ビルディング迷宮へ
「また行くのか?」
ダンジョンに潜る準備を進めている光夜に、同じパーティの真逆がぼやくように言った。
「ああ……」
光夜は短く答える。
もはや恒例となったやりとりだ。
「光夜は頑固者。そんなのとっくにわかってた。それなのにずっと説得を諦めないおバカな真逆もたいがい」
そんな二人を、まるで他人事のように評価している花鶏も、同じパーティメンバーである。
光夜は、仕事としてというよりも、ほぼボランティアのようにダンジョンに潜ることがあり、そのことに、真逆は不安を覚えていたのだ。
探索者の多くが、頼まれても潜りたくないと口を揃えて言う場所がダンジョンにはある。
それが、ビルディング迷宮だ。
高層ビルがダンジョンに呑まれ、そのままダンジョン化したもので、内部はもともとの構造から様変わりして、迷宮の名にふさわしい、迷路のような状態になっている。
内部に大勢の人間を閉じ込めたまま、多くの高層建造物が迷宮化してしまった。
内部にいたはずの家族や親しい相手の安否を知りたい、せめて遺体なりとも見つけて欲しい。
探索者の組合のような組織である探索者協会には、日々そんな依頼が届いている。
何年も、出されたまま、取り下げられることなく残り続けている依頼もあった。
探索者が迷宮を避けるのは、普通のダンジョンよりも危険が大きいのに、旨味がほとんどないからだ。
迷宮には、ダンジョン特有の資源はほぼ存在しないので、得られるものがあるとしたら内部に侵入して棲み着いたモンスターの魔石などの素材ぐらいだろう。
内部は通路や小部屋が多いため、不意打ちを受けることも多く、探索も難しい。
誰だって自分の命が大事なものだ。
探索者達が避けるのも当然の話である。
そんな凶悪なダンジョンに、探索者になって以降ずっと挑み続けているのが光夜であった。
そしてそんな光夜を諌めつつも、毎回付き合っているのが、仲間のパーティメンバーだ。
生田真逆は、光夜とは高校時代からの付き合いの、親友と言える男だった。
おちゃらけた言動を取ることが多いが、それは表面上だけであることを光夜は知っている。
その本質は、真摯で優しい男なのだ。
だからずっと光夜を心配して、仲間として共に戦い続けている。
もう一人、灰島花鶏と光夜が知り合ったのは真逆に比べるとごく最近だ。
具体的に言うと五年ほど前である。
花鶏は、もともとは、依頼人だった。
大事な兄がダンジョンに呑まれてしまい、その救出、無理なら兄がその場に存在した証拠を見つけて欲しい。
そういう依頼だ。
そして、光夜が花鶏の兄の遺品を見つけ出して届けた。
そのときはただ泣いていた少女だったが、一年ほどして探索者免許を取得して、光夜達のパーティに押しかけ加入したのだ。
光夜は未だに花鶏が何を考えているのかよくわからないのだが、なぜか真逆とは気が合うようで、二人でよく漫才もどきの掛け合いをしていた。
「とにかく、仕事としてのダンジョン探索以外は俺の自由だ。好きにさせてくれ」
「はいはい」
「出た。俺の自由」
ビルディング迷宮の探索ばかりをやっていては資金がすぐに底をつく、そのため、光夜達は週に五日間は通常のダンジョンに潜って資源採集やモンスター退治を行う。
残りの二日は休日としているのだが、その休日に光夜はビルディング迷宮に潜るのだ。
そして、なぜか仲間達も当然のように付いて行く。
建前上の休みが全く意味を成していないのだが、それが光夜達のパーティの在り方だった。
本人達はそれで納得しているので、外から指摘がない限りは、自分達の行動のおかしさに気づかない。
光夜達が死にたがりと呼ばれる理由の一つでもあった。
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