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どうも、魔法使い(仮)です!  作者: 道路公団松崎
本編
19/21

シカタナイの方程式③

【あらすじ】

アルベルトのお見合い潰し本番!

 アルベルトと別れて私たちは宿屋探しをしていた。


「これで、何件目ですか?」

「3件目だな……」

「入って直ぐに断られるなんて……まだ何も聞いてないのに……」

「まぁ。この街はこういうもんさ」


 法国領土の人は魔法協会や魔法使いを毛嫌いする風習が生活の中にも残っている。歩いている時も魔法使いの格好をしている私に向けられる視線は冷ややかなものだった。理念の違いで戦争まで引き起こす程の因縁を引きずると言うのは根の深い話しである。 

 もはや手当たり次第に宿屋を回って聞いてみるしかなさそうである。

 

 私たちは次の宿屋へ交渉へ入る事にした。


「すみませ~ん」

「はい。いらっしゃい!」


 奥から20歳くらいの宿屋の主人が出て来た。

 私は少し心の中でイラつきを覚えていた。どいつもこいつも人間の器が小さすぎるのだ。私は特にこういう類の奴らが大嫌いである。


「どうも、皆さんが嫌いな魔法使いです。部屋貸して下さい」

「チカ……」


 完全に嫌味たっぷりな発言をしているのは自分でも理解している。


「ぷふっ……そのご様子じゃあ、こっ酷くヤラれましたね」

「え……」


 宿屋の主人は笑いながらカウンターへ入って行き私たちに宿屋の契約書を差し出して来た。


「お二人でよろしいですか?」

「……いいんですか?」

「当たり前です。料金取れる人からは誰であろうと取る。基本です」

「あ、ありがとうございます」

「親の世代が一番酷かったと言う話は聞いていますが、僕ら若い世代にとっちゃ面倒臭いだけの話ですね。それにウチの嫁も魔法使いだし」

「ほえ~」


 驚いて言葉を失ってしまった。首都に着いて早々嫌な扱いを受け続けていたので意識は完全に法国アンチになりかけていた。


「僕らの世代の人はあんまり魔法協会の事に対して興味ない人多いです。ただ魔法使いの格好してる人がいると珍しくて見ちゃいますが」

「知らんかった……」

「神官になった友達も、先輩のオッサン、オバサンが魔法使いアンチしてるのが一々ウザいって愚痴ってましたし。あんまり気にしないで下さいね。悪いのは子供をそう教育してる大人っすよ。ほんと面倒くせぇっす」


 若い子からこんな発想を聞けるなんて感動である。

 日本の旧階位問題が、とてもこの手の話と似ている。

 明治維新の改革で封建的身分制が廃止された後も旧最下位階級を主な要因として不当に人権を侵害されている人々がいた。特に団塊世代の頃がとても激しい差別をしていたそうだが、私たち子供の時代になってからは極端に少なくなった。

 正確に言うとまだ風習が残っている地域も多々ある。

 それを発信する大人がいるから子供が継承するのだ。耳にしない情報は人の思考や発想には出ないものだ。

 さらに私達より下の子供になってくると、そういう発想が面倒臭いという理由で風習を風化させる傾向が良い意味でも悪い意味でもある。

 この若い店主は私たちの時代で言う若い世代だ。大人たちはそれを見て最近の若い者は!と口を揃えるが、日本で30代だった私の目には腐った文化を浄化するにはとても良いという発想で若い子を見ていた。


 私たちは早速、宿屋の契約書に記入し部屋に案内してもらった。

 荷物を置きベットに腰かける。


「やけにご機嫌だな?」

「はい。若い子らも捨てたもんじゃないですね」

「若いってお前も22だろ?」

(そう言えば、歳は若返っていたのだった……白目) 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 荷物を整理し宿屋に置いて私たちは外へ出た。

