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どうも、魔法使い(仮)です!  作者: 道路公団松崎
本編
20/21

シカタナイの方程式④

【あらすじ】

色んな意味で、最強のコンビが誕生するお話。

 真夜中の月が昇り切った頃。ソテリキャリ邸の二階大テラスにアルベルトは居た。白いローブ型のパジャマを着て夜風に当たりながら思いにふけっていた。

 

「勝利した余韻にでも浸っているのかしら?」


 テラスへミリアが出て来る。


「まさか……僕がここに来る時の心境くらい分かってらっしゃるでしょう?」


 ミリアはテラスの手すりに両腕を持たれかけて、その上に顔を乗せる。


「正直、驚いたわ。アルの戦闘に……私が戦ってみたかった……」

「冗談を……多分相手になりませんよ」

「お父様はお優しい事で。属性剣を使われてなかった」

「ええ。本当に……」

「それで、本当の所は?」

「……」


 意地の悪い顔でミリアは笑っている。


「本当に、お姉様は怖い……」

「良く言われるわ。でどうなの?」

「属性剣に対抗する対策を一つだけ隠していました」

「初手の詠唱で一つ違う公式が混ざっていたアレよね?」

「……剣才があって魔術式にも学があるなんて……正直落ち込みます」

「意味までは深く理解できないわ。戦闘を有利にしたいから勉強したのよ?」


 アルベルトは眉毛を下げて肩を落とす。

 その顔見てミリアはニコニコしているのだ。


「本当は初手で使うつもりでしたが、使えませんでした」

「なぜ?」

「人に使った事が無かったからです。危険が及ぶ可能性を考慮しました」

「アルは、お父様に似てお優しい事。母に似た私とは大違いね……」


 そう言って深くため息をつく。


「お母様は冷酷で烈火の様に容赦がなかったですからね」

「お父様もアルも、甘すぎるのよ……きっと属性剣を使わなかったのは剣技で正々堂々と戦うという意味もあったのでしょうね」

「……はい」

「私なら、初手で殺していたわ」

「……」

「冗談よ……。勝利は勝利よ。喜びなさい!」


 言葉を喋り終わるとミリアはそのままテラスを出て行った。


「……冗談? そういう風には聞こえないんだよ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日、私たちはアルベルト邸に呼び出された。

 ヴィクトルが上座に腰かけており横にミリアが立って腕を組んでいた。


「呼んだのは君たちの腕を見込んでの事なのだが……」


 そう言いながら地図をテーブルの上に広げる。


「ヴェルマール諸国連合では内乱が起きているのは知っているか?」

「はい。特に南側では独立戦争が起きているとか……」


 諸国連合というのは小さな国が手を結んで一つの国の様な形をとっている総称である。

 現在、諸国連合の中のナプラスという国がゲリラ軍と交戦している最中なのだ。

 以前、北ナプラスが占領し植民地にした南ナプラスの民衆が独立運動のため立ち上がったのがこの戦争の発端である。植民地になった民衆は奴隷として北ナプラスの民間や貴族に雇用されていたが北側の貴族が南の奴隷を殺害した事件がキッカケで南側の怒りを買ったのである。


「ナプラスはランス首都の北東側。国境の境に隣接している国だ。南側の元官僚から私に一通の手紙が届いたのだ……」

「救援ですか?」

「そうだ。しかしランス法国は友好条約を北ナプラスと結んでおり手が出せない。この手紙にはゲリラ軍への食料物資の支援要求が書かれている」


 つまり今回の頼み事と言うのは、お馴染みブラックなお仕事のようだ。


「彼は士官学校時代の友人でね。ランスへ留学して来ていたんだよ。個人的な仕事だと思って欲しいのだ。報酬は私個人が払う」

「しかし、俺たちがそこに入る事自体が難しいんじゃないのか? ランスの通行手形だと身元がバレる。物資輸送となると陸路確定だ。飛竜じゃ大量の物資は運べんからな。南ナプラスの国境門は北の人間が管理していて潜入が難しいと聞くが」

