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6章 少年期 ~リスター帝国学校 1年生 夏休み?編~

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第100話 義姉

2030年8月3日


 ようやく領都メサリウスに着いた。


 俺たちはまず宿屋に向かってから眼鏡っ子先輩の父であるメサリウス伯爵に挨拶をしようと言う事になった。


 まぁ突然の事だからすぐに会えないと思うのだが……



 しかしすぐに会えなくても良かった。俺はこの街に滞在しているダメーズから情報を聞きたかったからだ。


 宿屋について宿泊の手配をしようとすると店の主人が


「おい、その制服リスター帝国学校の学生だよな? 金色の刺繍……聞いたことないが、4、5年生か? それに男1人に女4人って……」


「はい僕たちはリスター帝国学校の者です。全員1年生です。メンバーの男女比率は……まぁこうなってしまったのは偶然でして……」


「い、1年か……全員? 今年からクラスの刺繍変わったのか? どう考えても、お前と後ろの女の子2人は15歳前後に見えるが……」


「いえ、変わっておりません。1年のSクラスは金色の刺繍です」


「Sクラス! そうか! 早くメサリウス伯爵の所へ! 部屋は最上級の所を用意しておくし、荷物は運んでおく!」


「僕たちはまだ何もアポを取っていないのですが……」


「大丈夫! ここで問答なんかしていたら俺が罪に問われちまう」


 そう言われて俺たちはメサリウス伯爵の屋敷の前に連れていかれた。


 メサリウス伯爵と会う前にダメーズと会いたかったが仕方ない……


 屋敷の前に俺たちが着くと屋敷を警備していた者たちが いきなり俺たちに頭を下げて、「どうぞ中へ」と言って 俺たちをでかい屋敷の中に案内してくれた。



 どうなっている? 俺たちの素性は知らないはずなのに……まぁこの制服を着ているから身分は間違いないという事か……


 俺たちは通された部屋の中に入るとそこには【紅蓮】のメンバーが居た。


 どうやら眼鏡っ子先輩の部屋らしい。


 どこか部屋の雰囲気が女の子っぽい気がする。



 そしてその部屋に1人だけベッドに横たわっており、その横たわっている人の手をアイクが握っている。アイクの周りにそのほかのメンバーがおり、ベッドに横たわっていたのは眼鏡っ子先輩だった。


 部屋に入った俺をアイクが見つけると


「マルス! よく来てくれた!」


 そう言って俺たちを歓迎してくれた。


 しかし他の【紅蓮】のメンバーはどこか悲壮感が漂っている。


「すまないが、お前たちは少しだけ外に出ていてくれないか? そして俺たちの事情をエリーとカレンとミーシャに伝えてくれ。クラリスはここに残って俺の話を聞いてほしい」


 アイクがそう言うと【紅蓮】のメンバーはエリー、ミーシャ、カレンを連れて部屋の外に出て行った。


「どうかしたのですか? アイク兄?」


 俺がそう言うとアイクは俺とクラリスの手を引っ張って眼鏡っ子先輩が横たわっているベッドの脇に連れてきた。眼鏡っ子先輩は眠っているようだ。


「これを見てくれ」


 アイク兄がそう言って眼鏡っ子先輩がかけていた布団をはぎ取った。


 なんと眼鏡っ子先輩は上下とも真っ白な下着姿だった。


 がそれよりも目を引く箇所があった。右腕が無くなっていたのだ。


 クラリスが顔を覆って目を背ける。


「こ、これはどうしたのですか?」


「一昨日謎の集団に襲われてな……1人とんでもない手練れが居て何もできなかった……そしてその時エーデの右手がそいつの毒が塗られている短剣に斬られてな……全身に回る前に右腕を斬り飛ばした」


 アイクが悔しそうに俺にそう言うと、アイクは自分の膝を叩いた。


「全く歯が立たなかった……俺はこんなにも弱かったんだな……」


「アイク兄。同じく一昨日僕たちも同じ集団と思われる奴らに襲われました。短剣使いのガスターという奴はA級冒険者で僕も気配すら察知できず、完敗でした。奴らは【幻影】というクランらしいですよ」


「そうか……マルスですら勝てない相手か……マルス、クラリス。お前たちには言っておく。俺はエーデと結婚する。お父様は猛反対しているがな。だがこうしてしまったのは俺の責任だ。まぁこうなる前からエーデと結婚すると決めていたのだが、俺はエーデのこの右腕の傷を見続けて自分を戒めたい」


「アイク兄……それは無理です」


「何? もしかしてお前エーデを5人目と思っているのか!?」


 アイクが激昂して俺に言うと俺は


「いいえ。眼鏡っ子先輩の右腕は絶対に治します。だからアイク兄は眼鏡っ子先輩の右腕の傷を今後見ることは出来ません」


 俺の言葉にアイクが


「そ、そんなことが出来るわけが無い……部位欠損を治す事なんて聞いたことがない……」


「もちろん僕1人ではできません。ただクラリスが居ますから。クラリス一緒に手伝ってくれないか? 僕たちの義姉さんの為に」


「もちろんよ。何日かかるか分からないけどやるわ!」


「眼鏡っ子先輩の右腕はどこですか?」


 俺がそう聞くとアイクがベッドの下から大切に保管していた眼鏡っ子先輩の右腕を取り出した。どうやら冷凍していたらしい。そして毒に侵されているはずなのに腐食とかしておらず綺麗だ。あれ? もしかして毒に侵されていない?