 アルベルトとの待ち合わせ場所である貴族区域噴水広場という場所へ向かう。

 ベンチに腰かけて待っているとアルベルトがやって来た。


「ジェイク、お姉ちゃん。お待たせ」

「うぉおっ。服!貴族みたいだ!」

「あはは……貴族なんだけどね」


 アルベルトは苦笑いをしながら言葉を重ねてきた。

「早速だけど、行こう!うちへ」


 その表情は行きしなの時とはまるで違う表情になっていた。

 真っすぐ前を向いている吹っ切れた様な目をしていたのだ。 

 私はその顔を見て胸を撫で下ろす気持になっていた。


(よかった……)

「皆、こっちだよ」


 アルベルトの案内について行くと、どの貴族の家よりも大きな屋敷が目の前に立っていた。


「で、でけえ!」

「一応、公爵家だからね」


 門を入ると庭の広さに驚かされた。

 石畳でできた通路を進むと噴水があり女神の様な石像の抱えた壺から水が流れ落ちている。

 その噴水を超えると屋敷があり目の前に執事が一人立っていた。

 短髪の黒い髪で四角く細い眼鏡を掛けている小綺麗な容姿をした若い男だ。


「お待ちしておりました。アルベルト様……そちらの方々は?」

「僕の友達だよ」

「……」


 執事が私たちの方を無表情で見ている。

 完全に小汚い冒険者に見られてもおかしくない格好をしているのがアルベルトに申し訳ない気持ちになる。


「承知致しました。では一度ご友人様はゲストルームの方へお通し致します」

「わかった。お姉ちゃん、ジェイク。言う通りにいいかな?」

「OK!」


 私にはメイドさんが一人付き、そのメイドさんかの案内を受けて二階のゲストルームに誘導される。

 ジェイクには執事の男性が付き同じように私とは違うゲストルームへ入って行った。

 部屋に入りドアを絞めるとメイドさんから説明を受ける。


「これよりシャワーを浴びて下さい」

「わ、分かりました」


 私は言われた通りにシャワー室へ入った。


(うわぁ……流石貴族の浴室だ……)


 各部屋にシャワー室が付いて浴室の床は大理石になっている。

 そして喜ばしい事に良い匂いのするポンプタイプの石鹸が幾つもセットされている。

 蛇口を捻ると適温のお湯が降ってきた。


(やばい……貴族最高じゃないか……)


 セットされているスポンジに石鹸を付け体を洗う。

 もはやこの香りだけで昇天してしまいそうになるくらい天国だ。

 体を洗い終わり脱衣所に出るとバスローブが用意されている。

 完全に金持ちの所有物である。

 本来これを着た奴が赤ワインを片手でクルクルしながら優越感に浸るのである。

 どこの世も金持ちという奴は……。


(羨ましい!……白目)


 バスローブを着て脱衣所から出るとメイドが待っていた。


「それでは、ご用意しましたコチラのお召し物にお着換え下さい」


 ベージュ色の大人しいタイプのドレスである。

 肘から腕に掛けて袖は広がっていて先端はフリルで銀の刺繍が施されている。

 生地より少し濃い色のベージュのリボンが首元にあしらわれており上品で可愛らしい。

 スカートは上から5段のフリルの層に分かれておりその周りを腰に着けるマントの様に真っすぐな布が覆っている。前だけフリルの模様が見えるように細工されているのだ。女心がクスぐられてしまうほどデザインが良い。


 メイドさんから着付けてもらい、髪も7:3に分け目を変えられ目に髪が掛からないよう横流しに整えられピンで止められた。

 後ろ髪は編まれ、うなじ辺りでドーナッツ型に丸められる。


 化粧までさせられて仕上げられた私はメイドに連れられアルベルトやジェイクの待つ待合室へ移動した。

 メイドが待合室のドアを叩き開けるとタキシードの様なスーツを着たジェイクとアルベルトが紅茶を飲みながら待機していた。


「失礼致します。お連れ様をご案内致しました」

「チカの奴、やっと来たか」

「遅れてすみません~!」


 私は部屋に入る。


「……」

「……」

「?」


 アルベルトとジェイクの時間が止まっていた。 


「お、おねえ……ちゃん?」

「え?はい……」

「……まじ?」

(それは一体どういう反応なんだ……白目)


 二人は鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしている。

 アルベルトは口を半開きにしてアホの子の様な顔をしていた。

 ジェイクにいたっては石像にでも転職したのだろうかというほど微動だもしない。


「美人過ぎる……」

「は?」

「お姉ちゃん、凄い綺麗!」

(ちくしょう……褒められ慣れてないせいで無表情が固定されているッ!)

