……だがクラリスが最近やたら容姿に磨きがかかったのもこれで納得できた。
「そ、そうかごめん? そしてありがとう……で……どうやって治した?」
「え……? ひ、秘密よ……そんなの言えないわ……」
うん? 真っ白な顔が真っ赤になっているぞ? もしかして……これは……
「そ、そうか……分かった。でもこのままでは支障が出るから今日は近くにいてくれると助かる」
結局ほぼ夕方までずっとクラリスと一緒に過ごした。ドキドキは治らなかったが慣れることは出来た。途中でミネルバが起き、バロンたちと合流してアント狩りデートを楽しんでいた。
どうやらバロンとミネルバの仲も戻ったらしい。夜ご飯も食べて明日の朝、死の森に行くと決めて寝ることにした。
俺も風呂に入ってから寝ようとすると俺のベッドには夜からずっと寝ていた人物がまだ寝ていた……










