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どうも、魔法使い(仮)です!  作者: 道路公団松崎
本編
15/21

世界の断片①

【あらすじ】

昇格したのか、降格したのか分からない話。

 クレムストック南の丘。

 今朝起きてステータス画面を開き私は震えていた。

 自宅のベットの上で寝ているジェイクに声を掛けた。


「ジェイク……」

「ん、ん~どうした」

「職業欄が、変な事になっています」

「……」


----------------------------

 チカゲ

 Lv46

 職業 魔法使い(仮)


 HP  500

 MP  100

 

 力  120

 速  150

 物防 70

 魔力 100

 魔防 60


 スキル 竈神、物理無効(短)、身体加速(短)

----------------------------


「魔法使い、かっこ仮……ぶふっ」

(なぜ、吹いたッ……白目)

「お、おい……お前、これステータス画面に馬鹿にされてるんじゃないのか?」


 ステータス画面にまで馬鹿にされいるのか!


「だーっはっはっはっは」

(……カチン)


 ----------パァアアンッ

 ジェイクの頬にビンタが入る。


「はい。スミマセン」


 ジェイクはベットの上に正座している。


「これ、見て下さい。スキル欄」

竈神(かまどのかみ)? なんだそりゃあ」

「日本神話の火の神様の名前です」

「そう言えば、1年前くらいに使ったアレか?」

「アレは、火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)っていう火の神様です。一般ではカグツチって言われてます」


 1年前、魔族の戦闘の時に私に付与されていたスキルとは少し違う。

 同じ火の神様でも、別の神様だ。


「……火の神ってーのは2人もいるのか?」

「私が住んでた日本は800万の神がいるんですよ」

「多すぎないか?」

(それな……白目)


 私が魔族戦の時に使ったのは火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)という神様。

 日本神話のイザナギとイザナミの子供がカグツチだ。

 火の神だったカグツチは出産の時に母イザナミの体を火傷させてしまう。

 それが元で母イザナミは死んだ。

 それに怒り狂ったイザナギはカグツチを天之尾羽張(あめのおはばり)という剣で殺してしまう。

 天之尾羽張(あめのおはばり)というのは別名、天十握剣(あまのとつかのつるぎ)といい私が魔族戦で使った剣だ。


「これ、詳細見れるのか?」

「あ、はい」


----------------------------

 ・竈神(かまどのかみ)

  奥津日子神オキツヒコ / 奥津比売命オキツヒメ

----------------------------


「さっぱりわからんな」

「これ、竈神(かまどのかみ)の名前です。オキツヒコが男の子、オキツヒメは女の子です」

「効果は?」

「むむむ……」

「使ってみたらどうだ?」


 と言う事で、早速家の外に出て使ってみる事にした。

 杖を前につき出しスキルの名前を口ずさむ。


竈神(かまどのかみ)


 体の周りの空気が燃え火の粉が、揺ら揺ら降り出した。

 炎の竜が体に巻き付き天女が着けている披帛の様になる。

 炎の披帛からは火の粉がゆっくり舞っている。


 杖を空にかざし神様の名前を口にした。


奥津日子神オキツヒコ


 炎の披帛からボッと杖に炎が乗り移る。

 杖は炎を宿したまま赤々と燃えている。

 きっと武器へ属性付与するスキルだ。


「ジェイク」

「おう」


 そう言ってジェイクは銅貨をチカゲに投げる。

 その銅貨を炎の付与している杖でカンと弾いた。

 

 ----------ブォオオッ

 音を立てて銅貨が燃えた。

(銅貨……勿体ない……)


 次の竈神の名前を口づさむ。


奥津比売命オキツヒメ


 炎の披帛が、そのまま伸び体中を覆う。

 炎が和合羽の様な形になりパチパチと燃えている。

 

 何となく理解できた。

 オキツヒコが攻撃で、オキツヒメが守りだ。

 火之迦具土神の時と同じで、竈神を出してる時は効果が続くようだ。


「戻っていいよ」


 そう言うと、纏っていた炎が消えた。


「何にせよ、使えるスキルが増えて良かったじゃないか」

「ただこれ、接近戦のスキルなんですよね」

「……」

「……」


 だから魔法使い、かっこ仮なのだろうか?