「ねぇ、ジェイク! お姉ちゃんヤバくない?」


 二人の視線がジェイクに行く。


「イイ……」

「……」

「……」


 真顔で夫に褒められたのだ。私の顔から蒸気と熱が吹き出しそうになった。

 こんな反応は予想していなかったからだ。顔が熱くなり手の甲で口元を隠す。

 いわゆる不覚にも死ぬほど私は照れてしまったのである。

 転生してから化粧なんて一度もしてなかった。

 ギルドの仕事で走り回っていたのでそんな暇が無かったのだ。


(くそぉ……こんなに夫が喜ぶなら化粧道具買おうかな……)


 そうこうしていると初めに出迎えてくれた黒髪の執事が部屋のドアを叩き入室してくる。


「それでは、揃いましたようなのでご案内いたします」


 ついにこの時が来たのだ。今回私たちの目的は見合い潰し。私たちは気合いを入れて合戦に挑むのであった。

 長い廊下を歩いて一つの部屋の前に付きドアを執事がノックする。


「入りたまえ」


 中から男性の声が返事した。

 部屋へ入ると渋い金髪のオールバックに金色の髭を蓄えた青い瞳のオジ様が座っている。こいつがラスボスだ。アルベルトの父にして法国の剣と呼ばれる剣聖。

 そしてソテリキャリ家、現当主ヴィクトル・ソテリキャリ公だ。 


「かけたまえ」


 ヴィクトルの放つ圧力が凄まじい。これを貫禄というのだろうか?  

 眉間にシワを寄せてアルベルトだけを見ているのが分かる。

 私たちは席に着いた。


「私がここの当主のヴィクトルだ。息子が世話になっている」

「ジェイクです」

「チカゲといいます」


 私たち二人は会釈をする。


「それで、お友達の同行は逃げかね? アルベルト」

「……」


 アルベルトが言葉を返せない。


「まぁ、いいだろう。見合いの件だが」

「お父様……その事ですが」

「……」

「僕には、思いを寄せている者がおりますのでご容赦下さい」

「そちらのお嬢さんかね?」

「いえ。違います」


 空気がトンデモないほど重い。できれば今すぐここを去りたいと思うほどこの部屋の空気に重圧が乗っている。


「この家を離縁する事になってもかね?」

「はい」

「……」


 横で見ていて分かるのは私たちがこの部屋に入室してから一度もヴィクトルは目線をアルベルトから外していない。

 きっとアルベルト自身が一番それを肌で感じているだろう。

 これが法王の右腕と言われている当主の貫禄なのだろうか……。


「お前は、国を背負うと言う事がどういう事か理解できているか?」

「はい。十二分に」

「その国を支える貴族であると言う自覚は?」

「あります」

「この見合いの話は、いわゆる政略結婚だ。貴族に生まれたからには定めである事は承知のはず。私もそうして今の妻と一緒になっている」


 この親の言っている事は筋道として正しい。国家直属の家ならその子供は国交、交友のために動いて行くのが決まり事だ。

 日本でも戦国時代には隣国と同盟を結ぶために武将は自分の娘を他国へ嫁に出し友好関係を結んでいた。

 近代日本でも今は無い財閥などが他の企業と協定するために自分の子供の縁組で力を伸ばす話もある。それが国益というスケールになればもっと強い力がアルベルトの肩には乗っている事になる。


「自分の好きな様にしたいというのは貴族に生まれて来た者として、いささか無責任な話ではないかね?」

「……では、縁を切られてはいかがすか? お父様」

「……」


 アルベルトが仕掛け出した。ここからが本番である。

 私は見合い潰すどころじゃない心境にあった。話しに入って行く事すら困難な状況だ。この寿賀子のドラマの様な重さを誰か何とかして欲しい。

 

 ----------ガチャ

 ドアを開ける音が聞こえ誰かが入室して来くる。お願いだから空気を換えて?


