《6》リュウキ、照r(殴)
誰かが殴られて倒れている。(たぶん作者)
「いやーリュウキ君もやるねぇ」
リュウキとラナイはパルシカの家に到着するなり、オウルのそんな声に出迎えられた。
「なんだいきなり」
「お祭りで女の子に小物贈るとは」
「ラナイが財布忘れてたから俺が出しただけだ。というか何で知ってるんだよ」
「たまたまらっしーが通りかかって」
「…………」
笑顔で言うオウルにリュウキは目を据わらせた。
(こいつ……ラナイが出ていった時から実は聖獣つけてたな……)
実際は意図的ではなくたまたまらっしーがついていったのだが、リュウキにとっては同じことだろう。
「すみません……買いに行ったのにお財布忘れちゃうなんて」
ラナイは内心ドキドキしつつ苦笑して見せた。
本当は文字通り飛び出してきたので財布を持っていなかったのは当然だったわけだが。
ちなみにラナイは後で返すと言ったが、リュウキは大した金額でもないと断っていた。
「何買ってもらったの?」
らっしーを通じて知っているはずのオウルはわざわざラナイにたずねる。
「あ、これを……」
そう言ってラナイは羽の形を模した白銀色の小物を手の上に乗せて見せる。やや透明の羽根一枚一枚に薄緑色の縁取りがある小さな髪飾りだ。
「わあ、かわいいね。折角だからつけてみようよ」
「はい」
ラナイは髪飾りを片手に持つと、髪を軽く押さえて耳の上あたりに背面の細長い金具を差し込んだ。
「ラナイちゃん似合ってるよ」
「ありがとうございます」
爽やかな笑顔のオウルにラナイも微笑み返した。
「ね、リュウキ君」
なぜかリュウキに話を振るオウル。
ラナイもどうかなと気になってリュウキを見るが、彼はラナイと顔を合わせる前に別方向に視線を逸らした。
「……別に」
それだけ言うとさっさとどこかへ歩いていってしまう。
「……リュウキには変に見えたんでしょうか……」
ラナイは気を落とすが、彼女が振り向く前にリュウキの表情を一瞬見ていたオウルは目を丸くしていた。
「いやー……あれは」
照れ隠しかな。と、オウルが言う前にラナイは気を取り直した。
「でもお祭りってちょっと怖いこともありましたが楽しいんですね」
「お祭り初めてだったんだ?」
「はい。以前機会はあったんですが、その時は熱を出してしまって……」
リュウキがさっきのリルの姿に驚いたのに対しラナイが反応しなかったのは、当時寝込んでいたためあまり憶えていなかったのだ。
「そうだったんだね。今日はリュウキ君とお祭り行けて良かったね」
「はい」
ラナイは嬉しそうに微笑んで頷いた。
ちなみにリルの姿が見えないが、実はラナイが一人でなぜか出かけたと知って慌てて探しに行っている。
オウルはリュウキが先に探しに行ったと言おうとしたのだが、リルはそこまで聞かずに出ていってしまったのだった。