 これを皆に見られでもしたら絶対に笑われそうである。

 

「チカは、まだスキルをいじるか?」

「いえ、もぉ大丈夫です」

「それなら、ちょっと付き合わないか?」

「?」


 なんでも知人の紹介で人と会う事になっているらしい。  

 丘の下の集落の喫茶店テラスで待ち合わせをする事になっていると言うのだ。

 私たちはその待ち合わせ場所に向かう事にした。

 

 クレムストック南。丘の下の集落。

 ここは小さいながらにも流通などがシッカリしていて栄えている。

 村の広場には小店なども多い。

 他の街などから特産品を買いに来ている人もよく見かけるのである。


 私たちは喫茶店のテラスで紅茶を頼んで待っていた。

 すると中年くらいの白衣を着た男が現れた。

 片目にモノクルを付けている学者風の男だ。

 髪は逆立っておりサンディーブロンド色をしている。

 口周りには剃り切れていない無精ヒゲがまばらに目立つ。


「あー。どもぉ! ジェイクさん?」


 男は陽気そな感じで右手を上げて挨拶をして来た。  


「あぁ。ジェイクだ。それと嫁のチカゲだ」

「初めまして」

「あー。既婚者でしたか。よろしくトヨターです」


 そう言って、お互いに握手を交わす。


「天気の話をするのは時間が勿体ないので、いきなり話題に行かせてもらいますね」

「あぁ、頼む」

「実は、これなんですが」


 そう言って男はテーブルの上に黒い物を置く。


「あれ! ドングルだ!」

「!」


 テーブルに置かれたものはUSBメモリーである。


「えっと、失礼ですが奥さんは転生者?」

「え!」

「ああっ。ごめんなさい。警戒しないで! 僕も実は転生者で」

「えええええっ」


 なんとトヨタ―さんは日本からの転生者だった。

 

「だから、ほら、名前トヨタ。車の」

「あああああっ!」


 バカみたいに納得した。

 おそらく生前は、よっぽどの車好きだったのだろう。


「ちょっとまて、転生者しか知らないアイテムなのか?」


 ジェイクはこの世界の人間なのでUSBメモリーを知らない。


「はい。これはドングルっていうものなんですが。パソコンって装置に取り付けるものです。」

「う~ん、よく分からないな」

「ですよねぇ」


 私も日本にいる頃はこのドングルのお世話になっていた。

 この中に見られたくない資料を保存していたのだ。

 

(同人誌とかな……)


 しかしこの世界にパソコンなどと言うものはない。


「分かる人がいるならば話が早い。これは僕らが居た世界のアイテムです」

「うむ」

「こちらの世界には、このアイテムを使うツールがありません」

「ですよねぇ」

「もぉ一つは、僕らが居た世界からコチラには物を持って来れません」


 この世界に転生する時に持ち込めるのは記憶だけ。

 私は記憶だけを持ってコチラの世界に転生した。

 体も新しくなった状態で、こちらの世界に来ている。

 それは確認済みだ……。


「おいチカ、何を赤くなっている」

「いや、なななんでもないです!」


 顔に出ていた。不覚である。


「僕も、転生者を何人か知っているのですが、物を持ち込めたという例はありません」

「はい」

「じゃあ、これは何なのか? 二つの推測を立てる事ができます。一つは何かしらの方法で持ち込んだ。もぉ一つはコチラで作った。ただツールが無いので中が何なのか分かりませんでした」


 トヨタ―さんはカバンの中から何かを出す。 


「まぁ、作っちゃったんですよね」

(すげぇ! パソコンだ!)

「足りない部分や、この世界に無いものは魔法技術で何とかしていますが」

「うわぁ……これをこの世界で見れるなんて」

「あははっ。ですよね!」


 そう言って、パソコンのスイッチを入れる。

 見たところ電気供給は魔法で行っている様だ。


「あの、簡単に作ったって言いますが……」

「僕は転生前は技術者でした。こっちに来てからは研究者をやっています」

「冒険はしてないんですか?」

「あぁ。僕はそんなアクティブじゃないんですよ。それに他の転生者さんも普通に村人してたりしますし。冒険者になってる人もいますが、職人だった人らはアッチの技術をこっちに持ち込んで稼いでる人もいますよ」