 早速俺とクラリスでヒールをかけて右腕を治しにかかる。エリーの呪いの解呪の時とは全く違う。だけど俺には勝算があった。それはクラリスのMPだ。


 4年前よりもMPが倍以上に増えている。


 そして聖女という称号もあるしね。


 俺たちが眼鏡っ子先輩に何度も何十回も何百回もヒールをかけている間、アイクにはこのメサリウス領で起きていることを聞いた。


 【紅蓮】がもともと受けていたクエストは新しくメサリウス領に出現した迷宮の探索だったらしい。だが1週間前くらいからメサリウス領の出入口に賊が現れるようになったから迷宮探索をやめて賊退治をすることにしたらしい。


 メサリウス伯爵は騎士団を連れてバルクス王国を止めにかかっているからここには居ない。そして長男も随行しているらしい。まだメサリウス伯爵と長男には眼鏡っ子先輩の右腕が無くなったことをアイクたちからは知らせていないらしい。


「マルス! なんか腕が繋がってきた気がするわ!」


 クラリスが興奮気味に言った。確かに眼鏡っ子先輩の右腕の血色が少しだが良くなってきた気がする。解凍されただけといえばそれまでだが……そして何より完全に腕がくっついたように見える。


「よし! このままヒールをかけ続ければ……」


 俺も興奮して少し大きな声をだすと、眼鏡っ子先輩が起きてしまったようだ。


「う……あ、あなた達……どうしてここへ?」


 眼鏡っ子先輩が俺とクラリスを視界にとらえると話しかけてきたがすぐに


「痛ぁぁぁああああいいい!!!」


 と鏡っ子先輩が叫んだ。部屋の外から【紅蓮】のメンバーが入ってこようとするが、アイクが「入ってくるな!」と言って【紅蓮】のメンバーを入らせなかった。


 ただずっと眼鏡っ子先輩が痛みに悶えている。


 アイクが眼鏡っ子先輩の所にやっきて


「大丈夫だ! 俺が付いている! エーデどこが痛い?」


「右が……右腕が、右手が痛い! 冷たいし熱い!」


「ん? 右腕の感覚はあるのか?」


 アイクがそう言って眼鏡っ子先輩の右手を握る。


 すると眼鏡っ子先輩も驚いたように


「いた……い? 痛い! 右腕が痛いし右手も痛いよ! 無いはずの右腕の感覚がある! アイクの手のぬくもりが伝わってくるよ!」


 眼鏡っ子先輩はそう言いながら自分の右腕の方を見る。すると眼鏡っ子先輩は自分の右腕が繋がっていることに気が付いたようだ。


「嘘? 右腕がある……右手もある……どうして?」


 そう言って眼鏡っ子先輩がアイクを見つめる。

 ちょうどその時クラリスが


「ごめん。マルス私もうMPが無くなるわ。このまま枯渇するから後はよろしくね。エーデ先輩。また後で」


 クラリスはそう言ってエーデ先輩の隣で魔力欠乏症のせいか目を閉じた。


 それを見たアイクが眼鏡っ子先輩に


「ごめんな……エーデ……痛い思いをさせて……だがもう大丈夫だ。マルスたちがお前を治してくれる。このことは絶対に秘密にしてくれ。頼む!」


 アイクがそう言って眼鏡っ子先輩に言うと


「も、もちろんよ……だけどどうやって右腕をくっつけたのか分からないわ。神聖魔法でも無理なのに……」


 眼鏡っ子先輩の言葉に俺とアイクは顔を見合わせる。


 そうか!神聖魔法を使っても部位欠損は治らないというのが常識だから、俺とクラリスの事はバレていないのか……


 俺はあえて眼鏡っ子先輩の質問に答えず先ほどのアイクとの会話の続きをした。


「先ほど話した幻影というクランはもうメサリウス領に手は出してこないそうです。これはクランマスターのガスター本人から言ってきたので、間違いないと思います。多分僕たちが襲われたのはSクラスで通常の制服の刺繍ではないからガスター自ら攻撃を仕掛けてきた可能性があります。ガスター自身もクエストの依頼人に騙されたと言っていましたから」


「そうか……分かった。俺たちはメサリウス伯爵にエーデの無事を伝えようと思う。俺たちが伝えなくてもメサリウス伯爵たちにエーデの右腕の情報が伝わっているだろう……エーデの事を心配して退却してしまうかも知れないからな。明日にでもここを発つとしよう」