「南ナプラスの人間しか知らない鉱山道があるのだよ」

「鉱山道?」


 ランスとナプラスの間には小高い山が仕切りとなっていて国境門以外からの陸路の侵入は難しい。その山は一年中雪に覆われていて超える事が困難なのだ。

 しかしランス側からその山の下を掘り進めていた時代があったそうだ。それは鉱山道として今も残っており南ナプラスの旧首都へと繋がっているらしい。 


「その鉱山道から物資を南ナプラスへ運ぶって事か……」

「ゲリラ軍に物資を運んで頂きたいのだ」

「荷物の数は?」

「荷馬車10台」

「下りる! そんなの無理だ。ただでさえ敵味方がドンパチやってる場所に荷馬車10台だと? カモがネギを背負って歩いてるようなもんだ! その日の夜には北の陣地で俺たちゃ焼かれてカモ鍋パーティーだぜ!」

 

 ずっと考え込んでいたアルベルトがようやく口を開く。


「この地図見てくれる?」


 地図にはナプラス全土の敵味方の陣営がマーキングされている。

 鉱山を抜けた場所の目と鼻の先に旧南ナプラス首都があり今は北の占領区域。

 鉱山を出て山沿いに北上して行くとゲリラ軍の本拠地がある。

 鉱山出口からゲリラ軍の本拠地までは3つの政府軍の砦を通過して行かなければならない。


「これさぁ。この3つ落とせばいけるよね?」

「……」

「……」

(何言ってんだ、お前は……白目)

「10台馬車を運びながら戦闘なんて無理だぜ、アル」

「いや。運びながらじゃないよ。馬車は鉱山に置いて行くんだ。まずゲリラ軍と合流する所からがスタートする。その後3つの拠点を制圧してルートを確保してから荷物を本拠地に輸送するんだ」


 馬車が無ければ隠密行動も取りやすいが敵拠点の戦力が分からない。

 多勢に無勢だと戦闘も間違いなく苦戦する。


「しかしだな。司令塔が俺として戦力はチカのみだぜ?」

「僕を忘れてない? ですよね、お父様」

「アルベルトを連れて行きなさい。ウォルト仕込みの知略は、きっと役に立つ」

「き、危険すぎますよ!」

「承知の上だ」

「……」


 私とジェイクはあっけに取られてしまったのだ。アルベルトの参加にヴィクトルは反対すると思っていたからだ。

 話しは進んで行き出発は明日となった。参加者は荷馬車を引く者が10人と私たち3人。馬車引きの10人は南ナプラス鉱山出口まで来たら引き返してもらう算段となった。

 

 話がまとまり解散をする事になったのはそれから半時程しての事だった。

 お互いに気を揉んで疲れたのか無口のまま夫婦二人肩を並べてアルベルト邸の出口まで噴水の庭を歩いていた。すると出口の前にミリアが立っている事に気づく。


「ミリア?」


 ミリアはそのまま腰にさしている剣を抜いた。


「身体加速、クリティカル率上昇、腕力向上、一撃必中」

「おい、チカ!」

「……」


 バフを付与し終えたミリアは、そのまま地面を蹴り私に斬りかかって来た。

 わずか一瞬で私との間を詰める。

 1年前より数倍、踏み込む速度が上がっている。

 ミリアの左斜め上からの斬撃を鉄の杖を振り上げて止めた。

 ----------------キィイイイン!


「チカゲさん……お優しいこと……」

「……」

「そんな受け方、ホントはしないでしょう? 私だから手を抜いているのかしら?」


 鉄の杖とミリアの剣が鍔迫り合いの状態になり力が拮抗状態になる。


「私が剣を抜いても。表情一つ変えないものね?」

「部屋に入ってから、あれだけ情熱的な殺気を向けられてれば驚きもしない……わいッ!」


 ----------------カァアアアアンッ!

 鍔迫り合いしていた状態から剣を鉄の杖で巻き上げミリアの力を外へ流す。

 しかしミリアは体幹を崩してはいなかった。

 巻き上げ弾かれた剣の起動へ合わせて体を回転させ斬撃を右下から斬り上げてきた。


 ----------------カァアンッ!