 転生したら冒険者になるモノだとばかり思っていた。

 それはきっと見ていたアニメの影響が強すぎたのかもしれない。


「ドングルの中身は、これですね」


 パソコンの画面を私たちに向けてくれた。

 その中にはHTMLが書かれている。

 もちろん転生前、普通の主婦をしていた私には読めない。 


「これ、ホームページとか構成するやつですよね?」

「そう。HIMLですね」

「これ、なんなんですか?」

「プロテクトキーです」

「キー?」


 プロテクトキーとは、例えばパソコン内に起動したいソフトがあるとする。

 そのままアイコンを押して開いてもプロテクトが掛かってソフトが開かない。

 そんな時このプロテクトキーのUSBをパソコンに挿して起動するとプロテクトを解除してくれるという物なのだ。


「研究者というのは罪深い生き物だと思いました。探求心と好奇心が湧いて来たんです。この事を調べていると何度も出てくるワードがあるんですよ。それが、デバックシンボル」


 デバッグとは、プログラムをテストしてバグと呼ばれる誤りを発見し取り除くことを指す言葉だ。

 

「僕は考えたんです。この世界に何も影響をおよばさず不自然な物はないかと」

「……」

「時々見かけたことはありませんか? 何の変哲もない鉄の支柱を」

「え?」

「不自然なくらい腐らず何千年も前からあり、撤去も破壊もできない柱です」

「あっ!」


 この世界には、何千年も錆びない鉄の柱が世界各地に点々と存在する。

 自然界で不安定な鉄は、酸素を取り込と鉄鉱石はFe2o3、Fe3o4など酸化鉄の状態で酸化して安定する。

 精錬した鉄も同様で酸素を取り込む事で錆びる。

 しかしシンクレアの世界には何故ここに立っているのか? 何のためにあるのか? 何に使われていたのか? 未だに謎な柱がある。

 新しい建築のために撤去しようとしても柱は地中深く埋まっていて取り除けない。

 また破壊を試みても、どんな魔法や技でも傷一つ付ける事ができないのだ。 


 その鉄の柱で一番有名な話がある。

 おとぎ話の時代、勇者マッチィの持つオリハルコンさえ斬る神の剣である。

 この神の剣でも、その鉄の柱は傷つかなかったらしい。

 

「この世界の魔法にもスキルにも干渉させず、何の意味も無く立っている柱。好奇心が疼きませんか?」


 それが目的でジェイクに仕事を頼みに来たのだ。


「それで、俺たちは何をすればいい?」

「はい。この柱のある場所に警護しながら連れて行って欲しいのです」

「なるほど。一番近い場所だとアザルト平原か」

「そうなりますね」

「あの! なんで他の冒険者じゃなくジェイクなんですか?」

 

 この警護の仕事なら一般の冒険者でもできる仕事だ。


「今回僕の予想が正しければ、結構ヤバイやつなんで」

「……やばい、やつ」

「ええ。信用できる人が良いと思いまして。裏の仕事をしてる彼の評判を大絶賛で友達から聞いたものですから」

 

 ジェイクは裏の仕事に関してはカナリ信用されているようだ。

 しかし、その噂のせいでその手の仕事が増えていくスパイラルなのだ。


「あんた、軍事研究者だろう?」

「はい。流石です」

「じゃあ、この仕事は軍絡みか?」

「いえ、こっちの世界の人には、あまり知られたくないモノなので」

「じゃあ、個人か?」

「はい。このドングルの研究はもぉ打ち切られています」


 トヨタ―さんは自分の好奇心だけで動いている様だ。

 どこの世界も研究者とか科学者というのは本当に凄い。

 現実世界でもノーベル賞とか取ったりする人の多くは好奇心だ。


「物好きな男だ」

「あははははっ」


 私たちは錆びない鉄の柱があると言うアザルト平原に向かう事にしたのだ。

 場所はここから南へ真っすぐ下った場所で、馬車だと半日はかかる。

 トヨタ―さんの用意した馬車でアザルト平原に向かう事にした。


「むっ……ムックル馬車なんですね……」

「はい。残念ながらこれ以上のクオリティを求めると飛竜になっちゃいますので」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 軍事用のムックルだからだろうか?

