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05話 ジュン・ホワイト

|д゜)色んな人の影響受けてるなぁって感じる5話、始まるよ~。

 真城純がジュン・ホワイトとして生まれ変わったあの身動きすらままならない身体に歯がゆく感じて日から、五年の年月が流れた。

 当初、赤子の頃のどうしようもないでいた日々を脱却し、今は子供ながらではあるが満足のいく生活を送れるようには成長を実感できていた。


 言葉も話せないほど幼い頃、ジュンは途方もない時間をかけてこの世界についてゆっくり学習していた。

 夢の中で出会った少女の言う通り、異国の言葉は理解に易かった。

 というよりかは、彼自身が当たり前のように母国語を話せるように、既にこの国の言葉が理解できるようになっていた。

 夢の中の少女が言っていた、『言葉がわかるようになった』とはそういうことなのだろう。


 この世界は生前の記憶で以って例えると、世界史で見る欧州の世界によく似ていた。

 文献等を読み漁ったわけではなかったが、母や父の会話を聞いていれば前世の記憶を持っているジュンには理解が出来た。 

 時代は中世と近代の中間と言ったところか。

 王が国を統べ、その下に貴族や聖職者が、そしてさらにその下に農工商の有象無象の衆が点在する所謂階級社会といった具合である。

 階級はその中でもとりわけ下級に位置する平々凡々な農民の、次男として生を受けたのであった。

 

 ジュンの生まれ落ちた国、アシルファ王国の中心にはエリン川が通っており、その大河がもたらす恩恵を大いに受け、アシルファ王国は農業が盛んとなった歴史があった。

 肥沃な大地故か、食べていく分には困らないくらいの生活が送れていた。

 

──母があり、父がある。何不自由なことなんてない。なんと幸せなことだろうか。


 ジュンは父、レインが跨る馬の前に乗せられ、麦畑を回っていた。

 ジュンは子供らしくもなく、麦穂が風になびき、心地よい音を楽しみながら夏の訪れを喜んでいた。

 この分では冷害でもなければ今年も豊作であろう。

 朗らかな陽の光を全身に浴びながら父に背中を預け、幸せを噛みしめていた。

 そんな中、徐にレインが口を開いた。


「ジュン、この麦を見よ」

「はい」


 ぱかり。ぱかり。馬は二人の言葉を知らんぷりしているかのように歩を進め、その音が虚しく響く。


「直にこの麦たちは実を付け始め、穂が段々と下がってくる。これが本来人間のあるべき姿だと俺は思う」

「というと?」

「人間も麦と同じように成長するはする。しかし、中身が詰まった時、人間はどうしても驕り高ぶり、礼節を軽んじ頭を下げることを忘れてしまうらしい。それをゆめゆめ忘れるなということだ」

「ああ」


──実るほど頭を垂れるなんとやら。


 そんな言葉がジュンの頭の中を過ぎる。

 前世の記憶では稲だったが、この国には残念ながら稲がなかった。

 前世の記憶と照らし合わせて父の言葉を噛みしめる。


 ジュンは父を尊敬していた。

 前世まで鑑みるとこのレインはジュンにとって若造でしかなかったが、妻を持ち子を持つ父として我が子をしっかり導かんとする心意気を感じる。

 前世で所帯を持たなかったジュンにとってはこの年の差でもさしずめ人生の先輩といったところであった。

 また、農民といっても、このレインの一族は代々商人の出であるためか、商売に秀でていた。

 一族から離れ、農業を始め、一代で馬まで据えることが出来るようになるまで築き上げれたのは、このレインの商才あってこそである。


「はい父上。僕も麦のように踏まれて地に伏しても、なお大きくなれるような人間になりたいです」

「はっはっは。まだ子供なのに難しいことを言う」


 父は笑い、ジュンの頭をがしがし掻く。


「大きくなって何を為す。それが大事であり、それを考えることがまた重要である」

「はい。父上」


 ジュンは大きく返事をした。


「さ、そろそろ日も暮れ始める頃合いだ。今日は家へ帰ろう」

「僕も母上に会いたいです」

「私もだ。さ、行こう」


 ぱかり。ぱかり。二人を乗せた馬にその声が届いたのか、心なしか歩調が速くなったような気がしたのであった。

アシルファ王国:acirfa⇒africa⇒アフリカ。

エリン川:elin⇒nile⇒ナイル川


文明は大河を中心に発展したのは有名な話ですね。

あと、参考にした地名はなんとなく選定したものです。

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