 私は手首を返し振り上げて来た斬撃を鉄の杖で止める。

 これを皮切りにミリアの連撃が始まった。

 まるで風が通り抜けるような速さで15連撃を繰り出してきた。


 ----------------カカカカカカンッ!

 全連撃を鉄の杖でかわし切る。

 ミリアはバックステップを踏んで私から間合いを取った。 


「どうして防ぐだけで攻めてくれないの? 私如きでは本気を出せないのかしら?」

「……」

「私は昨日の戦闘を見て……うずうずが止まらなくて……シタイの……貴女と……」

「この戦闘狂が」

「チカゲさん。それじゃあ、壊れないで下さいね?」


 ミリアが両手で剣を持ち正眼に構えると一瞬で空気が凍り付く感覚を感じた。

 

(……ヤバイのが来る)


 自分の構えを解いて鉄の杖を下げ目を瞑った。


「水鏡……」

「そこまでです。ミリアお嬢様」


 黒髪の執事がミリアの前に立っていた。彼がいつそこに現れたのか分からなかった。執事は親指と人差し指だけでミリアの剣をつまんでいる。


「クロウッ! 邪魔をするなッ!」


 ミリアは暴れているが執事クロウにつままれた剣はビクとも動かない。


「大切なお客様に剣を向けるのは感心致しません」

「私の神聖なる勝負をッ!」

「あの御方は戦意を一度も出していらっしゃいませんよ? それで神聖ですか?」

「キィイイイイイイ!」


 執事クロウは私とジェイクに会釈をする。おそらく主人の非礼を詫びたのだろう。ジタバタ暴れているミリアの手を引っ張り屋敷の中に連れて入って行ったのだった。


「チカ。大丈夫か?」

「平気です」

「最後の技だが」

「ヒヤッとしました」

「あぁ。それに一番ヒヤッとしたのはあの執事だ。気味が悪いほど足音一つ立てないでやがる」

「……」


 私にはミリアの気持ちが少し分かる気がした。自分の弟が父親と芸術的な戦闘をしたのだ。あんなものを見せられて武人なら血がたぎってしまうに違いない。自分自身も戦ってみたいと思うのが(さが)と言うヤツなのだ。


「試合が素晴らしいと、ムラムラしちゃうんですよねぇ……」

「は?」

「いえ、コッチの話です」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日ランス首都から10台の荷馬車を引き連れてランス側の鉱山道入口へ出発した。その光景はまるで夜逃げする会社の一味のようである。

 先頭の馬車に私とジェイク、アルベルトが乗り地図を広げて会議をしていた。


「これが鉱山道の地図なんだけど、もちろん明かりなんて無いし魔物が出る可能性もある。だから2部隊に分かれて編隊を組もうと思うんだ」

「あぁ。お前がウチの軍師だ。好きにしろ! 俺たちはそれに従う」


 私も笑顔でアルベルトにうなずいた。


「それで早速、新しい魔法を昨日作ったんだけどね」

「……は? ま、魔法って作れるものなんですか?」

「いや。普通1日じゃ無理だと思うが……」


 アルベルトはスキルウィンドウを開いて私たちにスライドし見せる。


------------------------------------

・トランシーブ

(遠距離で会話をする)

------------------------------------


「おぉ。トランシーバーだ! こういうのイイネ!」

「通信スキルか? こんな魔法見たことないな……」

「作戦には情報伝達速度がモノを言うと思うんだ。これだと距離が離れていても3人で喋る事ができる」

「これなら部隊を分けても大丈夫そうだな」

「僕は先頭で指揮を取る。だから僕の警護にジェイクが付いて欲しいんだ。お姉ちゃんは最後尾の馬車で護衛を」

「了解!」


 作戦を聞き終わった私は指示通り走っている馬車から飛び降り最後尾の馬車に飛び乗る。

 気配には気を付けられるように感覚だけ研ぎ澄ませておくことにした。

 すると頭の中にアルベルトの声が響く。


「こちらアルベルト。どーぞー」

「うぉおお! すごい! アル君聞こえるよー」

「大成功だね!」

「お前……その、なんだ一人で寂しくないか?」

「だいじょーぶです! だって声聞こえますもん」

「うぉほぉん! そ、そうか……」 


 ジェイクは相変わらず私の事を心配してくれている。

 これから戦地へ向かうと言うのに思わず笑みが零れてしまった。


 アルベルトが先頭の馬車内で広範囲型の魔法サーチング・フォア・エネミーを使って数キロ先まで索敵を行いながら、それに重ね掛けしサーチ・フィールドで危険なトラップ等をモニタリングしている。守備はバッチリである。