 スピードが凄まじく昼到着のハズの場所まで2時間程度で到着したのだ。


「オロロロロ~ン」

「チカ、だいじょうぶか?」


 ジェイクが背中をさすってくれる。 

 この軍事用ムックルは強烈だった。


「あれ、ですね」


 そう言ってトヨタ―さんは鉄の柱を指さした。

 私たちはここに一度来たことがある。その時に鉄の柱を見たのだ。

 ランスとシムベリンの国境辺りでも鉄の柱を見たことがあり結構色々な場所に意味も無く立っている。

 純鉄で作られていて頂上には装飾的なチャクラがあしらわれていて直径は44cmくらい。高さは7mくらいはある。


 トヨタ―さんは柱に近づいて周りを観察している。

 私とジェイクは、それを少し離れて見ていた。


「これは、オーパーツの一つだからな」

「オーパーツ?」

「あぁ。何か分からない未知の物を指すんだ」

「こっちの世界の人でも分からない物なんですか?」

「まず傷つけられない鉄なんて聞いた事がない。むしろこれは鉄じゃなく未知の物質なんじゃないか? と言う声も上がっている」


 魔法がバンバン飛び交うファンタジーの世界でも分からない事があるのだ。


「チカゲさん! ちょっと!」

「あ、はい!」


 トヨタ―さんから呼ばれ私は柱に近づく。

 ハケを使って柱に付着した砂ホコリを落としていたようだ。


「これ、読めますか?」


------------------------------------------

 Protection key

------------------------------------------


「プロテクションキー?」

「英語です。こちらの人には読めない」

「あ!」

「はい。そう言う事ですね」


 文字は書いてはいるが差し込み口が無い。

 トヨタ―さんはドングルをプロテクションキーと書いている文字の周りを這わせる。

 ------------チュウィーン

 

「なんか、開いた!」


 現れた穴にドングルを指した。

 するとウィンドウが目の前に立ち上がる。


------------------------------------------

 Debugging Room:CodeNo00154557451


 ON / OFF

------------------------------------------


「ON押しますね」

「はい」


 ------------ピッ

 私たちは、その瞬間ジェイクの目の前から消えた。


「お、おいチカ! ……ど、どうなってるんだ?!」


 一瞬周りが白くなり、同じ場所に戻った。

 しかし、そこにはジェイクがいない。


「こ、これは?」

「チカゲさん、なんか上にいる!」

「え!」


 私たちの頭上を見たことがない竜が飛んでいた。

 カナリ大きい竜だ。


「ななな、なんですかアレ?」

「チカゲさん、一度死んでみませんか?」

(イカれてるのかッ……白目)


 トヨタ―さんが解析魔法をドラゴンに掛けた。


------------------------------------------

 ニーズヘッグ LV90


 ニヴルヘイムのフヴェルゲルミルの泉という場所に住んでいる。

------------------------------------------

 

 北欧神話に出てくる竜である。

 世界樹ユグドラシルにある根のうち、三本目の根を齧っていて終末の日ラグナロクを生き残ると言われている。


「うっ……うそぉ」


 LV90は無理だ。LV差がありすぎる。

 私のLVは46なので半分以上も違う。


竈神(かまどのがみ)おいで」


 私の周りに火の粉がチラチラと散り出す。

 炎が体を這い披帛の様に揺ら揺らと燃え出した。


 もはや生きて帰るには戦うしかないのだ。

奥津日子神オキツヒコいくよ」


 体に纏った炎の披帛から鋼の杖に炎が乗り移る。

「身体加速(短)、物理無効(短)」


 私は地面を蹴りニーズヘッグの頭を撃ち抜いた。

 

 ------------ブォオオッ

 殴った場所から炎が燃え移ってニーズヘッグは暴れ出す。

奥津日子神オキツヒコいい子だ」


 ニーズヘッグは羽をバタバタさせながら地面に着地し口を大きく開けた。

 息を吸い込み終わった口は一気に私たち目掛けて炎を吐き出した。

 

奥津比売命オキツヒメおいで」


 披帛から炎が体に乗り移り和合羽の様な形状になる。

 私は裾で顔を隠し炎に備えた。

 しかしその炎はあまりにも広範囲で噴射地から90度が火の海に変わる。


「あっ」


 声がする方を振り返る。

 トヨタ―さんが炎に焼かれていた。


「ぼく、LV10……」

「えっ……」


 --------------パリン

 トヨタ―さんはHPが0になり光になって消えた。


「ええええええええっ。先に言えよッ!(白目)」 


 死んでしまった。依頼人を殺してしまったのだ。

 軍人とか言っていたので戦えると思っていた。

 しかし戦闘力が民間人レベルだった……。


(やだ……泣きたい)


こうして私は一人、伝説のドラゴンとタイマンする事になったのであった。

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