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アマゾネスの婿  作者: 鼻先五寸
1/1

攫われて桃源郷?

「ハッハッハッハッ」

有酸素運動、それは長時間継続するための軽・中程度の負荷をかける運動である。

人は長距離移動が得意で、この持久力を使い狩猟を行っていたと言うのは本当らしい。

まぁこの場合狩られる側だが。


俺の年齢は15歳。

なんやかんや有って異世界転生したのは良い物の元来のなまけ癖と言うか指示待ち人間と言うか人の下について今まで生きてきた。

それは異世界に行っても同じで小作人...いや、農奴の親からひり出された時にはもうこのまままた死ぬまで人の下で生きるんだろうなと思っていた。


そして親の仕事を手伝いつつぼーっと作業をこなす日々。

草を毟るか大地を耕すか木を切るかそんな感じだ。

死ぬまでするこのルーチンワークを俺は少し愛していた。


まぁこの永遠と続くような鬼ごっこをするまでは。


事を遡る二時間前。

俺はいつものように目覚め親に挨拶をし、鍬を持って外に出た。

今日の作業は伐採した切り株を引っこ抜く作業だ。

村長が村人が増えると言うか俺や周りの同期が成人したため農地を増やすと言いその作業を若い者だけで行っている。


ああ、言い忘れていたが、この世界には魔物が一応存在している。

俺でも倒せるスライムであったり、みんなでタコ殴りすれば勝てるゴブリンであったり...


それで若い者と護衛に猟師をやってるおっさんが付いてきたわけだ。



「おはよう」

何時もの挨拶をする。

「うい」

こんな感じに返されるああ、いつものルーチン最高だ。


鍬を持ち上げ一気に振り下ろす。

根と土の隙間に鍬を入れ梃子の原理で持ち上げる。


まず一本の根が切れる。

それを行ったあと太い根を切り切り株を動かし引っこ抜く。

これを行う訳だ。


そうしてまた鍬を振り上げ入れようとすると






ビィィィン!

目の前の切り株にぶるぶると震える棒が生えた。

猟師が叫ぶ。

「アマゾネスだ! 逃げろ!」

その声と共に何本もの矢が降り注ぐ。


みな一斉に走り出す。

俺も慌てて皆と同じ方向に走った。

しかし、その時も俺は焦ってなかった。

正直そんな時期と思っていた。


この時期春の種植えが終わり、手が隙く頃この地域でアマゾネスが成人の儀を迎える。

成人の儀に何をするかもう気づいていると思うが、男狩りだ。

普通の女性なら男と戦ったら大体は勝てるが、此奴らは違う。

優れた体躯から生み出される強靭な力。

単独で熊や虎を狩る丹力。

鷹をも凌駕する眼力。

そして何よりも目立つのが見た目だ。


遠くから見れば見目美しい女性だ。

肌は褐色に部族の刺青が映え顔も美しい。

しかし近くに来ればデカいそれはもう何から何までデカい。


身長は2mを軽く超える。

そんな人...いや、亜人に農奴は勝てないし勝負する前から負けている。

そして捕まると贄にささげられるという噂だ。


心臓を引きずり出すとか生首晒されるとかだが全て教典から出されている図鑑に書いてあるらしい。


それは困る、まだ死にたく無いし自分が可愛い。

だから俺は村に向かっている途中でわざと逸れた。



「ハーっ...ハーっ...」

森に飛びこんで俺は隠れて伏せた。

荒い息を急いで整える。

そしてすぐに走ってくる音が聞こえる。

人数は分からないが、一人二人ではなさそうだ、すぐ横の街道を走っていく音が聞こえる。

馬鹿めそいつらは囮よ俺さえ生き残れば十分。

そう思い音を聞きながら心で念じる。

私は林、私は林、私は林....


もうこれで俺は林になった。

あとは夜になるまでじっとしてゆっくり帰ろう。

そう思いじっとする。

まぁ内心は心臓バクバクで神様と仏様に祈っていたが。


しかしそんな事も考えられたのは数分だけだ。

バタバタと足音が戻ってくる音が聞こえた。

そして何か声が聞こえる。

「くっそーまた逃がしちまった!」

「なんでこんな時に限って衛兵が巡回してるのかしら! キーっ!」

「また族長に怒られちゃうよ」

「最近多いよねぇ~」

黄色い声が聞こえる....