「手を焼かせてるのね? アル」

「!」


 聞き覚えのある声に振り替えると、そこにはミリアが立っていた。

 1年前より少し雰囲気が大人びているように見えるが背丈は伸びておらず小さなお人形さんの様なロリっ娘だ。 


「ミリア!」

「……ん、あれっ! チカゲさん?!」


 まさかの再会である。


「ミリア。このお嬢さんとお知り合いかね?」

「はい。以前話した魔族を一人で討伐したソードマスターです」

「その節は、娘が世話になった。礼を言わせて頂く」


 そう言ってヴィクトルは私に頭を下げる。

 私も遅れて頭を下げた。


「お父様、提案なんですがアルと騎士同士の決闘してみてはいかがですか?」

「……」

「アル。騎士の決闘は神聖なものよ。そこで決まった事は天地神明に誓ったも同然。好きにしたいのなら、ご自分の力で勝ち取ってお行きなさい」

「……お姉様」

「ただし、負けた時は分かってるわね?」


 アルベルトは真っすぐに強い瞳でヴィクトルの目を見ていた。

 そして意志の曲がらぬ声で言葉を口にする。


「お父様、宜しくお願い致します」

「……」


 ヴィクトルはゆっくり息を深く吐き出した。


「お前は、剣が使えないだろう?」

「……」

「決闘は、今まで修練した魔法を使いなさい」

「お父様!」


 ミリアの助言で思わぬ方向へ展開が進んでしまった。

 状況を冷静に考えると魔法使いであるアルベルトは間合いを詰められたら不利になってしまう。最善の戦法は距離を取って戦う事でいかに敵を近づけないかだ。

 しかし相手は法国の剣と言われる剣聖だ。レベルもプラチナクラスくらいは有ると想定するとアルベルトより倍近いレベルの差がある事になる。心の中で少しの不安が過ぎっていた。


 私たちは屋敷の中庭に案内された。ここで決闘を行うらしい。

 かなり広い中庭で芝生が引いてあり障害物などが少ない。

 庭の周りを屋敷がグルっと囲んでいる。


 アルベルトは杖を持っておらず手ぶらである。

 奥からヴィクトルが腰に剣をさして出てくる。

 腰にさしているのは以前ミリアが使用していた月鏡の剣である。

 

「これは神聖なる騎士の決闘だ。ここで決まった事は天地神明に誓って約束を違えぬものとする」

「お父様。天地神明に誓います」


 ヴィクトルは月鏡の剣を腰から抜いた。その刀身は青ガラスの様に透明で美しい。

 私とジェイク、ミリアの他に中庭には黒い髪の執事やメイド達が集まり決闘を見守っていた。


「チカゲさん。アルは貴女が育てたの?」

「近接戦闘の技術は夫が」

「まぁ。じゃあ結婚したのね。あの夜は上手くいったって事かしら?」

(手こずったがなッ!……白目)

「うぉほぉん! うぉほぉん!」


 不自然な咳払いをするジェイクのせいでポーカーフェイスを決め込んでいたのに赤面してしまった。


「それでは、私くしミリア・ソテリキャリがこの決闘の見届け人として務めさせて頂きます」


 ミリアの声に二人が構え一瞬で周りの空気が変わった。 

 

「はじめぇッ!」


 決闘開始の合図が中庭に響き渡る。


「マップ・トラッキング、サーチ・フォア・エネミー、グリーンバインド」


 開始の合図とともに高速でアルベルトは魔法を使い始める。

 グリーンバインドの魔法で植物のツルが無数に二人の間を邪魔するよう張り巡らされる。


「アイツ、考えたな……」

「グリーンバインドって拘束する魔法じゃないんですか?」

「それが普通の使い方だが、相手は近接物理系だ。障害物を作って間合いを取らせないような使い方をしている」

「その前に二つ魔法使いましたよね?アレは?」

「なんであんな魔法を使ったのかは分からない。というかアイツの魔法は独創的過ぎて凡人の俺には分からん」


 妨害している植物のツルを剣で斬りながらヴィクトルが走り前進する。


「ストーン・ウォール!」


 走ってくるヴィクトルの真横にある屋敷の壁から岩の壁が物凄い勢いで突き出して来た。

 --------------ドゴォオオオン!


