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【初期版】三界の書 ―銀閃の聖騎士と緋剣使いの少年―  作者: 阿季
第5話 四つ目の社にて 前編
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《5》キサラの返事

 何かを考え込んでいたらしいキサラが(ようや)く口を開いた。


「……それは」

「……うん」


 こちらの言葉の真意に気づいてキサラにも反対されてしまうだろうか。イオが内心身構えると、


「私でいいのか?」

「え? うん」

「リルやノイエスでも可能だとは思うが」

「この話は今のように二人きりでしたいけど、リルさんとはこうして話すって事ができそうになくて」


 イオも考えなかったわけではない。むしろ初対面の人たちの中ではリルが一番勘付かれにくそうだとは思ったのだ(失礼だとは思いながらも)。

 ただ、リルはならず者を倒した後リュウキと手分けして社内を確認しに行ってしまう。リュウキに気づかれずにリルに声を掛けられないかとイオは密かに様子を窺ってはいた。しかしうまくいかず、こうして最後の社に来ていた。


「ノイエスくんもそうなんだけど……あと、渡したらなんか分解されそうで」

「…………」


 <結界柱の社>の奥の転移陣に興味津々だったノイエスである。神殿の奥に入るための鍵だと知ったら意気揚々と調べ出すに違いない。


「じゃあお願いしていい?」


 イオはやや焦りながら改めて蒼玉の首飾りを差し出す。こうしている間にも三人が――特にリュウキが戻ってこないか気にしていた。

 しかしキサラは尚も受け取ろうとしない。そんな様子を見たイオはある事に思い至った。


「――あ、いきなりこんな重要なもの渡されたら困るよね」


 イオは苦笑しながら視線を落とした。

 もしかして迷惑に思っているのかもしれない。リュウキ達と一緒にいるので当たり前に引き受けてくれると思ってしまっていたことにイオは気づいた。

 仮に自分が捕まって<水鏡の鍵(カトスヴァ)>を持っていないことが判明すれば、次に狙われるのはキサラを含めた自分と接触した人物の誰かになる可能性が高い。

 <鍵>を持ってしまう時点で自身に危険が及ぶことになる。


「いや、そうではないんだが……」

「?」


 予想外の言葉にイオが顔を上げると、キサラは訝しげな表情を浮かべていた。


「私みたいな出会って数時間の相手に重要なものを預けるのは危険だと思わないのか? リルとノイエスは聖域騎士団で身元は保証されるが、私にそういうものはない」

「……それを気にしていたの?」


 イオは目を丸くしてキサラを見た。言われてみれば、さっきキサラも『自分でいいのか』ということをたずねていたことを思い出す。

 あの時は意味を測りかねていたが、正体不明の自分に<水鏡の鍵(カトスヴァ)>を預けることになるが構わないのか、という意味だったらしい。


「んーそうね。確かにあなたのことは知らないけど、あなたとリュウキ達の様子を見ていたら十分信頼できると思ったのよ」


 思ってもみなかったことをたずねられて、イオは納得してもらえるように考えながら話す。


「特にリュウキはあまり人と関わろうとはしないし、そんなリュウキが気を許してるなら……あ、なんでもない」


 言いかけてイオは慌てた様子で口を噤んだ。


「い、今のは言わないでね」

「誰に?」


 本気で分からないらしいキサラは真顔で問いかける。


「リュウキに」

「わかった」


 理由は見当もつかなかったが、確認するような事でもない気はしたのでキサラは頷くだけにした。


「そ、それにね?」


 イオは急いでその話題から遠ざかろうと続けて言った。


「本当に怪しい人は、自分の事をわざわざ怪しい人ですとか言わないと思うのよ」

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