 ランスの首都を出発してから2日目の夕方がやって来る。

 編隊を組んだ馬車はようやくランス側鉱山入り口に到着しようとしていた。

 ずっと馬車の中で座りっぱなしなのでお尻がゴワゴワしている。

 

「お姉ちゃん! 先頭に来れる?」

「どうしたの?」

「なんか人の反応があるんだ」

「え?」

「この道の400mくらい先。確かめる事はできる?」

「OK! スグ見て来る」


 身体加速のバフを付与し馬車から飛び降り後列から一気にダッシュする。

 一瞬で先頭の馬車に追い付きジェイクとアルベルトに手を振ってから再度加速し道を進んだ。すると道を一台の馬車が走っているのを見つけた。

 このルートで商会の馬車が行き来するのはオカシイ。何故ならこの先には今は使われていない鉱山道の入口しかないからである。

 商人の商業ルートや民間人のライフラインからは完全に外れている道なのだ。


「アル君。馬車1台発見だよ」

「馬車……怪しいね」

「とりあえず、様子見て来る」

「了解! お姉ちゃん気を付けてね」


 走る馬車の横までダッシュして搭乗者の顔を見る。馬車を引く搭乗者も私の気配に気づいてコチラを振り返った。


「え……」

「あぁッ?」

「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!」」


 あまりにも驚きすぎて相手も私も指をさして大声を上げたのだ。


「何?! どうしたのお姉ちゃんッ!」

「ま、マルタさんだッ!」

「はぁあああ?」


 クレール教会のシスター・マルタが馬車の手綱を握って走っていたのだ。

 私はマルタの馬車に乗り込んだ。相変わらず色の付いたグラサンを掛け煙草を口の恥に咥えてダルそうな顔をしている。

 座席の端にはウィスキーの瓶が置いてある。

 

(完全に飲酒運転じゃねーか……白目)


 アルベルトがマルタにも通信魔法を掛け全員で話ができるようにしてくれた。


「どう? マルタさん聞こえる?」

「おいおいおい。すっげぇ~な。こんなんできんのかよ坊主! お前天才じゃねーか!」


 マルタも通信魔法というのは知らない知識らしい。


「マルタさん、こんな所で何やってるんですか?」

「おいおい、サウザンド。なに寝言いってんだ。ブツ運んでんに決まってんだろぉ?」


 親指を立てて後ろの荷台を指で刺す。荷台には剣や槍、弓。魔法弾といったあらゆる武器が積み込まれていた。


「ババアがナプラス南のゲリラ軍に武器売ったんだよ。それでアタシの休暇がオジャンさ……」

「一人で内戦地へ行くんですか?」

「だろぉ~? おめぇもそぉ思うよなぁ。アタシもそう思うぜぇ……こんな、か弱いシスターをよぉ。一人で戦地へ向かわせるとか、あのババア頭のネジ吹っ飛んでやがんだ」

 

 つまり今回マルタと私たちの目的は同じだ。もし彼女が輸送に同行してくれるなら、これほど心強い味方はいない。

 

「マルタさん! 私と組みませんか?」

「はぁ?」


 依頼人の名前は伏せて、これまでの経緯をマルタに話す。

 