 アイクも俺の意図に気づいたらしく返答してくれた。


 すると眼鏡っ子先輩が


「もう一回聞いていい? なんでマルス君たちがここに居るの?」


 俺はサンマリーナ侯爵領の出来事とダメーズという男がメサリウス伯爵領がやばいという事を知らせてくれたという事を言った。すると眼鏡っ子先輩がダメーズの容姿を聞いてきたので答えると


「ごめんなさい! 私はダメーズと言う人がとても怪しく見えてバルクス王国のスパイだと思い、監禁しちゃった! 恩人の1人なのにとんでもない事をしてしまって……」


 眼鏡っ子先輩が狼狽えていたので俺が


「あ、いいですよ……多分……あの人どう見ても怪しいし、前科がいろいろあるので……」


 俺はダメーズの事を一通り話すと、アイクも眼鏡っ子先輩もダメーズのやってきた事に対して憤慨していた。特にクラリスを殺そうとした事については本当に怒っていた。


「まぁサーシャ先生の奴隷だったら一応は信頼できるかなぁ……」


 ダメーズを信用するというよりもサーシャを信用するという事でダメーズを後で解放することになった。


「それでお前たち【黎明】はこれからどうするんだ? 俺としては手伝ってほしいんだが……」


「はい。僕も何か手伝えればと思ってきました。手伝えることがあれば手伝います。何をしたらいいですか? まずは眼鏡っ子先輩の右腕だと思うのですが……」


 俺の問いに眼鏡っ子先輩が


「ありがとう。もう大丈夫だと思う。右腕の感覚はだいぶ戻ったわ。できれば新しくできた迷宮内のモンスターを間引いてくれないかな? 結構難易度は高くて、中級レベルはあると思うの……」


「分かりました。それでは僕たちは迷宮の間引きをします。何かその迷宮の情報とかありましたら、教えて欲しいのですが……」


 俺がそう言うとアイクが


「分かった。みんなでご飯を食べながら話すとしよう。クラリスはエーデのベッドで寝かせていても大丈夫かな? ちなみにこの屋敷は安全だから護衛とかはいらない。あといくらマルスとはいえ、これ以上エーデの裸同然の姿を見られたくないしな」


 エーデは自分が下着しか着ていない事に気づくと慌てて布団をかぶる。


「もしかしてマルス君が私を脱がせたの? 変なことはしてないよね?」


 と頬を膨らませながら聞いてくる。するとアイクが


「エーデを脱がせたのは俺だ。神に誓おう。何もやましいことはしていない」


「あとどさくさに紛れてマルス君には見せないけど俺には見せても構わないと言っていたように聞こえるけど?」


 眼鏡っ子先輩がアイクにそう言うとアイクが


「当然だろ? 結婚相手には見られてはまずいか?……いや……まずいか……そう言う事は結婚してからか……」


「え……結婚?」


 眼鏡っ子先輩がアイクの言った言葉にキョトンとしている。


「ああ。エーデ俺と結婚してくれ。俺はお前が好きだ」


「だ……ダメよ……アイクのお父様は反対しているでしょ?」


「別に家は関係ないさ。それとも俺ではダメか?」


「そんなことはない! 私だってずっとアイクの事が好きだったわ! だけど……」


 するとアイクが急に眼鏡っ子先輩とキスをすると


「頷いてくれるまで何度もいうさ。エーデ、俺と結婚してくれ」


「ありがとう……不束者ですがよろしくお願いします」


 アイクの言葉に眼鏡っ子先輩が泣いて答えると布団から出て、立っているアイクに眼鏡っ子先輩がキスをした。もちろんアイクの息子も立っていたけど残念ながらそっちにではないよ?


 それに俺の存在を忘れてないかな?なんか今にも2人が開戦しそうだったので


「お2人ともおめでとうございます。アイク兄、僕はこの辺で失礼します。宿に戻りますので落ち着いたら呼んでください。義姉さん。また後で右腕の様子を見させてください。これからもよろしくお願いします」


 俺がそう言って頭を下げると2人は気恥ずかしそうに頷いた。


 そして俺が部屋から出て行こうとすると魔力欠乏症で寝ていたはずのクラリスが俺の後を追いかけて一緒に部屋から出た。


記念すべき100話。

ここまで書くとは思ってもみませんでした。

なんとなくダラダラ書くつもりだったのですが

皆さんに読んで頂いていると思うと使命感がw


読者の方々には感謝しかないです。

ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ガスター自身もクエストの依頼人に騙されたと言っていましたから ギルドの仲介で伯爵領に攻撃を仕掛けるなら、所属する国家とギルドの全面戦争にもなりかねないと思うが、どうなっているんだろ…
[気になる点] サーシャとかいう娘を拉致されるような耳長に一切の信用なんて無いわ
[良い点] 取り敢えずアイク、眼鏡っ娘おめでとう!
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