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7章 少年期 ~リスター帝国学校 1年生 イザーク領編~

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第115話 水は貴重

2030年9月9日 15時ごろ


 俺たち3人は6台の馬車で騎士団がいる死の森に向かった。


 正確には騎士団たちは死の森にいるのではなく、死の森の前に広がる草原に布陣しているとの事だ。


 2つの騎士団合わせて約400人分の保存食を届けるのだ。これが何日分あるのかは分からないが……


 そしてイザークから騎士団の所まで大体1日で着くらしい。1日と言うのは8時に出発して17時頃到着するという事だ。


 もしかしたら俺が馬たちにヒールをかけ続ければ、今日中に着くかもしれない距離だ。


 ただ不安点もある。それは夜の進軍だ。馬は夜道を苦にはしない。夜目がきくからだ。俺も天眼の効果で夜目がきく。


 ただカレンやブラムはともかく御者にはつらいだろう。まぁそれでも届けないと騎士団が戻ってきてしまい、イザークが危ないのだから仕方ない。


 どんどん日も落ちてきて辺りは真っ暗になった。リーガンであれば魔石による街灯が点くのだがここにはそんなものはない。


 俺はサーチで最大限周囲を警戒し、複数のファイアを前方に浮かべた。


 御者が驚くが俺が説明すると安心してくれ、サーチで魔物の気配を捕らえると問答無用でウィンドカッターで倒す。馬がへばりそうになると御者に少し運転を代わってもらい、バレないように馬にヒールをかける。思ったよりも消費MPが多い……まぁそれでも着くまでに半分は残っている計算だからいいのだが……


 カレンも自らファイアを使って周りを照らし始めた。カレンの場合はファイアの制御の練習も兼ねてだろう。


 以前紹介したが、今のカレンのスタイルは最初にファイアをカレンの周囲に発現させておいてから鞭で攻撃する。敵が鞭を回避したり受け止めてカレンに突っ込んできた時にあらかじめカレンの周囲に浮かんでいるファイアを敵にぶつけるスタイルだ。


 これはかなり器用さを求められる。まずファイアをその場に停滞させるのも器用さを求められるし神経を使うのだ。その状態で鞭を振わないといけないので、実はカレンは【黎明】の中でもかなり難しい事にトライをしているのだ。


 魔物を倒しながら進軍しているとようやく騎士団が布陣している草原に着いた。


 かなり大きく布陣をしているようで俺たちと同じく火で明かりを灯している。


 まぁかなり明るくてこれでは寝るのに大変な光量な気がするが、MPを枯渇させれば問題ないという事だろう。


 そして大量の天幕が張ってあった。きっとみんな天幕の中で寝るのであろう。


「カレン、ここはカレンに任せてもいいか? 最初からカレンが行けば余計な問題や混乱は起きないと思う」


 俺がそう言うとカレンも「分かった」と言って騎士団員に話しかけに行く。


「お疲れ様。私はカレン・リオネルよ。補給物資を届けに来たわ。烈火騎士団長かイザーク辺境伯はいるかしら?」


 カレンに話しかけられた団員は驚いたようで


「ふぁ、ふぁい! 今すぐにイザーク辺境伯を呼んでまいります」


 と言って一番大きい天幕の所に行くとすぐに黒色の鎧を着た男を連れてきた。


 黒色の男はカレンの前に来るとすぐに片膝をつき


「お久しぶりです。カレンお嬢様。この度はこのような所までお越し頂き誠にありがとうございます」


 男はそう言ってカレンの顔を見上げる。俺は今だったらその男を鑑定しても怒られないと思い鑑定した。



【名前】ギース・ヴァイス

【称号】鎖王・アント虐殺者

【身分】人族・イザーク辺境伯家当主

【状態】良好

【年齢】39歳

【レベル】58

【HP】185/185

【MP】55/55

【筋力】69

【敏捷】60

【魔力】5

【器用】75

【耐久】70

【運】1

【特殊能力】剣術(Lv7/C)

【特殊能力】鎖術(Lv8/C)