「なるほど……連隊行動の方がこの先やり易いな。いいぜ! 知らねぇ仲じゃねーし!」

「ホントですか! 有難う御座います!」


 こうしてヤクザ教会のシスター・マルタと私たちは共同作戦をする事になったのだ。マルタの馬車は隊列の最後尾に付き私もそこへ搭乗した。


「マルタさん。ロクスさんとかは付いて来てくれなかったの?」

「あ~、アレな? ウチの教会社員不足でよぉ。人員裂けねぇんだよ。クレールにはババアとロクスがいて他のシスターや神父はアタシみたいに一人で各地に商品運んでんだぜ」

「うわぁ~……でも、よくこのルート知ってましたね?」

「あぁ。ババアの情報網がヤベェのさ。ありゃ生きる妖怪だ」


 マルタは座席の横に置いていたウィスキーを私に差し出してきた。


「んっ!」

「いえ、わ、私はお酒は……」

「あぁ? サウザンド、アタシの酒が飲めねえのか?」

「……の、飲ませて頂きます!」


 馬車はランス側の鉱山道入り口へ到着した。既に日は落ち辺りは真っ暗な夜になっていた。入り口の周りは森が囲んでおり月の光が届かない森は深い闇が落ちている。私たちは静寂の中にいるようだった。

 その静かな闇の落ちた場所で私たちは……。


「もぉ~いやですぅ~! なんでグレちゃうのアルくぅうううん!」

「あはははははっ。サウザンドぉおお! これでも飲んで落ち着けよぉ!」

「あざますー」


 ぶっちぎりで泥酔していた。


「マルタさぁ~ん。なんでオッパイこんな柔らかいんですかぁ~?」

「ばぁ~か! 気合いだよッ!」

「「だぁはははっはははははは」」


 無線が繋がっている先頭の馬車の二人は白目をムイて、ドン引きしていたのである。


「……」

「……」


 馬車を入り口に止めて鉱山内に入る準備をしている時の事だった。

 急にアルベルトから無線が入る。


「マルタ、お姉ちゃん。数20。囲まれてる。イケる?」

「あいあい~。りょーかいですぅ~。マルタしゃんっ! 行きましゅよっ!」

「おーけーおーけー! テンション上がるわぁ!」

「「だあははははははははははっ」」


 マルタと私は爆笑しながら武器を手に森の中に入って行ったのである。


「お、おい……あの二人、行かせて大丈夫か?」

「わ、分かんない……白目」


 ------------------ダァアアアアン!

「マルタさ~ん! みてくださぁ~い! あれ? これ違うなぁ……」

「おッ前ッ、それ、杖じゃねぇよ! 人だ人ッ!」


 ------------------ドォオオオンッ!

「オイ! サウザンド! キノコがあるぞ!」

「マルタさ~ん! どこですか~!」


 ------------------ガッシャーンッ!

「ほら、キノコだ!」

「それ、ちがっ……」

「「あはははははっ」」


 ジェイクとアルベルトは森から聞こえてくる二人の笑い声と、何かを吹き飛ばしているであろう地鳴りに恐怖していた。


「こ……こええよ。全然情報入って来ないよぉ」

「……」


 数分も経たないうちに私とマルタは返り血を浴びて戻って来た。

 何をされたかの分からない血ダルマになった山賊達を10人ずつ片手で引きずりながら笑顔でアルベルトの前に持って来たのだ。


「隊長ょー! キノコ狩り完了でありますぅ~!」

「キッチリ、20キノコです! 隊長ッ!」

「ポイントの単位みたいに言うなッ!」

「「だはははははははっ」」

 

 そのまま任務を終えた私とマルタは地面に座って再度酒盛りを始めた。

 大人しくなった私たちを確認してアルベルトが山賊に尋ねる。


「なんで、僕らをつけてたのかな?」

「い……っぱい……馬車い……たから……金目のものかと……」

「あっーれぇー? コイツまだ喋れんのぉ~?」


 マルタが山賊に絡みに行くのである。


「いのち、だけ……はぁ……ガクッ」


 よっぽど闇の中で笑いながら武器を振り回し襲って来る二人の女が怖かったのだろう。マルタの声を聞いて盗賊は失神してしまった。

 しかし、ただの物取りだという事が分かりアルベルトは安心したのだった。


「ジェイク。この山賊20人。治してあげられる?」

「あぁ。どうするつもりだ?」

「良い事を思いついたんだ……」


 この時アルベルトは最高に邪悪な笑みを浮かべたと後日ジェイクは語ったのであった。

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