「……」

「……」


 中庭にいた全員がドン引きしたのは間違いない。

 全員が口を半開きにして引いている。


「チカ、アイツ……完全に……」

(親父を殺ろうとしている……白目) 


 突き出した岩の壁の下を走りながらヴィクトルは前進して来ていた。


「チッ……ストーン・ウォールッ!」


 ---------------ドゴォォオオオン!

 潜って来ているその隙間をさらに岩の壁が下から突き上げ隙間を隅なく潰す。


「ねぇ。ジェイク、どうしよッ! 今舌打ち聞こえたよ? 舌打ちしてたよ?」

「……白目」


 ヴィクトルは咄嗟に横に移動し魔法を回避していた。

 しかし足元に無数に設置された植物のツルのお陰で思う様に前進できないでいる。


「グリーンバインド!」


 植物のツルがヴィクトルの手足に絡みついた。


「エネルギーボルトッ!」


 コンパクトな魔力の矢が5発連射される。


「ストーン・ウォールッ!」


 ヴィクトルが左右に逃げられないよう前方以外を岩の壁が囲む。 


「え……エゲツねぇ……」

「ガチすぎる……」


 持っている剣を手首だけで回転させ植物のツルの拘束を右手だけ解放させ、そのまま5発の魔力の矢を高速で撃ち落とした。ものの数秒の事である。 


「ストーン・ウォールッ!」


 撃ち落とされる事を想定していたのだろう。落とされたと同時に正面の地面からヴィクトル目掛けて岩の壁が突き出した。

 右手以外の手足は拘束されていて動きは封じられている。

 完全にヴィクトルを岩の壁が押し潰した。


「月の幻影は見えたか?」


 岩の壁に押し潰されたハズのヴィクトルがアルベルトの真後ろにいた。

 一年前ミリアが使っていた技だ。

 しかし、それを狙っていたかの様に的確に植物のツルが背後にいるヴィクトルを縛り上げた。

 アルベルトの腰に装備していたナイフがヴィクトルの喉元にピッタリと付けられている。


「お父様、動いたら刺します」

「アルベルト。お前……」

「あと、もぉ2、3個トラップを張っていました」


 辺りを見回すと地面スレスレにエネルギーボルトがヴィクトルを狙って待機していた。


「目には見えませんが、ストーンウォールの詠唱は完了していたので発動させるだけのモノが一つ。あとは……」


 そう言うとアルベルトは指を太陽に向けて指した。


「あそこに、僕の残った魔力を全て仕掛けていました。最大威力のエネルギーボルトが太陽に隠れて待機しています。これがダメだったら僕の負けでしたが……」

「私の負けだ」


 彼は、とんでもない魔法使いに育っていた。

 自身が得意とする知略戦を血族の前で見せつけたのだ。

 もし私が魔法を使うアルベルトと決闘したらと考えても絶対やりにくい相手である。

 近接型は遠距離攻撃に弱い。

 おそらくレベル差を埋めたのは知略戦術だ。


 ---------------パチパチパチパチ

 大量の雨が葉っぱを撃つような大きな拍手が屋敷全体から鳴り響く。

 屋敷のメイドやミリアが拍手をアルベルトに送っている。

 見渡せば思う所があってであろう泣いている執事やメイドもいる。

 アルベルトは思われていないわけではなさそうだ。


 ヴィクトルは植物のツルに絡みつかれたまま穏やかな顔をしてアルベルトに喋りかけた。


「アルベルト……」

「はい!」

「中庭……どうしくれよう……」

「……」


 アルベルトの魔法のせいで中庭の地形は完全に変わっていたのであった。

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