絶対これアマゾネスだ。

落ち着いた心臓がまた跳ね上がる。

前世でさんざんやったステルスゲームを思い出し第五匍匐前進を行い離れる事を決意。

ズッズズズズズ。

あかん、これ結構音してるっぽい。

枝や根に体が引っかかり結構な音が鳴った。

彼女たちの声が小さくなる。

「此処踏んだ後有るよな」

「ええ...まだ近くに居ると思いますわ」

「しっ静かに....」

「....」


ブタの声を真似する。

俺は前世からこの声は得意だった。

「フガッフガフガッ」

鼻を啜る音を鳴らし少しずつ離れる。

「んだよブタじゃねぇか...ってなるわけ無ぇだろ!」

その声が聞こえたかと思うと槍が目の前に刺さった。

俺は飛び起き後ろも見ずに全力で駆ける。

そして冒頭に戻る訳だ。







「ハッハッハッハッ」

「待てこら!」

「痛くしないから待つんですよ!」

「命まで取らないから!」

「美味しいお菓子あげるよ」


んなもん信じられるか。

ちょいちょい飛んでくる矢に槍、

当てる気が無いのか下手くそなのか。

おそらく後者だと思いたい。


そうして鬼ごっこをし十分ほど経った頃だろうか、撒いたのか走ってくる音が聞こえなかった。

膝に手を付き水を飲もうと肩から掛けていた水筒を持ち上げると矢が刺さり穴が開いていた。


はい、前者でしたね、これ追い込まれてる感じですね。

「糞!」

思わず悪態をつき地面に水筒を投げ捨てる。


若干十五歳同期で喧嘩は負けなし、前世で本格的に行った柔道を実践に出す時だ。

ポケットから肥後守を取り出す。

「来いヤァあ!」

声が思い切り裏返る。

すると右から音が鳴ったので思い切り肥後守を投げ踵を返し走ろうとすると。

足がもつれ思い切り転けた。

足を見るとそこには

「ぼ...ボーラ....」

外そうと手を持っていくと次は腕が持っていかれ両腕に絡まる。

「あ!ミスった!」

その声が聞こえた方向を見たらボーラの玉が眼前に迫り























「っ痛ぇ....」

痛みで頭を押さえようとすると手は上がらずロープで体ごと縛られていた。

痛む頭に歯ぎしりが出そうになるのを我慢し瞳を開ける。

そこは白い天井に簡易ベッド、派手な民族柄の外套が見える。

「終わった....」

ため息をつきながらぼーっとしていると。

「おお、起きたか」

男性の声が聞こえ頭を向ける。

「どうだ、痛むか?」

そう言ってバケツから雑巾を取り出し水を絞る。

「え、ええ...此処は....」

「アマゾネスって知ってるか? その村だ」

思わずため息が漏れる。

「じゃあ俺...私は捕まったんですね」

「ああ、まぁこれから宜しくな」

そう言って俺の頭に雑巾を乗せる。

「いつ処刑...贄にされるんですか?」

そう言うと男はため息を吐く。

「贄になんかしねぇよ....いつまでたっても”俺達”は蛮族か」

「人を、まして子供を攫うのは蛮族だと思いますが」

そう言うと男は笑った。

「まぁ盗賊みたいなもんだな俺達は...アマゾネスって言う奴らはどんな奴か知ってるか?」

「女性だけの遊牧民、単性で子を産み男は不要だと贄を邪神に捧げる集団...って習いました」

「本当にそうだと思うか?」

「私の世界ではそうでした、まぁ似たような物じゃないんですか? 人を攫って良心が咎めないんじゃ」

「良心....良心ならお前は豚でも鳥でも食うか?」

「食べますが....そう言う事ですか?」

「そうだ、それと変わらんよ、そうし」


「起きたか! 父上! 起きたのなら呼んでくれって言ったじゃないか!」

そう言って出てきたのはまたデカい女性だ。

もう巨人と言っても俺は信じる。

「ち、父上?」

「そうだこいつは俺の娘、アマゾネスのロ族シンヴァの娘バネッタだ」

「私の名前はカイル....サイア村のカイルです....」


それが彼女との出会いだった。

身長は2m後半程有るが、まだ顔はあどけなさが残るもアマゾネス独特の妖艶とした雰囲気は出ている。


ちなみに俺の顔はたれ目だが、結構イケメンの顔をしている。

骨格が違うさ骨格が。

マダムキラーになれそうな感じだ。


「で、単性生殖はやっぱり不可能なんですね」

「当たり前だろ? ナメクジかなんかと勘違いしてるんじゃねぇか?」

そう言う彼はバネッタの父上エリックだ。

「いつも連れてくるのが寒村の頭わりぃ餓鬼ばっかりで帰らさせてたが、お前は寒村の割に脳みそ出来てんな」

そう言ってエリックは笑う。

俺は笑えない。

「エリックさんはどうやって攫われたんですか?」

「俺? 俺はこう見えて攫われるべくして攫われたって言うか、こう見えて魔界側の地質学者だったんだ」

「へ、へぇ...地質学者って何ですか? 美味しいんですか?」

「書いて字のごとく地面を調査するんだ、んで侵略戦争するかもしれないから向こう側すなわちお前の国側にある土地の調査をしに向かったら此奴らに襲われたって訳だ」

「抵抗しなかったんですか? 地面の何を調査するのですか?石なんか食べられませんよ?」

「抵抗なんかしねぇよこんな別嬪揃いの部族だぞ喜んで行くね、あと今更馬鹿な振りしても遅いからな」

「一目惚れってやつだ、正直に言うと娘をお前にやりたくないが村の掟は絶対だからな」

「父上、私もカイルと話したいんだが!」

「でけぇ声出すな! やっと俺は知的な会話できるんだ、お前はこれから此奴と散々話すことできるんだから後にしろ! で、地質の話に戻るんだが、この辺り一帯の....」




正直俺もこいつエリックと同じで彼女に淡い恋心を抱いたのかもしれない。

いや、前世でもそうだが、今世でもまだ女性と付き合った事が俺にはなかった。

村の女性は見当たらず男ばかりだ、居ても取り合いそんなの年上の嫁が居ない人たちに渡っていく。

俺が結婚するのは20になってからと言われていた。

今世に来て見た若い女性は自分の母親か友人の妹くらいだ、その子は何処かの村に売られて行ったが。


「で、そうしたって訳よ、まぁこの辺りの土地の価値は小せぇって事だな、戦略的価値無しだから安全なんよ」

「へぇそうですか...」

彼女を見る。

さっき言った通り2mは超えるも顔は美しい骨格は太く若干むちっとしているも筋肉が浮き出ている。

それに褐色の肌に黒く刺青が彫られているのもべりぐっ!

なにより巨乳だ、爆乳と言っても過言ではない、最初にも言ったが俺は下に付くのが得意指示待ち人間

って事はMだ。

天職来たかこれ。

「何処を見てる!」

彼女が頬を赤らめ言うが、その声も美しい。

きつめの言い方も最高だ、鼻血が出そうになる。

「おい...大丈夫か?」

だんだんと視界が暗くなってくる。

ああ、美しい....女神よ....

そこで俺は意識を手放した。








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