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06話 ジュン・ホワイト

|д゜)書くのが楽しいと思うことが重要ですね。

 夜の帳も降り始め、ホワイト一家は家で夕餉を取っていた。

 ごろごろした芋や野菜が入った汁物、干した猪肉ししにくを焼いた物、硬く黒ずんだパンと内容は質素なものではあったが、家族に負の感情はない。

 食べるものがないこと、それに比べれば些細なことであった。

 成長期である身のジュンにとってやや物足りない気もするが、父と母に笑っていてくれることが今の幸せであった。


 農家とは言え、国への納める租は年々増え続けているため野菜の類でさえ贅沢は出来ない。

 質が好いものはまず納めることになる。

 その上、成績が良い農家にはその分租税も多く課される。

 成績が悪い農家の穴埋めと揶揄する者が多いが、悪いことばかりではない。

 租税を多く納めることは国への忠誠を顕示することが出来、それが積み重なると名誉や特権が与えられることもある。

 名誉や特権を与えられた者は更なる発展を期待出来る。

 そのため父レインはせこせこ税を納め続けていた。

 ジュンの目から見てもレインはやり手であり、ゆくゆくは農家の身でありながら成り上がることが出来るだろうと踏んでいた。


「最近この村付近で魔物が出ているそうね」


 スプーンを置いて母、ルナは物憂げな表情で口にした。

 魔物は魔法を扱うために必要な魔力を多く身体に有している動物であり、生まれながらに魔物である物や突然変異で魔物になる物、個体差はあるものの、いずれにしても身体能力は他の動物に比べ飛び抜けている傾向にある。

 家族を憂いてか、はたまた作物を憂いてか、とにもかくにも魔物の存在は人間にとって問題であることには変わりない。


「大丈夫さ、ママ。魔物が出たら俺がやっつけてやるんだ」


 兄、ヌーンはくすんだフォークを天に掲げて声高らかに宣言する。


「まあまあ、お兄ちゃんは頼りになるわねぇ」


 ルナは兄の様を見て微笑んだ。

 ヌーンはジュンにとって二つ年上で、腕白少年という言葉が似合う、所謂悪餓鬼のような男であった。

 時折父の目を盗んで家の仕事をサボったり、悪戯をするところはまだまだ子供と言ったところか。


──若いのう。


 ジュンはそんな兄を尻目に汁を一口啜り、硬いパンを噛み千切ろうと悪戦苦闘していた。


「調査に当たった領主様の私兵団が半壊して戻ってきたと聞く。俺も行商をしていた頃は、このナイフで狼や猪くらいなら何とか出来た、が、正直魔物となると自信がない」


 レインは常に腰に帯びているナイフを取り出し刀身を眺めた。

 鍛え上げられた刃渡り一尺の父のナイフは、一切の錆がなく、念入りに手入れがされていることが窺える。

 行商人にとって荷運びにおいてどうしても危険が付きまとう。

 獣の群れや、盗人の類に対抗するために命を守る武器は必要であった。

 獣や盗人と渡りあってきたそんな父からしても、魔物の存在はあまりにも大きいようであった。


「ま、暗い話をしていたら飯が不味くなる。たまにはヌーンのように楽観的になるのもいいのかもしれない」

「そうだそうだ!」


 ヌーンは皮肉を言われたことにさえ気づかず、明るくそう言った。

 レインは家族を不安に怯えることのないようそう口にしたのはジュンには伝わった。

 危険から目を背けるのは三流も三流。

 危険に備え、対策をすることで三流から抜け出すことが出来る。

 では一流はどうするのだろうか。

 そんなことを考えながらジュンは一人思い悩んだのであった。

ヌーン⇒白昼から。

ルナ⇒月白から。

どうせならホワイト家は白がつく熟語から取ろうと思いました。

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