【装備】アダマンタイトの剣

【装備】導きの鎖

【装備】アダマンタイトの鎧

【装備】アダマンタイトの足当て

【装備】守護の指輪



 これはかなり強い。リスター連合国で魔法を使えない強い人は初めて見た。装備もアダマンタイトシリーズで揃っている。


 今まで見てきた騎士団長でこれだけ強い人はいなかったな。流石に死の森を監視し続けているだけの事はある。


 アダマンタイトシリーズはミスリル銀と正反対で魔力を通さない性質を持っている。魔法を使わないイザーク辺境伯にとっては、相手の魔法を通しにくくするアダマンタイトシリーズは相性がいいだろう。


 カレンは片膝をついているイザーク辺境伯に対し


「久しぶりです。イザーク卿。堅苦しい挨拶は抜きにして補給を始めましょう。まずは何が欲しいですか?」


 カレンが珍しく敬語を使っている。まぁ尊敬語というよりは丁寧語だが……


「ありがとうございます。それではまず酒……いえ、水の補給をお願いします。飲み水がもう無くなってきており、すでに装備を清潔に保てなくなっております。最優先で酒……ではなく水を」


 なんだこの男……リーガン公爵の言ったとおりの男だ。本音と建前の両方を言ってくるなんて……するとカレンが笑いをこらえられなくなって腹を抱えながら


「ふふふ……相変わらずですね……お酒も持ってきております。だけど急に用意したものですから期待はしないでください。水は私たちのパーティリーダーでクランマスターのこちらのマルスが水魔法で用意します」


 カレンが俺の方を見てさりげなく俺の後ろに下がる。その様子を見てイザーク辺境伯がとても驚いた顔をした。


「初めまして、イザーク辺境伯。僕はリスター帝国学校1年Sクラス序列1位のマルス・ブライアントです。水魔法で水を用意したいのですが、どこに水を出せばよろしいでしょうか? もしなければ僕の方で用意しますが?」


 するとイザーク辺境伯が


「おお。噂には聞いているよ。セレアンス公爵の長男に勝ったという剣聖という名の武聖だね。水魔法で水を用意すると言ったが400人分の水だから最低でも……4トンの水は欲しいのだが……大丈夫かい? そこに1トン入る水槽が8つあるからそのうちの4つを満タンにして欲しい。それとは別に今使っている飲み水用と装備品洗浄用の水槽も満タンにして欲しいのだが……」


 イザーク辺境伯は優しい面持ちでだけどどこか諦めた表情で俺に問いかけてきた。


 俺の水魔法では1リットルの水を出すのにMPを5消費する。才能が低いからかなり燃費が悪いのかもしれない。


 4トンの水を用意するという事は4000リットル……MPに換算すると20000必要という事か……魔力枯渇3回で補える。2日でなんとか出来るかもしれない。


「はい! 頑張ってみます! どこから水を溜めればよろしいでしょうか?」


 俺は飲み水と装備を洗浄する水を溜めているところに案内されたのでそこに水を補給し始めた。飲み水の方は底が見えており、装備を洗浄する方の馬鹿でかい水槽はすでに空だった。


 俺は残っていたMPを100だけ残し400リットルずつ飲み水と装備用の水槽に注いだ。


 その間にカレンは騎士団員にお酒と保存食をふるまっていた。フレスバルド公爵の次女から直々にお酌してもらえるとあって、夜中でもイザーク騎士団のメンバー全員大喜びだった。カレンも1人1人に声をかけて丁寧にお酌をしていた。普段のカレンからは考えられない姿だ。


 ちなみにお酒はイリーナから用意された馬車には載っていなかったので、イザークでお酒を買いあさって、俺たちが乗ってきた馬車に詰め込んでいた。


 そしてなぜブラムをここに連れてきたかと言うと、ブラムの空間魔法の中にはリーガン公爵から渡された高級なワインが50本ほど収納されていた。


 ブラムはイザーク辺境伯にリーガン公爵からですと言ってワインを10本渡すとイザーク辺境伯は大いに喜んでいた。


 俺はMPが残り100になるとカレンにもうMP枯渇するから先に寝るとだけ伝えて、給水したあとすぐに寝た。


 まだまだ水は足りないが急場は凌げたと思いたい。


2030年9月10日


 俺が起きるともう既に明るくなり始めていた。


 東雲といった所だろうか……俺はいつの間にかベッドの上で寝かされていた。そして同じベッドにはカレンも寝ている。恐らくカレンが強権を発動してこうしてくれたのであろう。


