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《5》重くない!

 川に落ちた二人は、水面に浮かび上がると川岸まで泳いだ。岸に上がったリュウキは警戒しながらあたりを見回す。


(この辺りにはいなさそうだな……)


 とはいえ油断はできない。さっきのように不意打ちしてくる可能性もある。

 まあリュウキ自身は察知できるのだが。

 問題は崖の上のラナイ(たち)とどうやって合流するか……リュウキに飛行手段はない。

 しかし、その問題はすぐに解決した。


「あーいたいた!」


 上から声が降ってくる。あのリルとか言う神人だ。

 振り仰ぐとリルとラナイがペガサスに乗ってこっちに降りてくるところだった。


(そういえば聖獣騎士だったかこいつ……)


 数十分前に自分の聖獣に足蹴りにされていたのを思い出した。

 聖獣騎士は文字通り聖獣と契約を交わした聖騎士のことだ。

 ペガサスが河原に降り立つと、リルは背中から飛び降り、ラナイが降りるのを手伝った。


「二人ともびしょびしょね……どこかで火を焚いて服を乾かさないと」


 リルはリュウキと少年が全身濡れているのを見て言った。リュウキは不機嫌そうにリルに向かってぼやく。


「ああ、お前のせいでな……」


 心当たりがないリルは首をかしげる。


「え、なんで私のせいなのよ?」

「お前が来たせいで俺たちが立ってた足場が崩れたんだ」


 確かにリュウキと少年が立ってるだけでは崩れなかった崖ではある。

 とはいえ、<尖角虚獣>の防御壁の圧力でも岩場が脆くなった可能性もあるので、リルだけのせいではなさそうだが。


「なに、私の体重で崩れたとでもいうわけ!? 失礼ね、そんなに重くないわよ!」


 リルの頭にそこまでの思考はなかった。体重を話題にされてリルは怒り出す。


「ヴァレル! 私そんなに重くないよね!?」


 いつも背に乗るペガサス――ヴァレルを振り返り同意を求める。

 相棒の聖獣はちょっと考えて答えた。


『そうね。聖女様の方が軽かったけど』

「ヴァレル……そこは私の味方をしてくれてもいいんじゃないの?」


 なぜかラナイを引き合いに出され、リルは項垂れた。


『あら、一応味方はしたわよ。頷いたでしょ? ただ忘れられてたのを覚えているだけよ?』

「………………」


 どうやらまだ根に持っていたらしい。すると今度は聖女様――ラナイが言った。


「リル様は聖騎士ですし、私よりは筋肉がついてるのでその分重いのですよ」

「……ラナイ様……味方してくれるのはありがたいんですが、重いという単語を使われるとなんか……」


 喜ぶに喜べないリルである。


「え、いえ、リル様が重いといったわけではなく……あと私に様なんてつけなくていいですよ」

「そう……? じゃあラナイ! 私にも様とかつけなくていいからね。えらくもないただの下っ端だし」

「はい。リルさん」


 なんだか打ち解けて和みだした二人である。


「…………」


 その様子を見てリュウキは内心頭を抱えた。

 神人二人にはお帰り願おうと思って突っかかったのだが、逆効果になってしまった。ラナイと仲良くなるとやりにくくなる。

 いや、問題はもう一人の方かもしれない。リルほど話しているのを見たことはないが、あっちはある意味一番厄介な性格をしていそうだ。(自身のことは棚に上げておくが)

 何を言ってもうまくかわされそうな、相手にするのが疲れる類の。


 リルと楽しそうに話しているラナイを見ていたリュウキはふと思う。


(……あんなラナイは久しぶり……か)


 その時少年がくしゃみをする。それを聞いてラナイは鞄から乾いた布を取り出した。


「ひとまずこれで水滴を拭きましょう。風邪をひいたら大変です」


 少年に布を渡し、リュウキにもそれを渡そうとするが、彼はそれを制した。


「……あとで。また来るぞ」


 何が、と聞かなくても警戒している様子のリュウキから察した。

 草むらから灰色の獣が三体こちらを取り囲むように姿を現す。リルとリュウキはそれぞれ剣を構え、ラナイも少年を後ろにかばっていつでも結界を張れるように気を引き締めた。

 <虚獣>たちはじりじりと距離を詰めてくる。二人が攻撃を仕掛けようと足を踏み出した、その時。

 四人の体を清澄な感覚が一瞬駆け抜けていった。直後、目の前の<虚獣>は一体残らず霧となって消えていく。

 突然のことに少年は目を丸くするが、リルたちは何が起きたのか理解していた。


「やっと来たか」


 リュウキがそう呟くのが早いか、静かな森のあちこちで青銀色に輝く光の柱が立ち昇る。

 神人や聖職者の使う聖方陣だ。オウルが呼んだ天導協会が到着したようだ。


「ここはあちらに任せて、私たちはどこか安全な場所で服を乾かしましょう」


 少年が風邪を引かないか心配なラナイがそう言う。


「あ、それなら……」


 辺りの風景を見てあることに気付いた少年が口を開いた。


「僕の家、ここからなら道分かるから案内するよ」


 偶然にも、崖から落ちて知っている場所に出ていたらしい。

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