 本当は朝風呂、朝シャンをしたいのだが今は水不足だ。ここでそんなことをしたらカレンの顔に泥を塗ってしまう。


 飲み水と装備洗浄用の水槽に行くと飲み水は残っていたが、装備洗浄用の水槽が底をついていた。俺は飲み水に600リットル、装備洗浄用の水槽を満タンにしてもう一度寝たが、これだけの水を入れるのにも大分時間がかかった。


 また目が覚めるともう既にみんな活動していた。なんか俺だけ寝坊したようで悪い気がする。


 俺は近くにいたカレンを見つけるとカレンを呼んだ。


「カレン、おはよう。お風呂に入りたくないかい?」


「おはよう、マルス。当然お風呂に入りたいわよ。でもそんな事今言ったらみんなの不興を買ってしまうわ」


 流石にカレンもしっかり考えているようだ。


「だから先に騎士団員のお風呂の用意をしようかと思う。俺たちが入っても怒られないようにね。だからカレンにも協力してほしいんだ」


 俺はすでに飲み水と装備洗浄用の水槽があまり減っていないことを確認していた。今ここに居るイザーク騎士団はもうあまり使わない。


 後は身を清めることが出来ればと思ったのだが、1人お風呂に入ると200リットルの水を使う。200人いれば40トンの水が必要になってしまう。


 そこで俺は雨を降らせようと思った。


 温めようとすると余計なMPを消費してしまうから、そこをカレンにお願いしようとしているのだ。カレンは俺の提案に乗ってくれたので早速イザーク辺境伯の所に行った。するとイザーク辺境伯が開口一番


「ありがとう! マルス! まさかこれだけの短期間でこんなにもの水を出せるなんて思ってもみなかった! それに酒も最高だ。カレンお嬢様も兵たちを労って頂き本当にありがとうございます」


 とても喜んでくれていた。俺も


「おはようございます。イザーク辺境伯。これから少し試してみたいことがあるのですが、大浴場に100人ずつ来てもらえますか? 暖かい雨を降らそうかと思いますので、少しでも水浴びのような事が出来ればと……ただ初めての事ですので満足のいく結果になるかは分かりませんが……」


 俺がそう言うとイザーク辺境伯が驚いた顔で


「まだMPがあるのか? 恐らく2トン近くはもう出していると思うのだが? もしも出来るのであれば、その提案は我々にとって非常にありがたいが……」


 取り敢えず出来るかできないか分からないがやってみることにすると、騎士団員100人が大浴場に裸で来た。 大浴場と言っても野ざらしの所に雑な土魔法で作ったとても大きな浴槽だ。


 俺は大浴場から少し離れたところから、両手を天に向け、そして大浴場の方に手を斜めに傾けた。カレンはというと大浴場に背を向けて俺の手だけを見るようにしていた。


 俺は最大出力で水を空に向けて放出し、カレンはその水を少し熱めの温度に調整する。


 恐らくカレンはすぐにMP枯渇してしまうと思うが、兵士たちにとっては公爵の息女がここまでしてくれたと思うと必ず兵士たちの士気があがるだろうと俺は計算していた。


 当然作戦は大成功だった。そして騎士団員たちも立派だった。


 久しぶりの水浴びだというのに誰も長い間その場に居ようとせず、体がさっぱりしたらすぐに大浴場の外に出てまだ浴びていない騎士団員たちと素早く入れ替わっていた。


 おかげで俺も効率よくMPを使う事が出来てカレンがMP枯渇して寝てしまっても、俺のMPだけで全員の汗を流すことは出来た。


 そして俺も残ったMPを全て水に変換して本日3度目のMP欠乏症による睡眠に入った。

カレンをお風呂に入れるために騎士団員たちに雨を降らしたのに

結局カレンはMP欠乏症でねてしまうなんて・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] ファイアーは鞭にはつきもの。 [気になる点] 鎖王か…いつかこの称号も奪われるのかな? [一言] 女性が風王持ってても風女王にならなかったところをみると、女性が鞭王とか鎖王を取っても、鞭女…
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